第108話 ランドールの仕業でした
「大丈夫かい?体は辛くない?」
目が覚めて、2日たった。私が死んだことは極秘にされており、知っているのは両陛下、アロ様、ルルーシェ様、そしてその場にいたサム先生と近衛騎士の数名だけだ。緘口令が敷かれ神殿の立ち入りを厳しく取り締まった結果、王宮も混乱することもなく私は生活に戻ることができた。マーサたちにも公務の手伝いで帰らないと伝えられていたので、心配を掛けずに済んだのだが、3日間大理石の上で寝ていたので、体が痛くなってしまっていた。
「大丈夫です。ずっと同じ姿勢だったためか、少し固まっていたのです。もうすっかり大丈夫です。明日からは、学園にも行けます」
「そうか、よかった。リリアーナ嬢も心配していた。明日行けば安心するだろう」
「はい、久しぶりな気がします」
「僕も最近学園に行けてなかった。明日は一緒に行こう」
「あの、私がいない間にいろいろあったみたいで、ララに聞いたときは驚きました」
アレク様の婚約者の生家、デデン公爵家が今回の黒幕として断罪された。私の死亡は秘匿されていたが、私やアロ様が襲われたことや、ドラゴンの騒ぎは隠せるものではない。捕らえた刺客に尋問した結果、首謀者としてあがったのがデデン公爵だったらしい。
証拠は、不思議なほど次々と出てくる。まるで誰かが初めから用意していたように、動かぬ証拠が山の様に出てくるし、密輸や、禁止薬物の取引の書類まで出てきた。デデン公爵家は取り潰し、デデンと妻は離島に生涯幽閉、娘のミーリアはまだ10歳で、今回のこととは無関係だったため、遠い親戚の家に養子に出された。アレク様との婚約も白紙に戻った。
「すっきりはしないが、ランドールのお陰でアレクの経歴に傷がつかずに済んだ。悔しいがこのままアレクがミーリア嬢と婚姻していれば、王家もただでは済まなかっただろう。なにせデデン公爵は真っ黒だった。それも見越したうえでデデンを唆したのだったら、さすが神だと思う。納得はしていないが文句が言いにくくなった。いや、一発ぐらい殴りたいが…」
「そうですね、あの時のことはやっぱり辛かったです。二度とアロ様に会えない覚悟をしましたから……」
「マリア、もしも同じことがあっても、僕のことを助けないで欲しい、と言っても君には無理なんだろうね……」
「そうですね。何度考えてもあの時の自分の行動に関しては、正しかったと思うのです。だから、今後は絶対私の前で死ぬような事にならないでください」
「ああ、それしか君を守れないのなら、全力で気をつけるよ」
「はい、そうしてください。私も目の前でアロ様が傷つくのを見るのは嫌です」
「愛しているよ、マリア。二度と君を失いたくない」