第104話 マリアローズは冥界に行くようです
私は必死に祈った。アロ様を助けたい。生きて、また笑顔が見られますように。幸せになって欲しい。たとえ私がいなくなっても。
どれくらいそうしていたのか、目を開けるとアロ様の呼吸は安定して、真っ青だった顔色は穏やかになっていた。
「よかった、もう大丈夫ね」
[そうだね、マリアローズ。残念だよ、アロイスの魂を回収しに来たのに、君は約束を破ってしまった。次は魂を貰うって言ったはずだけど]
いつの間にか、隣にランドールが立っていた。仕事が早い男である。ぞっとするほど美しい容姿で微笑む姿はまさに死神だ。
「そうね、でもそんなの無理よ。何度同じ場面が来ても、私はアロ様を助ける選択しかできないと思うわ」
[そうか、ではそんなマリアローズに敬意をはらって、今すぐに君の魂を冥界に連れてってあげるよ]
そう言って、ランドールは私の胸の前に手をかざした。
[大丈夫、痛くも苦しくもないさ]
『ダメにゃ、ランドール待つのにゃ!』
次の瞬間、フッと体が軽くなった。
次に、意識がはっきりすると、そこは花々が咲き乱れる草原のような場所だった。ただそこに太陽も空もなく、どこか現実味のない世界の様に見えた。
[ようこそ、冥界に。どうだい、案外いい所だろ?]
「……軽いんですね、こっちはアロ様とお別れも言えずに連れて来られて、ここがいいところかどうかなんて考えられません」
[まあ、そこは君の判断だからね。一度目は代替え案で了承したけど、次は、―――]
『……にゃあ』
「リリ……?」
ランドールの腕に爪を立ててしがみ付くグレーの毛玉、いや、子猫のリリがいた。
[これ君の猫?あっちから付いて来たみたいでさ、私の腕から離れないんだよ]
その時、近くから男性の声が響いてきた。
「お願いだから、リリア。出てきておくれ、このままでは本当に消えてしまう……」
ランドールが声のした方を見てため息をついた。
[……もしかしたら、君をもう一度返せるかもしれないな。私について来て]
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