第100話 呼んだのはドラゴンでした
「助けを求める声?そんなもの聞こえなかったが……」
「多分私にしか聞こえないようなので、とりあえずあっちに行きたいです」
「そうか、ルルーシェ、動いて大丈夫だろうか?」
「……そっちに大きなドラゴンの気配がするが、まあ、とりあえず気をつけて進んでみようか」
私たちは、周辺に注意をしながら進んでいった。昼間なのに薄暗い谷は、どこからドラゴンが出てきても不思議ではない雰囲気だ。
少し進んで行くと、拓けた場所に出たのか、日が少し差し込んでくる。そしてそこには大きなドラゴンが蹲っていた。
「もしかして、あなたが私を呼んだの……」
ドラゴンは力なく小さくギャアと鳴いた。
よく見ると、ドラゴンの後ろ脚が傷つき腫れ上がっていた。近くに錆びた鉄の罠が落ちている。人間が仕掛けたものかもしれない。かなり錆びているので、昔仕掛けられたものが残っていたのかも?
「マリア、まさか君は……」
「はい、癒してみようと思っています。人間の罠が原因ですし、放置できないです」
「でも……分かった、僕も一緒に行こう」
「ありがとうございます。アロ様」
私とアロ様はゆっくりとドラゴンに近づいて行った。かなり大きなドラゴンだ。鱗が黒く光っているのが見える。
「あなた、とっても綺麗ね。少し、傷に触るけど許してね」
そう言って、私はドラゴンの足に触った。冷たい鱗の感触だが、患部だけは熱をもって熱かった。私はゆっくりと祈りを奉げた。どうかこの子の傷が治りますように。元気に歩けますように。おまじないを精一杯する。人間には効果があるが、ドラゴンは初めてだ。どうぞ効きますように。
しばらくすると、ドラゴンがギャアと鳴いた。患部を見ると、綺麗な鱗で覆われていた。どうやら成功したようだ。
ドラゴンはスクッと立ち上がった。そして、私たちを見てから歩き出した。
『ついてこい、いってる』
子猫のリリが私を見て言った……
「え?リリがしゃべったの??」
『そうみたいにゃ。とりあえずついて行くのにゃ』
私たちは急いでドラゴンを追いかけた。