表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/121

第9話 悪役令嬢リリアーナを救いましょう

 午前中の授業は驚くほど簡単に終えることが出来た。講師の先生からも驚きとともに称賛された。何故前の私に前世の記憶がなかったのか悔やまれる結果である。

 それでも転生前の私は18歳になる頃には努力と涙の末、王妃教育をほとんど終えていたし、更に今は前世の記憶まで持っている。今の私にはいくら王妃教育が高度な教育だといっても余裕なのである。これなら王妃教育の予習復習の時間をバッドエンド回避に使っても問題なさそうだ。まずは悪役令嬢になってしまう前のリリアーナと接触したいと思う。出来れば友達、いや親友になりたい。


 女神様改め白猫ララは、私が目覚めてすぐに寝台にやってきた。いきなり登場した白猫に焦ってしまったが、侍女のマーサはララと呼び掛けていた。どうやら私の飼い猫と認識されているようだ。

 朝の支度を終えてから白猫ララと今後の打ち合わせをした。

『私としては~リリアーナにも幸せになって欲しいのにゃ~。でも愛し子認定を10歳でしてしまえば~、やっぱり不測の事態になる可能性は否定できないにゃ。そこで考えたのがお友達作戦にゃ~。ぜひマリアローズには早い段階でリリアーナと接近して欲しいのにゃ~』

「……猫になるとにゃ~がつくのですか?」

『ん~雰囲気にゃ~猫っぽいにゃ~』

 そもそも猫はしゃべらないのでは?という言葉は飲み込んだ。

『要は悪役令嬢になってしまった原因である家族との確執、孤独な生い立ちをできるだけ回避するのにゃ~、心の友、いや実際に友達となり敵対なんかできないほど親密になる作戦なのにゃ~』

 リリアーナを守るために、ある程度なら愛し子としての権力を行使してもかまわないだろうと白猫ララは言った。

 そう、本来愛し子とは国の宝のはずなのだ。

 女神の愛し子が国にいるだけで、気候は安定し災害も最小限におさまるし作物は豊かに実る。繁栄が約束されるのだ。愛し子が生まれる周期は決まっておらず、私が生まれる前の愛し子は100年以上前に亡くなったと聞いている。ここまでくればかなりのチートだと思う。もちろん加護もあるので害することも難しいはずだった。そう、最後の崖落ちの時に加護の気配はなかったのだ。加護があれば無傷とはいかないまでも怪我をする程度で命は助かったはずだ。この原因も女神様と他の4柱の神様が調査しているそうだ。

 原因ははっきり分かっていないが今できる事をしようと思う。


 10年前に戻った私たちは8歳だ。

 ララの説明では、リリアーナの母が病気で亡くなったのが7歳の時で、ホワイト伯爵が男爵家の娘のメアリを後妻として迎えたのが8歳のちょうど今頃だ。9歳の時にメアリ夫人が女の子を産む。異母妹のエリザベスだ。

 ここからリリアーナの人生に影が差す。優しく接してくれていた義母のメアリ夫人が段々とリリアーナを遠ざけるようになるのだ。

 きっかけは異母妹の転落事故だった。

 ちょうど乳母が、生後6か月のエリザベスが寝たため少し用事で側を離れている時に、間が悪いことに、何かの音にびっくりして起きたエリザベスがベビーベッドから転落してしまったのだ。

 幸い大した怪我ではなかったが、原因はベッドの柵の止め方が甘かったためだった。

 勿論リリアーナのせいではなかった。ただ、自分の失敗のせいで怪我を負わせ焦っていた乳母が解雇されるのを恐れて、柵をリリアーナが触っていたと証言したのだ。その乳母は、リリアーナの乳母でもあった人で、優しいリリアーナは解雇を恐れる乳母の言うことを否定できなかった。

 両親はリリアーナを酷く責めることはなかったが、その日から可愛がっていた異母妹には近づくことを禁止されてしまった。そして両親は異母妹のエリザベスを溺愛しリリアーナを虐げるようになるのだ。


 大好きだった人たちから裏切られたリリアーナは、人を信じることが出来なくなる。

 リリアーナ(推し)が、家族に虐げられている姿に我慢できなくなった女神ラーラが、愛し子の加護を与えた後も、結局無関心だった両親はそれに気づかぬまま彼女を虐げ続けた。

 女神ラーラが願った幸せになる機会はついに来ることはなかった。

 結果、人の愛情に飢えたリリアーナは王太子アロイス殿下に執着し、見事な悪役令嬢として爆誕。ヒロインのマリアローズを断罪崖落ち死亡エンドまで追い込むのである。


 敵に回すなんて得策ではないだろう。ぜひ味方に引き入れたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ