【5話】最後まで悩んでいました。事を荒立てない方法も模索しました。でも妻の大嘘を知って怒りに我を忘れて激怒してしまいました。
■前書き
今回の話は、随分長くなりました。
それは、この瞬間が一番葛藤して悩んだからです。
時間にすると、ほんのちょっとの時間でしかないのだけれど、仕事の準備をしている間、家を出る直前や直後、仕事に向かう道中。
ずっと葛藤していて、それを文字にするとかなり長文になってしまいました。
なので文字数は多いですが、時間にすると葛藤していた時間は、物理的に長時間というわけでもありません。
そんなわけで、二度にわけて書きます。
昨日投稿出来なかったのは、そんな理由からです。
■前書き
日曜日の晩から、月曜日へと日付が変わろうとしていた。
「また、今日もかよっ!」
腹の底から怒りがこみ上がる。
今日も、昼過ぎから家に来ていた。
逆算するとこの時点で、既に十時間以上いたことになる。
(デジャブかよ!)
毎回毎回、出かける前にイライラさせてくれる。
その都度「今日こそ、本当に泊っていくつもりなんじゃ!?」そんな心配を、このところずっとしているような気がする。
仕事に向かう道すがら、そして仕事中、仕事が終わってからも、
「泊っていったりしてないよな」
仕事が終わって解放される瞬間。
そのひと時を、すっかり台無しにされている。
ゴールデンウィーク中だから……。
そう思うからこそ我慢出来た。
この期間を過ぎれば、きっとまた前みたいに静かな日常が戻って来る。
そう思っていたのに……。
今や、五月も後半に差し掛かっていた。
「いつまで、こんなことを続けるんだよ! くそっ!」
ぼくになんの落ち度がある? なんでこんな嫌な気分にさせられているんだろう? イライラを抱えて仕事に向かう。気持ちの切り替えが全く追っつかない。
「ぼくの家だろ!」
腹立たしさ。
「…………」
今この時も、次女の彼氏は他人様の家でヌケヌケと。
「喋ったことも一度もねーわ! テメェなんかと!」
「…………」
誰だよ。ほんとにオマエ。
くそ!
もういい大人のくせに、こんな事態を招き入れた妻。この状況をおかしいとも感じない妻の浮かれっぷりにも、ぼくは腹が立っていた。
大人がこんなんで、どうすんだよ!
「くそ! くそ! くそ!」
ぼくも大人だ。なのにこんな幼稚な独り言なんて言っちゃってる。
そんな自分にも腹が立つやら、情けないやら……。
「ああーーーっ、もう! 決めた!」
ぼくは決心した。
前々から考えていたけれど、なかなか躊躇して実行に移せなかった事。
もし明日、家に帰って来て駐車場にまだ”あのバイク”があったら、いっそ引っぱたいて帰そうか? と思った。
(注)もちろん、何があっても暴力で訴えかける事はいけません!
そんなことを考えても、実際に実行に移せばヤフーニュースに載り大炎上、批判のコメントで埋め尽くされ、ぼくは特定されて老害だと叩かれる。
(※そんな被害妄想に憑りつかれるくらいには、ぼくの神経は参っていた)
事情なんて一切書かれることなく、若者を引っぱたいたという部分だけを切り取って、世紀の極悪人! ってレッテルを貼られるだけ……。
事件にでもなれば、長女の奨学金の話だって、どうなるか分からない。
現実問題として、ぼくに出来ることなんて、せいぜいこれが精いっぱい!
もし明日もまた深夜までリビングを独占していたら、彼氏の自宅の電話番号を聞き出して、向こうの親に「いい加減にしろよ!」と電話で抗議してやる!
いや。
怒鳴り込みに行こう。
うん。
深夜に電話だなんて普通じゃない。
これもぼくの方が叩かれる案件なんだろうか?
生きづらい世の中ですよ。
本当に。
その行為が非常識なのも分かっている。
だけど、もう構わない。
自分の息子が、よそ様のお宅に連日連夜深夜訪問している。それを全く咎めないような「輩」だ。
同じことをされたら一体どんな気分になるか? 少しは分かるんじゃない?
ぼくの中では、向こうの親は既に「輩」でしかなかった。
自分の息子が毎日深夜を過ぎて帰宅しても、何も言わないような親。
最近聞いた話では向こうの親も、自分の息子がうちの次女と付き合っているって事、そしてその彼女の家に頻繁に遊びに行っている事を、どうやら知っている様子なのだ。
息子の帰宅時間を考えれば、深夜までお邪魔していたことを、知らないなんて言い訳は通じない。
それでも、何も言わない。
そもそも他所んちに来て挨拶が出来ないって、その子のお家では殆ど躾をされずに育ったとしか思えなかった。
とは言え……。
怒りが頂点に達したら、こんなにも見境がないのも事実だ。
『人の振り見て我が振り直せ』とはよく言ったものだ。
よくよく考えたら、うちの妻も同じだ。深夜に他人を家に招き入れている。そしてそれに何も口出しできないぼくも、多分”輩”と同類であり共犯者でもある……。
◇
大袈裟な話になりますが。
人生はどの選択をしたかで、その後の人生が大きく変わってしまうことがあります。
(あ、そこー。まだブラバしないでねー。今からドヤる予定だから~)
すみません。えらっそう言って。
小さな選択が、その後の人生に思わぬ大きな悪影響を与える例を挙げます
いつもなら右の道を通るのに、その日はたまたま気分がそうさせたのか、左の道を通った。そこで工事中のビルの鉄筋が落ちて来て……。
この時ぼくは、やっと”左の道を通る選択”つまり決心が固まった。
人から言わせると「小さな選択」だったかもしれない。しかしぼくに取ってそれは、まさに一大決心だった。
だけども、どうしても頭をよぎる……。
次女に出来た初めての”恋”を、父親がみっともない形で潰すことになってもいいのか? 自分が若い頃に、もし自分の親が付き合っている彼女の親の家に怒鳴り込んで行って、それが原因で破局してしまったら──。
どんなに嫌な野郎でも、次女からすれば愛だの恋だのを満喫する年代なのだ。今はまだ生涯の恋人でも得たような気分なんだろう。そういう時期だと思う。
それを大人の立場から、全否定する権利はないと思っている。
ぼくだって(世の中すべてのお父さんお母さんも)若い頃は親や兄弟よりも、まるで彼女(彼氏)との絆の方が強いような、そんな錯覚に陥っていた思春期はあったのだから。
そうだよな。
うん。
それくらい妻でも解るよな。
よし! 向こうの親御さんと連絡を取ろう。
怒鳴り込む云々は、それでも話を聞いてくれなかった時だ。まずは話し合いだ!
この報告を実際に妻のスマホに送ってしまったら、妻の手前もう実行するしかない。
そうしなければ、妻は「あんなこと言ってたくせに、なんだ口ばっかりで全然連絡なんかしてないじゃん」と嗤うだろう。
ぼくを普段から軽く見ているんだ。
確実にそうなるわなぁ……。
そうなると、この現状はずっと続くような気がした。向こうへの連絡は絶対にしないと……。
やるしかないな。
きっと妻は、一人だけ家族ぐるみで付き合っている気分なんだろう。
家族ぐるみ、の意味を全く分かっていない。
◇
一度は決心したのだが、その連絡自体も、次女の恋沙汰を親が潰してしまう結末になったりしないか? 自分が我慢すれば済む話じゃないのか? なんて甘い考えが何度も頭をよぎるも、長女はどうなるんだ?
その葛藤で頭がパンクしそうだった。
そして”ココ”で、小さな選択肢だ。
この後の話をネタバレしてしまいますが──。
その流れで妻にも、怒りのラインを送ってしまったんです。
”報告”だけに留めておけば、こんな事態にはなっていなかった。
じゃあなんで、そんないらんことをやらかしてしまったのか?
ぼくがどれだけ精神的に追い込まれていたか?
やっぱりそれは、妻にも知っておいてもらいたかったんだ。
そうしないと、向こうの親御さんが話を聞き入れてくれなければ、次女がその彼氏と別れるまで、ずっとこの拷問のような苦痛が続くのは分かっていた。
妻は仕事の都合上、ぼくほどは悪影響を受けない。
妻の場合、夜勤の翌日は一日完全オフ日だ。一日中何もせずに寝ている。そういう時は彼氏の長時間滞在が被らないので、妻が自分の都合に合わせて彼氏の来訪を許可しているは分っていた。
ぼくの妻は 「「”病的なほど”」」 他人の苦しみなど考えないし、そもそも考えたりする習慣も思考もない。そういう生まれつきの性格を有していた。
それでも分って欲しかった。
若干人見知りな気のあるぼくだ。それは妻もよく知っている。
そんなぼくが、他人様に家に深夜に電話で抗議する。それほどあなたの旦那は苦しんでいたし、追い込まれてもいたんだよ?
と、妻にも分って欲しかった……。
でも。
ここでもまた”小さな選択肢”だ。
明日また深夜までいたら、向こうの親に電話する。
それだけ打ってれば良かったのに……。
本当は、最後の手段を実行する前に、まだ、その手前で解決出来る可能性を、一応考えているんだよ、と伝えたかったはずなのに……。
「行って来るね………………、まだいるの?」
「うん。今日もママが良いって言ってたよ?」
今日”も”
も???
三女のその言葉を聞いて、やっとぼくも目が覚めた。
※因みに、あとで妻の口から聞いた話なんですが、妻はぼくたち(両親)がいない日でも、若い男の子を野放しで、深夜まで居ることを許可するのはどうなのか? と訊ねた際にこう言ったんだ。
「え? 私、そんな話聞いてませんから。私が出かけたあとの話をされても」
そう言って完全に知らなかった話だ、そんなことで何怒ってんの? とぼくを非難したくらいです。
息を吸うように嘘を吐く。
(あの女ぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!)
心の底ではまだ、こう思っていた。
幾ら妻が若い男の子が好きだろうと、人の親だ。母親だ。
”そうは言っても”実際は妻も、ぼくと同じように次女も”淡い恋愛”を壊したくない気持ちもあって、本当は深夜までいることを望んでいないけど、言いにくいってのもあるのかもしれない……。
今考えれば、そう思ったんじゃなく、そう思いたかったのかもしれない。
だけど本心では、少しは妻も困っている部分はあるんじゃないかって、そう思っていたのに。
「今日はママもいないし、誰も大人がいないよ? それでもママはお友達がいてもいいって言ってたの?」
「分んない……」
その「分んない」は、三女が妻に不利な話なんだと分かった時に、よく使う曖昧な意味合いの「分んない」というニュアンスだった。
「でもママは、パパがいなくなっても(出かけたあとも)、友達に居てもいいとかは言ってないよね?」
三女は一瞬どういう返答をすればいいのか、考えているような間を挟んだあと、困った笑顔を見せて、何も言わずにリビングに引っ込んだ。
はぁぁぁぁぁぁ???
(注)妻に送ったラインの内容は、完全にぼくが悪かったと思ってます。
そのようなメッセージ内容は、今の世の中、例えそれが本気じゃなくても警察案件なのです。
■あとがき
次回、警察が踏み込んできた経緯について書きます。(てか、もう書いています)
本日これを投稿して、今日の午後九時には予約投稿で、この続きを投稿させていただきます。
因みに警察に踏み込まれた際、ぼくの動揺は尋常じゃなく、
文字にすると冷静に見えるかもしれませんが、のちにパニック症状を引き起こすことになった要因の一つになりますので、ところどころ「細々とした部分に関しては」時系列が少し曖昧になっている部分もあります。
が、肝心のところは、正確に記するのでご心配なく。
大事な話ですので、そこは覚えていなければ下記ませんし、覚えているから書いているんだと理解していただけれな幸いです。
■あとがき