Mission.1 一年経って
結果的にいうと高校一年生から始まる俺の実験というのは大成功とも言える会心の出来だった。
一年最初の挨拶は瞬く間に皆の心に残ったのか、男子も女子も関係なく顔が広い存在になることができ、一年終わりの頃にはクラスの垣根を越えて友達ができた。
これまでの皆の無関心たるデビュー戦を強烈なインパクトで塗り替えることによりみんなの中の石動裕を生み出した。それは結局先行逃げ切りという形で一年の幕を閉じることとなったことになる。
もちろん俺自身に与えられた一人暮らしというスペックなども含め持てる力を総動員した結果がこれだ。
——だからこそこれまでの俺自身のフェーズは終わり、今度は俺ではない誰かでこの疑問を解消できた時俺の青春は意味を成すことができるのだと思う。
いや、まあ重要視はするけどあくまで青春のスパイス程度にしか思ってないから! 別にこれがなくなったら俺の青春なんだったんだとかヒステリックにならないからね?
何はともあれ、学年が変わり最初の一日今日も今日とて廊下側一番前の今となっては懐かしさすらこの席でまた新たな始まりを迎えることとなった。
「おは! 今日から二年間よろしくね! 裕!」
教室のドアをくぐり真っ先に声をかけてきたのは去年一年間仲良く過ごさせてもらった加藤晴。去年のクラスの新年一発目の自己紹介で真っ先に俺のことを笑ってくれた女子だった。
おふざけ担当の晴は俺と相性も良く、二人でよく怒られてもいることからある意味俺の右腕的役割を果たしてくれているなんともありがたい存在だ。正直晴がいなかったら高校生初日で大ずっこけすらしてた可能性を考えると本当にありがたい。
普段はそんなことおくびにも出さないが今日だけは労いの言葉をかけたい。ありがとう。
「何やってんの」
「感謝を送ってた」
「そんなに私と同じクラスになれて嬉しいか、よきにはからえ」
「ははぁ」
そんな感じでバカやっていると新クラスには我らが石動組が続々とやってくる。
「やほやほお二人さん」
「わぁ! 裕と今年は同じだっ!」
二人並ぶように入ってくるのは、去年は隣のクラスだった鏡奏多と皆坂夏帆。
その二人をしっかりと見据えながら俺の思いがポツリと溢れる。
「今年は本当に騒がしくなりそうなクラスだな」
「裕が言うなよ」「裕だけは言ったらダメでしょ」「あんたが言うな!」
三者三様な返しに面食らったものの三人の相性の良さのようなものが垣間みえて、今年度のクラスに期待が湧き上がってくる。
そんな感じに新年度早々前年とは違ったウキウキを感じているわけだが、不思議なこともあった。
前年、俺は今後同じクラスになるかもしれない人々を覚えるため全クラスのありとあらゆる男子女子の名前を顔を一致できるよう努力してきたわけだが、なぜだか俺の中で一致しない名前がある。
白上静奈。その名前の生徒だけクラス表を見ても一致しない。
それを不思議には思っていたが、結局は同じクラス、いやでも顔をあわせることになるだろうしそこまで気にしすぎなくてもいいか。
そこで思考を今目の前にいるメンバーへと切り替えた。
何はともあれ、注目を集めてしまいそうなメンバーと言うこともあって担任の先生にはご迷惑をおかけしそうなメンツではあるもののそこは頑張ってもらうと言うことで、俺は俺でこのメンバーで過ごすこの後の二年間にとても楽しみを隠しきれなかった。
こんばんは、この話から実際の物語のお話になっていきます。
本作の主人公である裕と、その周りを巻き込んでいきながら、ヒロインの出番を作っていけたらと思います。
ぜひ、お待ちいただけたら幸いです!
では次回でお会いしましょう。