鈍感もほどほどに
なんか体が重い・・・・・コレが金縛りだろうか?そう思いながらおそるおそる目を開けるとそこには、寝ている俺の上に乗って同じく寝ていた幼馴染の姿があった。寝起きで頭の回転が遅くて、状況認識が遅れた。
「・・・・・!?、美佐、お前何やってんだ!」
夢心持美佐。これが俺の幼馴染だ。毎日家に迎えにきてくれているのだ。ちなみに俺は一人暮らし、両親は外国だ。まぁ、それはさておき、今まで一回もこのような状況になったことはない。美佐は、ヘラヘラ笑いながら、起き上がった。
「あぁ~、宇宙。おはよぉ~・・・・・ふぁ」
「おはようじゃない!何をやってんだって聞いてんだ!」
「起こしたけど起きなかったから、それにちょっと眠かったから・・・つい、ね?」
「はぁ・・・」
俺は頭を抱えた。どうしてこいつは・・・・。とりあえず、時計を確認。8時10分か何だ・・・・・・じゃねぇ!俺は、美佐をおしのけて速攻で制服に着替えた。
「行くぞ、美佐!遅刻するぞ!」
「あぁ~ん、待ってよぉ」
ーーーー学校ーーーー
「はぁ・・はぁ・・・はぁ」
「はぁ・・・間に合ったね」
「お前のせいで遅刻するとこだったじゃねぇか!」
「ぶぅー、そんなに起こんなくてもいいじゃんか・・」
息を整えながら教室に入る、ギリギリセーフだった。俺は自分の席に座った。すると、前の席のやつが話しかけてきた。
「よぉ、宇宙。今日はいつもより遅かったじゃねぇか」
こいつの名前は、宇都宮楽。俺の親友だ。俺は、授業の準備をしながら朝のことを説明した。楽は笑いながら、話を聞いていた。
「ははは、美佐ちゃんがとうとうねぇ・・・ずいぶんと大胆で」
「大胆?どういう意味だ、それ」
「はぁ・・・いい加減気づけばいいものを・・・あんないい子・・もったいない」
楽は心底残念そうに、そして、哀れみの目を俺によこした。俺にはこいつの言ってることがさっぱりわからなかった。そのとき、チャイムが鳴って教師が入ってきて、授業が始まった。
そして、今は昼食の時間だ。朝はあの騒ぎで弁当の準備ができなかったから、食堂に行こうとしたが、美佐が、
「宇宙、お弁当作ってきたから、一緒に食べよ」
お前・・・誰のせいで弁当が・・・。まぁ、いいか。せっかく作ってきてくれたんだ、食費も浮くし、食べるか。俺たちは、屋上に向かった。人はまばらだった。俺たちは人がいない影の場所に座った。
「はい、私の手作りだよ」
「ふぅ~ん・・」
適当に相槌を打ちながら、弁当を開く。内容は、まぁ普通だった。とりあえず、タコさんウィンナーを食べて、続けて玉子焼きを食べた。正直、なかなかのものだった。美佐が、控えめに聞いてくる。
「どう?」
「おいしい・・・・」
「ほんとっ?よかった!」
わーいわーいと、美佐は大喜びだ。おいしいと言っただけで、普通ここまで喜ぶものなんだろうか?俺はそんなことを考えながら、弁当を食べ続ける。途中で、美佐が箸で自分の弁当に入っている、玉子焼きをつかんで俺に向ける。
「・・・・何だよ?」
「あ~ん」
「は?」
「だから、あ~んだってば」
何があ~んだ、そんな恋人同士みたいなことできるか。俺が口を閉ざしていると、
「今日の朝の宇宙の寝言、大声で言っちゃうよ?」
「なっ!?」
寝言だと・・・・こいつ、痛いところを突いてくるじゃねぇか。前にもこいつに寝言を聞かれたことがあるからな・・・・・くそ、食うしか。
「あ・・あ~ん」
パクッ
「おいしい?」
「おいしい・・・」
く・・・屈辱だ。この後も同じようなやりとりが2、3回続いたが無事に昼食終了。俺たちは教室に帰って、午後の授業に備えた。
「・・・と、こうなるわけだ。次のここは」
と、ここで終了のチャイムが鳴り、教師は授業を終了させて、出て行った。俺は帰る準備をちゃっちゃとして、席を立った。美佐は、委員の仕事で遅くなるから、先に帰っててとのことだった。言われなくても帰るよ。階段を降り、靴箱を開けて靴を出そうと思ったのだが、靴の上にハートのシールで蓋をされた一つの封筒があった。それを手に取る・・・・うむ、中身は入っている。しかし、これってやっぱりアレだろうか?恐る恐る開ける。
{お話があるので、放課後第3校舎の裏に来てください。待ってます}
とのことだった。俺は、迷った。どうする?・・・・ドッキリってことも・・いやいや、俺はあっちのほうだと信じる。相手の名前は書いてなかったが、答えは相手の正体を知ってからだ。
意を決して俺は、その場を後にし、呼び出し場所に向かった。
ーーーー第3校舎裏ーーーー
俺が着いたときには、相手はもういたようだった。実際は、ドキドキしているのだが、なるべく普通に見えるように努力しながら、俺は相手の前に出た。
「遅れた・・・・」
かな、と言おうと思ったのだが、続きが出なかった。なぜなら、相手が相手だったからだ。その人の名前は、近藤理沙。校内ではないが、俺たちの学年で一番美人と言われる人だ。彼女がここにいたのだから、俺は本気で間違いかと思った。しかし、彼女は
「来てくれたのね・・・」
「えっ・・・・やっぱ俺で合ってる?」
俺は恐る恐る聞いてみた。理沙は、頬を少し赤くしながら頷いてくれた。おいおいおい、マヂかよ!相手はあの近藤理沙だぞ!?俺は、内心万歳しながらも落ち着いた様子で、話を聞いた。
「それで・・・・話って・・のは?」
「えと・・・私と」
来た来た来た、この次だ、次!心臓の鼓動が知らず知らず、早くなっていく。この良い場面に、介入する者がいた。
「宇宙!」
「!?」
そう、美佐だった。全速で来たのだろう、呼吸が激しく乱れていた。美佐は、理沙から俺を守るようなかっこうで立った。
「おい・・お前」
「宇宙は誰にも渡さない!」
こう宣言した。俺と理沙は、唖然として言葉が出てこなかった。理沙は、美佐に挑戦的な視線を向けて
「あなたたち付き合ってないんでしょ?」
「それがなによ・・・」
「ならいいじゃない」
「だめよ!」
美佐は否定の言葉を叫んで、ポケットからカッターを取り出した。理沙の顔が恐怖に変わった。
「何よ・・・脅しのつもり?」
「美佐、やめろ!」
「宇宙は黙って!」
美佐は、錯乱しているようだった。ずっと、理沙を睨み付けている。俺は美佐を取り押さえようと手をのばしたが、それよりも早く理沙へと走りだしていた。
「このぉ!」
「きゃっ!」
カッターで腕を切られてしまった、理沙は後ろにあとずさった。そして、石に躓いてこけて、頭を打って気絶した。
「美佐・・・お前、何やってるんだ!」
俺は当然怒った。対して、美佐は笑顔で振り返って
「私ずっと宇宙を守ってたんだよ?」
「守るって何から・・・・」
「宇宙に近づくやつからだよ」
な・・なだと、何言ってるんだこいつは・・・・。コレは夢か?あっ?
「宇宙へのラブレターを捨てたりして、守ってあげてたんだよ?」
「どうして?」
「宇宙が好き・・・・大好きだから」
今まで自分はもてないと思っていたのに、実はそういう理由だったのか。
「なら、なぜ直接俺に言わなかったんだ?」
「ただ一緒にいるだけで、嬉しかったから。まさかまたラブレターをもらうなんて、思ってもみなかったよ」
「うう・・・・」
「「?」」
気絶していたはずの、理沙が起きたのだ。美佐は、とどめでもさそうと言うのか、カッターで刺そうとした。しかし、
「な・・・んで?」
俺が寸前で間に入って、代わりにお腹を刺されたからだ。美佐の顔は驚愕でいっぱいだった。
「どうして、かばうの!?」
「理沙・・は、関係ない・・だろう?」
「あるよ!」
血が流れている。俺は、気絶するのを耐えながら
「お前が・・・素直に・・・そう言えば、俺は受け入れた・・・さ」
「え・・・」
あぁ~・・・そろそろ、やべぇかも。俺死ぬのかな。そう思いながらも続ける。
「だから、理沙を巻き込むのは・・やめろ」
美佐は、涙を流して俺を見ていた。理沙の顔は、後ろだから見えないが、きっと同じような表情だろうな。そして、俺は今になって気づいた。それを口にする。
「お・・れは、お前のことが・・・・・」
最後の肝心な部分が言えなかった。俺は我慢の限界で、気絶してしまったのだ。最後、気を失うまえにまたこう思ってしまった。
俺、このまま死ぬのかな
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