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第2章 物質について

 科学が進歩するにつれ、その恩恵を享受するだけの人々は、神から遠ざかっていきました。


 一方で、世界の精緻な構造を知るにつれ、神の存在を意識せざるを得なくなった科学者も少なくないようです。


 宇宙のことを研究する時、科学者たちは、宇宙を形作る元となっている物質やエネルギーにも目を向けなければなりませんでした。


 太陽が燃えている仕組みを探るには、核融合、原子や電子、放射線や光、熱エネルギーなど、肉眼では見ることすら叶わないものの性質について知る必要があったのです。


 これまで宇宙のような巨大なスケールの話をしてきたため、人間の存在がいかに小さいかを強調する形になりましたが、逆にミクロの視点で話をすると、今度は私たち自身が銀河系のように超巨大な存在だということに気が付くでしょう。宇宙の話と比較しながら想像してみて下さい。



 例えばコップ一杯分の水の中には、水分子が1兆の10兆倍くらいあります。コップ一杯で銀河系の星の数を上回っているのです。


 分子レベルの視点で捉えるならば、私たちの体は銀河系に負けないくらい大きいと言えなくないかもしれません。


 もちろん種類によりますが、分子の大きさは大体100万分の1ミリといったところ。


 物質というのはたくさんの分子の集合体ですが、その分子はというと、様々な種類の原子が集まってできています。水なら水素原子2個と酸素原子が1個でH2Oとなります。


 今度はその原子について詳しく見ていきましょう。



 原子はひとつの原子核とその周囲を回る複数の電子からなっています。


 例えば、原子核の大きさを野球ボールに置き換えるなら、電子は数キロメートル先を飛び交う非常に小さな点に相当します。


 それが事実であれば、原子のほとんどの部分がただの空間で占められていることになります。そうなると、物の質量というのはどこから生まれてくるのか不思議に思えるのですが、それについては後述しましょう。


 原子核というのは複数の“陽子”と“中性子”の集合体です。


 ちなみに、原子と呼ぶ場合は主に数を表す場合に使う言葉で、その性質を示す場合は元素と呼びます。陽子、中性子、電子、それぞれの数によって、元素としての性質が決まるのです。


 なお、原子の形状自体は高性能の電子顕微鏡で観測できますが、原子核や電子といった内部構造を直接見ることはできません。実験等によってその存在や大きさを捉えられるくらいです。


 一方、電子はというと、こちらはさらにさらに小さいので見ることはもちろん不可能。電子は、現在これ以上分割できないと考えられている“素粒子”のひとつなのです。


 今の科学で解明できる限りにおいて、これ以上は分割できない最小の基本粒子が素粒子。


 原子核を構成している陽子や中性子は、それぞれ3個ずつの“クォーク(素粒子の一種)”が集まってできています。


 先程の、原子核と電子の間が広大な空間ならどこから質量が生まれてくるのかという点についてですが、質量の99%は、原子の中で素粒子が猛烈なスピードで動き回る“エネルギーそのもの”です。 


 アインシュタイン博士の名で知られる有名な公式、E=mc2。エネルギーとは質量であることを示しています。


 つまりすべての物質は、空間に閉じ込められたエネルギーの塊とも言えるのです。



 そんな素粒子が一体どういう形をしているのかは、これからの研究を待たなければなりません。


 ただ、その素粒子こそが物質の最小単位と思われていたのに、現在では17種類も存在すると考えられています。


 そうなると、これが本当の究極なのだろうかという疑惑が出てくるのは否めないでしょう。


 このような状況、実は原子の時と同じでした。原子が発見された当時は、これこそ究極の最小単位に違いなく、種類もわずかしか存在しないはずだと思われていたのに、それが今では百種類以上認められているのですから。


 物質を作る素粒子であるクォーク以外にも、素粒子同士を結びつける役目を持った素粒子や、光、電磁波の性質を担う“光子”や電子があります。


 また、物質を構成する素粒子に質量を与える役割を担うヒッグス粒子や、まだ仮説の段階ですが重力を伝える“重力子”の存在も推測されています。そして、宇宙の深い謎を解く鍵を握っているニュートリノなど。


 そのようにバラエティーに富んだ素粒子に対して、ひとつの考え方が生まれました。


 素粒子を例えば、(ひも)のようなものになぞらえたとしましょう。


 同じ紐がいろいろなパターンで振動していて、その振動パターンこそが素粒子の種類となっているのではないかという考え方。それが超弦(ちょうげん)理論、あるいはひも理論といわれる学説です。


 もっとも、そうなるとその振動に使われるエネルギーは、一体どこから来ているのかという疑問も同時に湧いてくるのですが、いつの日か素粒子を映像として捉えられるようになったら、それも解明されるかもしれません。



 この世界はどこまで精密に作られているのか。宇宙の果てと同じで、小さい方の果ても、また現代の科学では知り得ないという結論に至ってしまったのでした。


 しかし、話はこれで終わりません。実は今のところ私たちが知っている物質というのは、宇宙全体の5%に過ぎないと言われているのです。


 では残りは何なのか。耳にされたことがあるかもしれませんね。それがダークマター、ダークエネルギーと言われるものです。


 ダークマターは宇宙全体の26%、ダークエネルギーは69%と試算されています。


 どちらも観測と計算によって、存在はしっかり確認されていますが、その実体がわからないという意味でダーク、暗黒という名称が付けられているのです。


 ダークマターは物質というだけあって何となくわかるのですが、ダークエネルギーというのはいかがでしょう。簡単に説明を加えておきます。


 常識となっているかもしれませんが、宇宙の膨張はビッグ・バン(大爆発)から始まったと考えられています。そうしてできた宇宙空間はダークマターを始め、質量を持つ物質で満たされていました。


 ようするにその膨張の勢いにブレーキをかける引力が、至る所に存在しているわけです。


 ある時科学者たちは、遠くにある天体の距離を数多く観測することで宇宙の全体の膨張速度を割り出し、どれくらい減速しているのかを調べようとしました。


 ところが驚いたことに、結果はまったくの逆。宇宙の膨張は減速どころか、加速していることがわかったのです。


 検証を重ねてもその結果が揺るがない以上、そこに何かしらのエネルギーが必要なはずだと考えられたのでした。


 どういう理屈がそこにあるのか、現時点では解明されていません。正体不明という意味で、そのエネルギーにはダークエネルギーという名称が与えられたのです。


 研究者達によって導き出された結論には驚かされましたが、世界を形作る極小の存在を追い求めたはずなのに、気づけば宇宙という巨大な器へと行き着いていたことに、深い不思議を感じずにはいられません。


 このような未知の領域にこそ、神の存在を感じる余地があるのではないか、今はそう思えてならないのです。

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