第1章 宇宙について
人には決して想像できないものが2つあります。ひとつは無限、そしてもうひとつが無です。
想像してしまった時点で有限であり、さらに無ではなくなってしまうのですから。
宇宙が誕生したことで、この世から無はなくなってしまったかもしれません。
無限に広がる大宇宙もまた、始まりがある以上、その果ても存在しないと思うのです。や、あるいは本当に果てなど無いとか?
最初に考察するのは、神の大きさについて。
世界を創造したその手は、宇宙の端から端までしっかり届いていると考えるのが妥当でしょう。ひょっとしたら神は宇宙を外側から俯瞰しているのかもしれません。
そんな神の大きさを知るには、まずは宇宙の大きさを知る必要があるのです。
けれども、その大きさを計るに当たっては、適当な計測器も目盛りもこの世にはありません。他と比較することによってのみ知り得るのです。
では最初に、今私たちが存在している場所から見ていきましょう。
私たちが存在している場所とは、すなわち地球、そして太陽系についてです。宇宙空間におけるその大きさや存在場所について考えていくことにします。
そもそも基準のない空間で闇雲に場所を探っても意味がありません。ですので暫定的に基準を設けることにします。
太陽系における基準は、もちろん太陽。それが一番わかりやすいでしょう。そして実感しやすくするために縮尺を1億分の1にスケールダウンしてみます。
そうすると太陽の大きさは直径約14mとなります。例えるなら熱気球でしょうか。それに対し地球は、直径12.8cm。ソフトボールぐらいです。
なお、単位が変わっていることにもお気をつけ下さい。太陽はメートル、地球はセンチメートルです。
地球の衛星である月の直径は3.5cmとなります。ピンポン玉くらいでしょう。
ところで、太陽と月の大きさがこれだけ違うにも係わらず、地球から見た時の"見掛けの大きさ"が、まったくと言っていいほど同じなのは何故でしょう。
それはいうまでもなく、地球からの距離がそれぞれ全然違ってるためです。
1億分の1の縮尺であれば、月は地球から3.8mのところを回っていることになります。それに対し太陽は、約1.5kmの彼方。
ひとまずここでも単位に注意です。月と地球との距離はメートル、地球と太陽との距離はキロメートルとなっています。
一般的にテレビなどで見掛ける太陽系の図は、距離も大きさもまったくのいい加減。そうしないと画面に収まらないからというのは、推して知るべしです。
さて、それでは他の太陽系天体についても見ていきましょう。
月よりもまだ地球に近い天体。天体といっても人工の天体ですが、国際宇宙ステーションについて。
太陽電池パネルを広げた大きさはサッカー場2面分と言われていますが、1億分の1ならホコリよりも小さいでしょう。
国際宇宙ステーションは地上約400kmのところを周回していますので、地球を先ほど同様ソフトボールに置き換えたなら、その表面から4mm離れたところを回っている感じになります。
今回も単位にご注意下さい。地表から4ミリメートルです。
宇宙ステーションは地表からわずか4mm。そう考えると、3.8m先の月までの往復を成し遂げたアポロ計画というのは、相当にすごいことだったというのが感じられるでしょう。
今のところ月よりも遠方へ行った人間は、まだ誰もいません。惑星にたどり着いたのは、すべて無人探査機です。
天体名 直径太陽からの距離
太 陽 13.9m ―
水 星 4.9㎝ 0.6㎞
金 星12.1㎝ 1.1㎞
地 球12.8㎝ 1.5㎞
火 星 6.8㎝ 2.3㎞
木 星 1.4m 7.8㎞
土 星 1.2m14.3㎞
天王星 51㎝28.8㎞
海王星 50㎝45.4㎞
月 3.5㎝(地球から3.8m)
惑星の引力は、惑星の中心からの距離の2乗に反比例して弱くなっていきますが、想像以上に遥か彼方まで作用します。
他の惑星の引力によって、相互に公転の速度が速くなったり遅くなったりしているのです。
ところで、そんな太陽系の果てについては、実はまだよくわかっていません。
太陽を中心にして回る無数の小惑星から細かいチリに至るまで含めると、海王星のまだ何倍も先まで広がっているとのことです。
例えば、かつては惑星のひとつにも数えられていた冥王星は、太陽からの平均距離が59億km。1億分の1スケールでなら59km。
太陽系外縁天体と呼ばれるものの中には、1000億km以上離れているものもあると考えられています。1億分の1なら1000km彼方です。
太陽の重力の影響を受ける範囲はさらに遠くまで広がっているようですが、それより彼方では、銀河系の中心にあるとされるブラックホールの重力の影響を受けてきます。
というわけで、太陽系はここまでにして、次は恒星間の距離や大きさ、銀河系の大きさについて考えていきましょう。
恒星というのは、時に太陽と同じような燃える星というような表現がなされてることもあります。
ただしそれは、化学反応でいうところの燃焼ではありません。核融合反応によって生じた熱と光が、燃えているのと同じように見えるためそう表現されているだけです。
こうした燃える星、恒星が集まってできているのが、銀河、あるいは銀河系と呼ばれる渦を巻いたような星の集合体です。
正面から見ると中央に光が集まっているような渦巻き型。側面から見ると麦わら帽子を二つ合わせたような、中央部が盛り上がった円盤形。
天体望遠鏡を使い肉眼で眺めた場合、光が弱くただの雲のようにしか見えないため、星雲と呼んだりもします。
とりあえず、多くの星々が集まってそのような渦巻きの形になってしまう理由は、その中央にあるブラックホールが強大な重力を持ち、しかもそれが高速に回転しているためです。
力の作用によるものなのですが、回転する重力源に対して、星々は自然とその回転平面上に集まってくるのです。
太陽系において惑星や多くの小惑星が、太陽の赤道平面上を回っているのも同じ原理です。
そこで、私たちの太陽系が所属する銀河系、通称"天の川銀河"の中心はどの辺りかが気になりますが、地球から見た場合"いて座"の方向にあるそうです。
観測によって導き出された天の川銀河の直径は、約10万光年。太陽系はその渦の中心から2万6000光年離れた辺りに位置するとされています。
光年というのは、距離の単位です。この世で一番速いとされている光の速度は秒速約30万km。1秒間に30万km進むということは、例えば地球から月までなら1.3秒で到達しますし、太陽までなら8分17秒で到達します。
その速度で1年掛かって進む距離が1光年です。キロメートルに換算すると約9兆5000億kmとなります。
ところで、この銀河系の内で太陽にもっとも近い恒星はというと、南天のケンタウルス座にある1等星、ケンタウルス座α星。その距離は4.3光年です。
4.3光年を1億分の1の縮尺で表すと、約40万kmということになります。
地球から月までの、実際の縮尺距離が38万kmですので、それよりまだ遠くです。
1億分の1の縮尺での海王星が、太陽からの距離45kmということを考えても、恒星と恒星との距離は桁違いであるのがわかると思います。
ただ、こうなると1億分の1という縮尺でもあまり実感を得られなくなるため、ここからは縮尺を元に戻し、光年という単位を使うことにします。
ちなみにですが、このケンタウルス座α星について。肉眼で見るとひとつですが、実は3つの恒星からなる3重連星系であったことが近年わかったのでした。
全天で一番近いのがその星だとして、2番目はというと、それはおおいぬ座のシリウス。地球との距離は約8.6光年とケンタウルス座α星の倍となります。
倍の距離はありますが、シリウスは地球上から見る限り太陽を除き全天でもっとも明るい恒星である理由はその大きさ。ケンタウルス座α星の倍以上あるからです。なおケンタウルス座α星は、全天で3番目の明るさです。
そういった大小の恒星が約1000万個以上集まって、渦巻き状の銀河を構成しているのです。
渦巻きとは言いましたが、そういう形状がスタンダードだというだけで、それ以外の形状をした銀河もたくさんあります。
たくさん。そう、宇宙にはこうした銀河系が数え切れないほどに存在しているのです。
正確な総数はもちろんわかりませんが、1000億以上はあるだろうと考えられています。
この数を考えると、この宇宙のどこかに、別の生物あるいは人類、また別の社会があってもなんら不思議はないと思えるでしょう。
ただ、それぞれの星と星はあまりにも遠すぎて、光速による移動であっても遅すぎると言わざるを得ません。
もし仮に、別の星から知的生物が地球を観察しに来ているとした場合、彼らは光速を超えられる乗り物を利用していると考えるのが妥当でしょう。
さらにそれなりの通信手段を持っていなければ、探査結果を母星に伝えることもできないはずです。
人類がそのような技術を手に入れられるのは、あとどれくらい先になるでしょうか。
私たちの太陽系を含む銀河、天の川銀河に一番近い渦巻状銀河といえば約230万光年先にある、その名も有名なアンドロメダ大星雲(M31)。次が約300万光年先と推定される、さんかく座銀河(M33)です。
現在観測されているうちでもっとも遠い星雲は、134億光年彼方にあると言われています。
今なお膨張を続けている宇宙の歴史は、宇宙の中心からその果てまでの距離によって示されるのは間違いありません。
けれども、宇宙の果てがどこにあるのかは今のところわかりませんし、宇宙が球形をしているのか、そうでないのかも分かりません。そもそも、宇宙の中心がどの辺りにあるかさえわからないのですから。
わかるのはとりあえず、地球から宇宙のどのあたりまで観測できるかということのみ。
ハッブル宇宙望遠鏡によって観測されたもっとも遠い天体は、134億光年先にあったと確認されています。
近年、ハワイにある日本のすばる望遠鏡が、最近135億光年先の天体を観測したそうです。
これからはさらに高性能なジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、もっと遠くの天体を発見してくれることでしょう。
ちなみにですが、地球から観測できる理論上の限界は138億光年先……なのだそうです。
そのさらに先については、いろいろと考察もありますが、例えばネット検索で「464億光年」と入力すれば、いろいろと難しい理論値を知ることができるでしょう。