おそらく、八話
「……確かに確認しました。では、アイディオ・セアン様はCランク冒険者として再登録させて頂きます」
受付嬢の声色には驚きが垣間見える。やはり、Dクラスにやる仕事はないということなのか。
「やった! これで冒険者が続けられるようになったよ!」
消極的な感想を抱く自身と対照的に、セアンは非常に楽観的だ。ただ、せっかく進んだ一歩なのだ、素直に喜ばなくてどうするというのだろう。
「そうね、今日はパーっとやりましょうか!」
※ ※
「じゃ、これからの展望でも肴に酒でも飲みましょうか」
「え? ルイス様って、どう見ても酒が飲める年齢じゃないけど……」
セアンが疑問を口にする。
「なにを言ってるのよ。嗜みで飲んだことくらいいくらでもあるわ。それに私、酒には強い方よ」
「いやいや、ルイス様もまだ子供でしょ? まぁ、俺は強いわけじゃないけどさ」
子供扱いされるのは癪だが、理にかなってはいる。仕方ない。
「そうね、じゃあこの『魔法的うまさ! ギルド特製水竜のステーキ』を酒の代わりにつまみましょうか」
胡散臭い名前だが、水竜の肉料理といったら定番料理だ。
「よしきた! あれはギルド内でもかなりの絶品だよ! さすが侯爵令嬢、審美眼はさすがだね」
「もちろんよ、じゃ、ステーキが届くまでに次に何をするか話しておきましょう」
食事は万人に共通する娯楽だ。晩餐選びに夢中になるのは、当然とも言える。
「この前言ってた作戦だと、次はルイス家に行く予定じゃなかった?」
「よく覚えてたわね。ただ、このままBランクを目指しても構わないわ」
作戦に変更の幅が生まれたことを伝えていると、頼んでいたステーキが届けられる。
「フレーゲンみたいなMP総量が威力に関係するような魔法だと、セアンの力は強すぎるわ。それこそAランクだって目じゃないくらいよ」
試しにと、ステーキを一口頬張る。魚介類の味と、ステーキとしての濃厚さが噛み合い、独特な味わいを生み出している。確かに絶品と言われるだけはある。
「とはいえ、ルイス様がいないとなんにもできないからな……」
ステーキを頬張りながら卑下するセアンだが、それはお互い様だ。
「だから、タッグを組むんじゃないの。そうね、私の自由より前に、Bランクまで行っちゃいましょう」
「Bランクより前に、ステーキを食べない?ルイス様」