第七話
「——————ッ!!」
激しい雄叫びとともにハイオークの強靭な腕が振り下ろされる。振り返った勢いのまま上体を捻り、水を放って勢いを殺す。とはいえ、上位種の攻撃だ。オークとの交戦で消費していたのもあり、防御が足りず交差した腕で受け止める。
「ッ痛〜〜……なかなか効くわね……」
直撃の衝撃から後方に大きく吹き飛ばされるが、物理攻撃を主体とするハイオーク相手にはむしろありがたい。体勢を整えるためにも、距離を取ることができる。ただし、真に気がかりなのはこいつではない。
本来、ハイオークは小規模の群れには所属しない。今回の討伐対象はせいぜい2,30匹程度の群れだと思っていたが、ハイオークが長を務めるということは100匹を超える群れだということだろう。となると、まだオークが相当数残っているということだ。そう、オークの処理にまで手が回っていない今、真に気がかりなのは、セアンの安否だ。
「やっぱりね……」
セアンの方に目をやると、複数のオークに囲まれ、かなりジリ貧な様子だ。ハイオークに距離を詰められる前に、セアンの方へ近寄る。
「! ルイス! 助けに来てくれたの!?」
「当たり前じゃない。私たち、タッグなのよ?」
目の前の小柄なオークを蹴り飛ばし、セアンに触れる。
「それにしても、明らかにDランク冒険者にやらせるクエストじゃないわよね……」
ギルドの想定外なのか、嫌がらせなのか。財政状況を考えると、後者の可能性の方が高そうだ。
「そんなこと言ってる場合じゃないよ、ルイス様……どうすんの、これ」
前方に目をやれば、目算で70体ほどのオーク、そして群れのトップであるハイオークが立ちはだかっていた。
「ま、ちょうどいいわ。私たちの初陣にちょうどいいデカブツじゃない」
セアンからMPを吸い取り、左手に集めていく。
「これ、大丈夫なやつなの……?」
そう思うのも無理はないほどに、順調にMPが集まっていく。水に包まれ青白く光るMPの塊は、その力が放たれる時を今か今かと待っている。
「さ、あんたと私の合わせ技よ、目に焼き付けなさい。『フレーゲン』」
力の塊を空中に放り投げると、一際明るく輝き、弾けた。
—————————次の瞬間、空から無数の水砲が放たれる。降り注ぐ攻撃はオークを貫き肉塊に変え、ハイオークの体に数え切れないほどの穴を開けた。
「やっておいてなんだけど、えげつないわね……」
破壊の限りが尽くされたそこは、ついさっきまで息巻いていた魔物の姿はなく、破壊の限りが尽くされていた。
「初めてだよ、こんなに命を殺めたのは……」
こうして、圧勝という形で初陣は幕を閉じた。