行動開始──④
トワの合図とともに、待機していたテイマーギルドとバトルギルドのハンターが一斉に動きだした。
「そこだ!」
「ターコライズ王国のハンターめ!」
「ひっ捕らえろォ!」
「な、なんだ!?」
「なぜバレた!」
「と、とにかく逃げるぞ!」
アレクスのいたるところで勃発する戦闘。
剣と剣が交じり、魔法が放たれ、火の手が上がる。
が──。
「全く、街にはなるべく手を出すなと言っているのに」
アレクスのシンボルである時計塔の上にいるコルが、背後に待機している数十人の魔術師たちを振り返った。
「総員、準備はいいですね? ……放て!」
「「「《プロテクト》!」」」
幾何学模様が形成され、四角や三角の様々な形の光がアレクスに向かって放たれる。
直後、戦闘が行われている付近の建物や人を防御魔法が覆い、傷ひとつ付かないようにした。
「我ら魔術師は、一般の人には使えない奇跡を起こす職業です。総員、そのことを胸に刻み込み、アレクスの人々に指ひとつ触れさせてはなりませんよ」
「「「はい!!!!」」」
コルはそっとアレクスを見渡す。
その目が、ある一か所を見つめた。
「あそこですか……皆さん、ここは任せましたよ」
コルは時計塔から飛び降りると、ある場所へ向けて飛行した。
◆
「チィ! なんだこれは! 奴らの動きが速すぎる!」
襲い掛かってくるブルムンド王国のハンターたちを切り伏せ、激昂するドアラ。
その直ぐ隣でサノアもハンターを殴り飛ばしていた。
「確かに。私達だけならともかく、他にも潜入しているターコライズのハンター達も狙われていますね。どこからバレたのでしょう」
「お前が好き勝手しすぎたからだろ!?」
「根拠のない誹謗中傷反対」
「心当たりしかないが!?」
ドアラの言う通り、ブルムンド王国のハンター達は予想よりはるかに早く行動を開始した。
ターコライズ王国からブルムンド王国に入って来たハンターの総数、235人。
その全ての居場所を把握し、奇襲ができるよう人員を配置。
そして今まさに自分達は、奇襲を受けている。
たった一ヶ月ちょっとで、ここまで対策してくるとは思わなかった。
それどころか、何故潜入しているのがバレたのかすら理解できない。
あまりに早い。早すぎる。
(向こう側に相当手練れの探知能力者がいるのか。それともターコライズから裏切りが……? いずれにしても、このままじゃ任務失敗。下手をすると俺らの首がトばされかねない……!)
とにかく、なんとかしてコハクを見つけて連れ帰る。
その為にはまず、この場を生きて逃げ切らなければならない。
だが──
「見つけたァァァァァアアア!!!!」
──そううまく行くものではない。
目の前に降って来たひとつの影。
日焼けした褐色の肌に、筋骨隆々の体。
スキンヘッドの頭には大きな古傷が付いていて、いかにも歴戦の戦士然としている。
そして左胸には、魔銀製のハンターギルドのプレートが一枚。
そう……ロウン・バレットだ。
「ま、魔闘戦鬼……!?」
ドアラは剣を構え素早く思案した。
(ロウン・バレットはミスリルプレートのハンター、しかもブルムンド王国最強の拳闘士。だが、サノアも俺もプラチナプレートのハンターだ。一対二なら負けるはずがない……!)
戦闘態勢に入るドアラとサノア。
ロウンは激昂して冷静な判断ができていないように見える。
攻め勝つなら、ここしか──。
「おせぇ」
「「ッ!?!?」」
背後から聞こえた圧を感じさせる声。
それを聞いた直後、2人は反射的にバックステップでかわす。
直後、さっきまでいた場所が爆音とともに半径3メートルにわたって抉れ、爆散した。
余りの事態に、2人は目を疑った。
「サノア、見えたか……?」
「彼の姿がぶれ、ゼロコンマ1秒もない間に攻撃されたということしか」
ドアラもサノアも、ターコライズ王国のバトルギルド所属のハンターだ。
その辺のハンターよりも戦闘経験はあるし、死線も数多く超えてきた。
でも……目の前にいる男は、格が違いすぎる。
体から感じる圧も、スピードも、パワーも。
今まで感じたことがない。
「これが、魔闘戦鬼……サノア、どうする?」
「……」
「おい、サノア」
ドアラの問いかけに、サノアは答えない。
顔を伏せ、体が僅かに震えていた。
(無理もない。サノアも強いとは言え、こいつの強さは異次元だ。俺かサノアのどっちかでも生き残らないと──)
「ふひっ」
「……ふひ?」
隣から聞こえてきた変な音に、思わずロウンから目を逸らした。
そして、そこに見たものとは……。
「ああ……いい、いい、イイ……! ふひっ、ふへへ……! こ、こんなにも壊しがいのある人がいたなんて……! やはり喧嘩売ってよかった。ああ、あぁ……! 血が、滾る!!!!」
目を充血させ、頬は紅潮し、よだれと汗をまき散らす……変態の姿だった。
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