捜索──④
◆
あれから、約束の3日が経った。
高々3日で、成果はあるとは思えないけど……正直、今どうなってるのかは気になる。
もしかしたら、何かしら足取りは掴んでるかもしれないし。
『ご主人様、そろそろお時間です』
「うん。繋いでくれる?」
『かしこまりました』
スフィアの目が怪しく光り、映像を空間に投影した。
その先には、いつも通りトワさんが微笑みを絶やさずこちらを見ている。
「こんにちは、トワさん」
『どーもー。コハクさん、お元気ですか〜?』
「はい。こっちは何事もありません。そちらはどうですか?」
『こちらも順調で〜す。……と言いたい所ですが、中々進展はありませんね〜』
と、頬に手を当てて嘆息するトワさん。
やっぱり一筋縄じゃいかないか。
『ですが〜、ひとつ気になることがありまして〜。お聞きしてもいいですか〜?』
「……え、俺にですか?」
『はい〜』
トワさんは机の中をゴソゴソと漁り。
1枚の紙を取り出した。
いや……紙じゃない。これは……写真?
『この方に見覚えはありますか〜?』
「んー……」
ボケてて見えづらい……。
「スフィア、あの写真よく見せて」
『はい』
スフィアの目がくりっと動くと、トワさんの持ってる写真が鮮明に映し出された。
そこに映し出されていたのは──。
「え……?」
『女!? ちょっとコハク! この女誰よ! まさか私達に黙って、よその人間と乳くり合ったわけじゃないわよねぇ!』
「あばばばばばばば」
ちょ、クレア揺らさないでっ。吐く、胃から色々なものが吹き出る。噴水のごとく吹き荒れるから。
スフィアが暴れるクレアをつまみ上げ、なんとか引き剥がしてくれた。
ふぅ、助かった……。
『コハクさ〜ん。大丈夫ですか〜? 何やらすごい勢いでブレていたのですが〜』
「だ、大丈夫です。ちょっと幻獣種の一体が暴れてて」
さて、気を取り直して。
「トワさん、この写真をどこで?」
『この3日間で、バトルギルドと協力して怪しい人物の写真を撮りまくってたのです〜』
なるほど、だから……。
つまり、この人も今ブルムンド王国にやって来ているのか。
『それでコハクさん、この方……ご存知ですか〜?』
トワさんが見せ付けてくる写真。
茶色がかった黒のロングヘアーに、どこを見ているかわからない金茶色の瞳。
おっとりとした気だるげな雰囲気だが、その容姿は整っている。
家を出た時からなんら変わらない。
「……こいつの名前はサノア。……俺の実姉です」
『──そう、ですか。やはり……』
トワさんは目を見開き、ぼそりと呟いた。
写真を見てから、多分俺との関係を考えてたんだろう。
そりゃそうだ。髪と瞳の色がそっくりだし、目元もなんとなく似ている。
『あ、サノア! サノア! ボクこいつ嫌い! ガルルルルルッ!』
どうどう、落ち着いてフェンリル。
俺も嫌いだけど、フェンリルは俺以上にサノアが嫌いだからなぁ。
「サノアが……姉がブルムンド王国にいるんですか?」
『はい〜。弟であるあなたを連れ戻しに来たと言えば聞こえはいいですが〜』
「……こいつは、そんなやつじゃありませんよ」
そう、サノアはそんなやつじゃない。
俺とサノアは3歳差の姉弟だ。
小さい頃から家族そっちのけで修行、修行、修行。
俺をいじめることが趣味なのか、あのサディズムな笑顔が忘れられない。
更に俺がフェンリルと遊んでいると「気持ち悪い」と吐き捨てる。
13歳で拳闘士の天職を得てからは、暴力はエスカレート。
15歳でハンターになり、その後は音信不通に。
噂では今はプラチナプレートで、次期ミスリルプレート候補なんだとか。
でも、なんでこのタイミングでブルムンド王国に来たのか……さっぱりわからない。
本当に俺を探しに来たのか?
……まさか。ありえないな。
「……サノアは後回しでも大丈夫です。こいつは俺を探しに来るとか、そんなやつじゃないので。多分別の目的のために来たんでしょう」
『わかりました〜。では優先順位を下げて──』
『し、失礼しますっ』
あ、サリアさん。
ギルドの受付嬢、サリアさんが突然部屋に入ってきた。
「サリアさん、お久しぶりです」
『あっ、コハクさん! 丁度いいところに……!』
丁度いいところ?
『サリアちゃん、どうしました〜?』
『は、はいっ。それが、マークしていたサノアが別のターコライズのハンターと接触。何やら人を探しているらしく……もしかしたら……』
と、俺を見てくるサリアさん。
……え、マジで?
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