捜索──③
「それで、どう動きましょう。まさか闇雲に探し回るわけにもいかないですよね」
アシュアの言葉に、トワが思案する。
「うーん、そうですねぇ〜。ここ最近入国して来たターコライズ王国の人達は全員洗い出すとして〜」
「問題は、そこからどう絞り込む、だろ?」
「その通りです〜」
ブルムンド王国は、他国から入国してくる人間を厳しく取り締まっている。
が、それは指名手配に載っている人間や、犯罪組織に関係する人間のみの話。
観光や商売でやってくる人は、余程のことがない限り入国拒否することはない。
他国からのハンターも、基本的には入国を受け入れることになっている。
ターコライズ王国からの入国者も、年間数万から数十万人を超えている。勿論、ハンターの数も少なくない。
いつ、どのタイミングで入国して来たのかわからないハンターを探すのは、至難だろう。
しかし、動かないことには何も始まらない。
レオンがメモに乱雑に文字を書くと、背後に控えていたアシュアに手渡した。
「入国管理局の方には、うちからメンバーを出そう。アシュア」
「はい、マスター。範囲はどうしましょう」
「コハクが旅立ってから、今までだ。いつ入国したのかわからない以上、しらみ潰しにいくしかない」
「了解。……喧嘩しないでくださいよ?」
「いいから行け」
アシュアは2人に頭を下げ、足早にギルドマスター室を後にした。
「全く……ターコライズ王国には呆れるばかりだな」
「こればかりは同意せざるを得ませんね〜」
「で、テイマーギルドの方はどうするつもりだ?」
「人探しなら、バトルギルドよりテイマーギルドに一日の長がありますから〜。人探し専門のハンターを何人か見繕うつもりですよ〜」
「悔しいが、うちの子達は本気で人探しが無理だからな……悪いが、頼む」
バトルギルドのハンターは、本当に戦闘することしか頭にない戦闘バカ(褒め言葉)が多い。
採取クエストや人探しクエストには向いてない人間しかいないのだ。
ギルドの特色だから仕方ないとは言え、こういう時に力になれないのは歯がゆい。
レオンは常々、そう考えていた。
「ま〜、指をくわえて見ていてくださいな〜。コハクさんに褒められるのは私達で十分ですからね〜」
「お前は一々煽らないと気が済まないのか……」
◆
2時間後。ギルドマスター室に戻って来たアシュアが、紙束を持ってきた。
「戻りました。この数ヶ月ターコライズ王国から入ってきて、現在まだ滞在しているハンターの一覧です」
「……かなり多いな。何人いる?」
「382人です」
「この中から2人を探すのか……」
げんなりとした顔をするレオン。
この中から、コハクを連れ帰る刺客の2人を見つける。並大抵のことではない。
トワとレオンがリストを確認していき。
レオンの手が、とある1枚に止まった。
「これは……」
「どうかしましたか?」
「……アシュア。ターコライズ王国のサノアというハンターを知っているか?」
「────」
サノアという名前を聞き、目を見開いたアシュア。
レオンも、神妙な顔で頷く。
それを見たトワは首を傾げた。
「あの〜? サノアさんとはどんな方なんですか〜?」
「天職は拳闘士。性別は女。年齢は確か、今年で22。茶色がかった黒髪に、金茶色の瞳。他国に名を轟かせるほど、戦闘狂で有名なやつだ」
「え。なんでそこまで知ってるんですか。気持ち悪い……」
「有名だって言ったろ」
素でドン引きするトワに、レオンはイラついた声を出した。
「って、あれ? 茶色がかった黒髪に、金茶色の瞳……? どこかで見たことあるような特徴ですねぇ〜」
「そうか?」
「俺は、なんとも……」
「……まあいいです〜。それで、そのサノアさんは要注意人物ということでいいんですね〜?」
「ああ」
トワがリストに目を落とす。
サノア。名前のみ。苗字なし。そのことから、田舎の村出身だということがわかる。
それに、何か嫌な予感がする。
(杞憂であればいいのですが〜……次の連絡の時に、コハクさんに聞いてみますか〜)
「──トワ……トワ、聞いてるのか?」
「え? あ、すみませ〜ん。少し考えごとをしていまして〜」
「しっかりしてくれ。……リストから怪しい人物は、こっちで洗い出す。トワの方は、人探しに長けたハンターを用意してくれ」
「わかりました〜」
アシュアにリストを持たせ、2人は急いで部屋を後にする。
トワは胸のモヤモヤを抱えながら、テイマーギルドの名簿を取り出した。
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