魔人化──③
さて、最後にスフィアと魔人化するわけだが……どんな風になるんだろうか。
正直、想像もつかない。
フェンリルとの魔人化は獣人型。
クレアとの魔人化は精霊型。
やっぱり、機械人形と言うだけあって、俺の体が機械になるんだろうか。
……なんだろうか。すごくそそられる。
わからないけど、男心をがんがんくすぐられるような感じ。
俺自身が機械人形……ありだな。
『それではご主人様。私を感じてください』
「えっ、ちょっ……!」
だ、抱き締められて……!?
柔らかっ、いい匂い……!
いつの日か、スフィアから機械人形とはゴーレムと似たような種族だと聞いたことがある。
つまり、有機物ではなく無機物……単なる物質だ。
それなのにこの柔らかさ、このいい匂い、この人のような温かさ……!
どう考えても人間にしか思えないんだけど!?
『むー! スフィア、あんた何どさくさに紛れてコハクを抱き締めてんのよぉ!』
『私は誰かと違って、胸が大きいですから。なので少しでも密着しないと、魂を同化させることができないのです。誰かと違って』
『嘘つけぇ! あと誰かって誰よ! まさか私のこと言ってるんじゃないでしょうね!? ちょ、聞いてんの!?』
クレアがギャーギャー騒ぐが、スフィアはそんなこと気にせず俺に抱き着く。
どこか幸せそうに見えるのは、多分気のせいじゃない、と思う。
いくら魔物とは言え、こんな美人に抱き締められると……緊張するんだけど。
『ふふ。ご主人様、鼓動が高まっていますよ?』
「うっ……か、からかわないでよ」
『申し訳ございません。ご主人様の反応が可愛らしく、つい』
くっ。この小悪魔め……!
俺の体に回された腕。細く、でも幻獣種らしく力強い。下手すると折られそう、怖い。
『それでは行きますよ』
「う、うん」
目を閉じ、スフィアの魂を感じるため呼吸を整える。
……あった、これだ。
フェンリルのような、獰猛で密度の濃い魂とは違う。
クレアのような、燃え盛る炎のような魂とも違う。
例えるなら……無機質な球体と言うべきか。超高密度のエネルギー体が、凹凸もなく、歪みも淀みもなく、完全な球体になっている。そんなイメージ。
これがスフィアの魂なんだ……。
『それでは……“魔人化”』
スフィアの呟きと共に、スフィアの体が光の粒子となり、まとわりついてくる。
体同士の合体ではなく、機械のようなものが俺の体に張り巡らされていった。
フェンリルやクレアの時のような、体そのものが合体する感じではない。
生身の俺の体に、機械みたいなものが取り付けられていく。そんなイメージ。
何これ、どゆこと?
訳がわからず困惑していると、俺にまとわりついていた光の粒子が弾け、消えた。
『ご主人様、魔人化が終わりました』
「えっと……これが、スフィアの魔人化?」
『はい。水陸空用パワードスーツ。これが私の魔人化です』
「ぱわーどすーつ?」
何その聞きなれないワードは。
『順に説明していきます』
スフィアの説明を要約するとこんな感じ。
パワードスーツというのは強化外骨格と呼ばれるものらしく、簡単に言えば1の力を10に上げてくれるものらしい。
姿見で魔人化した姿を確認する。
両腕両脚には巨大で純白のメタルアーマー。
背中にはスフィアの黒髪を模しているのか、黒く鋭利な翼が三対六枚生えている。
頭には思考演算力を30倍に跳ねあげる装置がつき。
右目には敵を感知するスカウター。
胸の中心には、琥珀色に光る動力源がある。
スフィアの説明を頭の中で簡単に噛み砕いてみたが……正直何言ってるのかわからない。
『要は超かっこよくて、超強いってことです』
(なるほど、把握)
確かに超かっこいい。よくわからないけど、かなりテンション上がる。
『それではご主人様。体力が尽きる前に、力の一端をお見せ致します』
(うん、どうすればいい?)
『右手のメタルアーマーを真っ直ぐ伸ばしてください。今はまだ使い方がわからないと思うので、私がサポート致します』
(わかった)
こう、かな?
右腕を挙げると、モーター音と共に駆動する。
『外部エネルギー、チャージ』
チャージ? ……なっ!?
メタルアーマーが急激な熱を発し、何かが超高速で動く音が響く。
周囲から何かが集まり、圧縮され、凝縮し、高密度のエネルギーを作り出していった。
同時に、右目のスカウターに十字のマークが浮かび上がる。
エネルギーが最大まで溜まったのか、メタルアーマーが花弁を開いた花のように展開。
そこに眩いばかりの光が集まり──。
『エネルギー充填完了──スターダスト・メテオ』
──放たれた。
刹那、大気を揺るがす超轟音と衝撃波と共に、巨大なエネルギー弾が発射。
数キロの距離を亜音速で飛び、着弾。
ゴオオオオオオオオォォォォォッッッ──!!!!
「ぐおっ!?」
周囲の大気を吹き飛ばし、超高熱の熱波が俺達の体を叩くッ。
やばっ、吹き飛ばされる……!
『ご主人様、防御シールドです』
「そ、そうかっ。……どうすんの!?」
『イメージです』
「イメージ!? こ、こう!」
俺達の全面に、半透明の薄いシールドがあることをイメージすると。
俺を中心に巨大なシールドが展開され、熱波や衝撃波を防いだ。
『お見事です』
「は、はは……あり、が……」
あ、これ……体力切れ……。
くそ。いくらやっても……慣れないね、これは……。
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