剣の里──③
◆
「いやあああああああああ!!!!」
上空から降ってくる氷の槍、槍、槍!
とにかく無数の氷の槍が降り注ぐ!
振り返る時間すら惜しい! 今はとにかく逃げないとぉ!
『あれ、ブリザードバードよね。極北に生息する……なんでここにいるの?』
『正確には、ブリザードバード亜種ですね。全気候対応型で、マグマすら瞬間冷凍させることができる魔物です』
『この大陸では、亜種の魔物は珍しくない。むしろ魔物の亜種の方が数多く生息しているぞ』
そこぉ! 何呑気に話なんかしてんの!
「うわっ!」
一気に数が増えて……って、ブリザードバード亜種が2体になってる!?
『コハク様。まずはコハク様は基礎体力を付けていただく必要があります。ここから数日間は寝る暇もありませんよ』
「それ俺が普通に死んじゃうやつなんだけど!」
『ご安心を、ご主人様。私の技術で、全力の生かさず殺さずを実行してみせます』
全然安心できなああああああい!?!?
「反撃! せめて反撃できる手段を!」
『なりません。生身の状態で避けて、逃げて、走る。生と死を垣間見た先にある真なる【生】を掴み取るのです』
『コゥ! 追いかけっこだよー! ふぁいとだよー!』
デッドオアアライブの追いかけっこなんてお断りしたいんだけど!
『あ、コハク次来るわよ』
「ッ!」
ギリギリのところで加速ッ。
俺がさっきまでいた場所に、無数の氷の槍が突き刺さった。
ちきしょう! ああやってやる、やってやるさ!
生き残ってみせるぞこんちくしょうめぇ!
◆
5日後。
『うむ、こんなものだろう。クレア』
『はいはい』
意識朦朧とした俺の頭上で、3つの爆発が起きる。
その方向を見上げると、さっきまで空を飛んでいたブリザードバード亜種が粉々になっていた。
「……お、わ……った……」
ようやく眠れる……。
『コハク様、まだ終わってはおりませんぞ。スフィア、回復を』
『かしこまりました』
……あぁ、体力が回復していく。していってしまう……。
体のダルさがなくなって、今にも飛び回れそうなほど体が軽い。
スフィアの持つ未来の技術で造られたフルポーション。
傷、ダメージ、状態異常、体力。振りかけるだけで全てを全快にする摩訶不思議な薬物だ。
お陰で休む必要はないが、休むことができない。
頼むから精神的に少し寝かせて欲しい。
『コハクー、起きなさいよー』
ちょ、頭ぺしぺし叩くのやめて。
ダメだ。ここで起きたらまた何かやらされる! ここは起きられない振りを……!
『ムカッ。起きなきゃ頭頂部燃やすわよ』
「起きたー! よく寝たー!」
ちきしょう、その脅しはずるい……。
諦めて立ち上がると。
スフィアの目が光り、俺の体を頭の先からつま先まで光で覆った。
『……体力面は問題なく向上していますね。疲れた度にフルポーションで回復させた甲斐がありました』
「……そっすね……」
この子達の前じゃ、隠し事もできやしないか。知ってたけど。
『コハク様。基礎体力の方は以上になります。続いては体の操作方法についてです』
操作方法?
『最初に覚えてもらうのは、避けです。無駄な動きを一切省き、相手の攻撃を紙一重で避ける。そうすることで、戦闘時の体力の温存が可能です』
「増えた体力を温存するの?」
『例えばコハク様と同じ体力の敵がいた場合。動きに無駄がある方がより多くの体力を消費し、やがて体力が尽きた方が負けます。つまり死です』
な……なるほど。言われてみれば確かに。
魔族と戦った時も、俺は剣士の技能に振り回されていた。
完全に使いこなせているわけじゃない。
体の使い方はわかるが、わかるだけだった。
つまり、次は戦闘方法ってことか。
「……オスッ! よろしくお願いします!」
『よい返事です。さあ、ビシバシいきますよ!』
「あ、できれば手加減してもらえれば……」
『長引けば長引くほど、魔王の復活は近くなります。猶予はありませんぞ!』
……ええい! くそ、やってやる! やってやるよ!
俺だって幻獣種テイマーとしての誇りと意地がある!
みんなのマスターとして、主として、やるっきゃない!
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