絶海の孤島──⑤
絶海の孤島にやって来て、丁度1週間が経った。
その後も、みんなの助けを得ながら剣士の動きを体に叩き込んでいく。
剣の扱い方。
体の動かし方。
目の配置。
力の入れ方、抜き方。
とにかく、やれるだけ俺の力で魔物を倒して行った。
が、当然そう上手くいかない時もあり。
「無理無理無理無理! 龍種は無理ィ!」
捕食者の頂点・オブ・頂点、龍種。
しかも、その中でも最も獰猛として知られるヴリトラ型龍種だ……!
前にも言ったが、龍種の中にも格というのがある。
下から順に、ドラゴネット、ワイバーン、ムシュフシュ、ヴリトラ、ヒュドラ、ドレイク。
トワさんの使役しているのは、ドレイク型龍種。その中でも色付きと言われる黒龍だ。
ヴリトラ型はドレイク型ほどではないが、とにかく動くものを何でも餌としか思っていない。
つまり、俺も餌としか思われてない!
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
流石にヴリトラ型の龍種とやり合おうとする気概も根性もないよ!
「ぬおおおおおっ!?!?」
咆哮と共に放たれるブレスを回避。
だが熱波によって、服が少し焼け焦げた。
避けたはずなのに熱だけで焦げるって、そんなのありか!?
『コゥ、ブレス斬って! ズバーって!』
「それができたら苦労はしない!」
『情けないわね。根性見せなさい!』
「世の中には根性で越えられないものの方が多いの!」
根性や気合いで困難を越えられるなら、人生もっとイージーモードだよ!
でもみんなはまだ手を出さない様子。
ちくしょうっ、まだ頑張れってか!
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
「ッ!」
こっ……がっ……!?
咆哮と同時に放たれた、見えない砲弾のようなものが俺を叩き──。
「がっ……!? うっ、オロロロロロロッ!」
なっ……んだ……!?
内側から揺さぶられたような気持ち悪さに、胃の中の物が全部出た。
外部破壊じゃなくて内部破壊の咆哮……やばいっ、意識が……。
目の前に迫る巨大な口と牙。
そいつが俺を食わんと大口を開け。
『はい、ストップよ』
「ガルァッ!?」
俺と龍種の間に突如現れたクレアが、小指サイズの炎で吹き飛ばした。
……まだ息はある。だが牙は折れ瀕死の重症だ。
『ご主人様、いま回復致します』
スフィアがどこからともなく取り出した緑色の小瓶。
それを飲むと、体の怠さから痛みまで全て完治した。
流石、未来の回復薬……とんでもない効果だ。
体の不調がないか確かめてると、クレアが申し訳なさそうな顔で俺の顔の前を飛んだ。
『ごめんねコハク、怖い目に合わせちゃって。本当なら直ぐに助けたかったんだけど、1度生身で龍種と戦った方がいいってみんなと話して……』
『コゥ、ごめんね』
『申し訳ございません、ご主人様……』
「ぁ……い、いや、大丈夫。確かにみんなの言う通りだよ」
そうだ……俺はこれから自分自身も強くなる必要がある。
その為に、色んな種族の魔物と戦って経験を積まなきゃならない。
こんなところでへこたれてる暇はないぞ、俺。
立ち上がり、気持ちを切り替える。
……そうだ、この瀕死の龍種はどうすれば──。
『《ソード・オブ・レイン》』
──え?
突如、瀕死の龍種に豪雨のように降り注ぐ光の剣。
穿ちては消え、貫いては消え、風穴を空けては消え……ミンチになるまで止まらず、やがて完全に消滅した。
……何事?
『コハク様ァ! ご無事ですかあああああ!?』
っ! この声は……!
声のした方を見上げる。
『ライガ! ライガ!』
『うるさいのが向こうから来ましたね』
空を飛んできた剣神ライガが、血相を変えて降り立った。
『コハク様、お怪我はありませぬか!?』
「あー……うん、大丈夫」
『ほっ……ご無事で何よりです』
ダメージを負ったって言ったら、面倒なことになりそうだし黙ってよ。
『ライガ、何でここにいるのよ。里を離れていいの?』
『うむ。コハク様の気配が近くなったのを感じたのでな。里は警備隊に任せてきた』
ライガは改めて俺を見ると、跪いて頭を垂れた。
『コハク様。先日は仮の姿で申し訳ございませんでした。改めまして、お初にお目にかかります。私が正真正銘、本物の剣神ライガでございます』
「……うん。初めまして、だね」
この荘厳なオーラと威圧感……間違いない。みんなと同じ幻獣種だ。
それにさっきの剣の雨……あれが剣神ライガの力、か。
契約すれば、こういったこともできるようになるんだろうか。
跪いていたライガが立ち上がると、再度恭しく頭を下げた。
『コハク様。ここからは私が案内致しましょう。剣の里は、ここから少し入り組んだところにありますゆえ』
「……わかった。頼むよ、ライガ」
『はっ!』
こうして俺達はライガの案内の元、剣の里へと進んでいくのだった。
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