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【Web版】唯一無二の最強テイマー 〜国の全てのギルドで門前払いされたから、他国に行ってスローライフします〜  作者: 赤金武蔵


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神隠し──⑥

   ◆



 月明かりも星明かりもない深夜。

 いつにも増して人通りが少ない大通りを見つめ、赤い外套を着た2つの影が裏路地を歩く。



「チッ。おかしい……今日は人がいなさすぎる」

「恐らく新月の夜は外に出ないよう言われてるんだろう」

「このままでは儀式に支障が出るな……」

「……行こう。人通りは少ないとは言え、ゼロではない」

「ああ」



 2つの影が溶けるように裏路地を駆ける。

 音を立てず、空気を揺らさず。

 常人では真似できない動きと速さだ。



「ふむ……いないか」

「どうする?」

「本来なら身の綺麗な子供がいいんだが……背に腹はかえられぬ。孤児を攫う」

「わかった」



 孤児はバトルギルドがある大通りと、そこから外れた裏路地に多くいる。

 だが……今日に限って、その孤児でさえ見当たらない。



「どうなっている……? 孤児の数は100や200じゃない。もっといるはずだが……」

「どうする? このままでは儀式に間に合わないぞ」

「ふむ……む?」



 目の端に捉えた影。

 ボロボロの布を頭から被っている。

 男か女かさえわからないが、小さい。恐らく子供だ。

 子供は2人に気付かず、ゴミを漁っている。



「あのガキにするぞ」

「了解」



 まるで音を立てず、気配も気取られず、2つの影はするりと子供に近づき──麻袋で瞬時に包み込んだ。


 暴れる子供。

 1人が近くにあったレンガブロックで殴り付けると、大人しくなった。



「おい、殺したんじゃないだろうな」

「人間、そんな簡単に死なん。行くぞ」



 裏路地を駆ける影を、麻袋を持って追いかける。

 この辺の裏路地は既に庭のようなものだ。

 当然、外部への抜け道(、、、、、、、)も知っている。


 2人は廃墟となっている建物に入り、地下へ続く階段を走る。



「儀式まであと5分」

「間に合うな」



 まるで迷路のような地下通路を駆け抜け、地上へ出る。

 アレクスから少し離れた位置にある古びた教会。

 屋根は崩れ落ち、明らかに廃墟だというのがわかる。

 扉に手をかざし魔力を流すと、鍵が開く音が響いた。



「──来たか」

「すまない、遅れた」

「いや、定刻には間に合った」



 中にいる41人の影。

 身長もまばら。だが共通して、全員赤い外套をまとっている。

 それらが囲っているのは、燃え盛る炎の柱。


 麻袋を担いでいる1人が、炎の前に麻袋を置き、円陣に加わる。



「ではこれより儀式を執り行う。全ては我らの信仰する火精霊様のため」

「「「「「火精霊様のため」」」」」



 外套をまとった信者が、白手を付けた手を合わせて奇妙な言葉を発する。

 それに合わせて炎が揺らめき、まるで生きているかのように蠢く。



「さあ、火精霊様! 今宵も我らからの信仰をお受け取りください!」



 まるで悪魔のような叫び。

 それと共に、炎が麻袋を飲み込もうと動き。






「下衆共が」






 暴風により炎が消し飛んだ。



「つくづく貴様らは下衆だな。吐き気がする」

「なっ──!?」



 麻袋が吹き飛び、中の子供が揺らりと立ち上がる。

 どこから現れたのか、右手にはクリスタルで作られた槍。

 そしてボロボロの布から覗くのは、血塗られた赤い目。



「な……何者だ……!」

「何者か? そうだな……この中の何人かは知ってるんじゃないか、【紅蓮会】」



 子供が布を剥ぎ取る。

 その姿に、【紅蓮会】のメンバーのうち5人が小さな悲鳴を上げた。



「し、漆黒の髪……緋色の瞳……!」

「子供のような体躯……!」

「ま、まさか」

「バトルギルド、ギルドマスター……」

英雄(、、)、レオン・レベラードだぁ!」



 ざわめく【紅蓮会】のメンバー。

 だが、その中でもリーダー格なのか1人の男が手を挙げて落ち着かせた。



「……まさかここを嗅ぎつかれるとはな。ここには人避けの魔法を掛けてあるのだが」

「こっちには優秀な子がいるんでね」

「だがよいのか? 貴様は1人。こちらは43人。明らかに」

「不利、といいたいのか?」



 レオンの言葉に、リーダー格の男は黙る。

 レオンはため息をつき、呆れ顔で口を開いた。



「馬鹿じゃあるまい。貴様らを逃がさない布陣は、既に完成している。まあ──過剰戦力ではあるがな」



 直後。



「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!」



 恐怖という本能を呼び覚ます、地鳴りのような咆哮。

 それが頭上から聞こえ、慌てて見上げる。



「なっ……龍種(ドラゴン)!?」

「きょ、教主様! 黒獅子もいます!」

「あちらには妖精種(フェアリー)です!」



 穴の空いた天井から見下ろす暴力の権化。

 その傍には、不敵に笑う3つの人影。



「あらぁ〜、怖がらせちゃいましたかぁ〜?」

「ふあぁ〜。ねーみぃ……マスター、時間外労働なんで残業代弾んでくださいよ」

「ザニア。貴様はもっとミスリルとしてのプライドを持て」



 龍種(ドラゴン)獣王種(キング)妖精種(フェアリー)を使役しているテイマーなど、この国に3人しかいない。



「暴虐、トワ・エイリヒムッ!」

「獣王、ザニア・ウルクライン!」

「不撓不屈、コロネ・ザンバート!」


「恥ずかしいわぁ〜、まだその異名で通るなんてぇ〜」

「俺なんてまんまよ、まんま。もっと捻ってよね」

「獣臭」

「コロネちゃん、それ単なる悪口だから」



 頭上に現れたテイマーギルド最高戦力。

 これだけでも手に負えない。


 が──それだけでは終わらなかった。



「逃がさないよ、君達」

「とりあえず燃やされてみます?」

「片っ端からぶっ殺す!」



 背後の入口から入って来た3人の影。

 それを見た【紅蓮会】は、更に愕然とした。



「剣の申し子、アシュア・クロイツ!」

「魔術図書、コル・マジカリア!」

「魔闘拳鬼、ロウン・バレット!」



 いずれギルドが乗り込んでくるとは思っていたが、想像以上に悪夢のような光景だ。

 流石のリーダー格も、驚きを禁じ得ない。



「……ッ! 総員窓から逃げろ! 離脱だ!」



 前門の虎、後門の狼、頭上に龍。

 窓からならまだ逃げられる可能性がある。


 だが。



「だ、ダメです教主様! 窓へ近付けません!」

「見えない壁があります!」

「なに……!?」



 魔法を使われた兆候はなかった。

 だが確かに、窓に近付けないでいる。

 見えない何かを壊すべく剣で攻撃するが、そのことごとくを弾かれていた。



「な、何がどうなって……!」

「無駄だ。この防御シールドは数千年先の技術。今のあんたらじゃあ破壊することはできない」

「っ!」



 突如、空気からにじみ出るかのように、レオンの隣に何かが現れた。


 茶色がかった黒髪。金茶色の瞳。

 白いローブに片手剣が1つ。左胸にはテイマーギルドのシルバープレート。

 驚くほどの軽装。

 だが、長年の勘からか頭の奥で警報が鳴った。



 この男は殺すべきだ、と。

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