セアという魔族──②
ある程度食事を取り終えると、セアは満腹と疲れが来たのか船を漕ぎ始めた。
こうして敵に囲まれてるのに眠くなるって、豪胆なのか無神経なのか……。
「セア、大丈夫?」
「ふぁっ! ……ぃ……」
ダメっぽい。仕方ない、寝かせてやるか。
セアを抱っこし、ベッドに横にする。
見た目どおり、めちゃめちゃ軽かった。
それに服の上から触った感じ、ガリガリの骨だ。全くと言っていいほど、肉がない。ヤラシイ意味ではなく。
魔族と言えば、筋肉質な印象だったけど……末端魔族って、弱々しい存在なんだな。
「くぅ……くぅ……」
気持ちよさそうな寝顔で、布団を握り締めている。
こうして見ると、本当にただの子供みたいだ。
『なーんか、こいつに甘すぎじゃないかしら、コハク』
「そんな訳ないでしょ」
クレアとスフィアがジト目で見てくる。
けど、あのまま放置する方が良心が痛むでしょ。普通だよ、普通。
セアの監視をスフィアに任せ、俺は椅子に座った。
と、ライガが油断のない目でセアを睨みつつ、俺の傍に立つ。
『しかしコハク様。セアを囮に獄門のレトの居場所を突き止める……本当にできるのでしょうか』
「……正直、難しいとは思う。けど封印場所がわかれば先立って対処はできるし、今は地道にやって行くしかないよ」
新月草が封印を解くために必要なものなら、他にも必要なものはあるかもしれない。
セアを監視していれば、いずれ辿り着くでしょう。……多分。
「ん……ふあぁ。もう夜も遅いし、そろそろ寝ようかな。フェン」
『あーい』
床に伏せると、フェンリルのお腹を布団に寝転がった。
ベッドはセアに使わせてるし、一緒の布団に寝るのは論外。
フェンリルのお腹布団は好きだから、寝心地は最高にいい。
『やっぱり燃やしましょう、この魔族』
「やめなさい」
◆
それからたっぷり寝て、起きたのは昼前だった。
寝る時間も遅かったし、仕方ないか。
俺が起きたのに気付いたのか、スフィアが俺の傍によってきた。
『おはようございます、ご主人様』
「おはよう、スフィア。セアの様子はどう?」
『まだ寝ています』
あれ、まだ起きてないんだ。俺が言うのもなんだけど。
寝室に入り、ベッドを確認する。
「くかぁ〜……すぴぃ〜……ぐぅ〜……」
うわ、爆睡。君、人類の敵だって認識してる?
……気持ちよさそうに寝てるな。ヨダレまで垂らしてるし。
その布団、一応俺のなんですけど。
……とりあえず起こすか。
「セア、起きろ。もう昼だぞ」
「ぐかぴぃ〜……」
なんつーいびきだ。
肩を揺すっても、頬をつついても起きない。
もしかして魔族って夜行性?
最初の魔族の封印が解かれた時は、夜だった。
毒の魔族の時は、毒の霧に覆われていた。
創造のグラドの時は昼間だったけど、復活の直後だった。
可能性は十分ある。
でも、それだと俺も昼夜逆転生活をすることに……うわ、嫌すぎる。
だけど魔族の生活リズムに合わせるとなると、どうしても齟齬が発生するだろうし……。
「……仕方ない。今はこのままで──」
『よいしょーっ』
……え?
スフィアがいきなり、セアの寝ていた布団を思いっきりひっくり返した。
いわゆるテーブル返し。
寝ていたセアは、無抵抗のまま宙を飛び……ゴスッ! 脳天から床に落ちた。
「ふぎゅっ!?!?」
うわ、痛そう。
「スフィア、もうちょっとお手柔らかにだね……」
『私の拳で起こさなかっただけ、慈悲というものです』
確かに、スフィアの拳で殴ったら頭か砕け散っちゃうけど……でもこれも十分痛そうだ。
案の定、目を回して気絶してるし。
常備しているフルポーションをセアに振りかけてやると、巨大なコブが一瞬で無くなり、苦悶の表情も和らいだ。
「うぅ……ぁれ、ここは……?」
「おはよう。よく寝てたね」
「ぁっ、人間さんっ。お、おはようございます」
礼儀正しく、深々と挨拶をするセア。
……本当、やりづらい。頭についてる角を見ないと、一瞬魔族かどうか判断つかない。
人間にも善悪はある。それと同じように、魔族にも善悪はあるってことなのかも。
魔族……得体が知れないと思ってたけど、案外俺たち人間と変わらないのかも……?
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