新月の神秘──③
【続刊決定!!】
この度、『唯一無二の最強テイマー 〜国の全てのギルドで門前払いされたから、他国に行ってスローライフします〜』の続刊が決定しました!!
2巻は大幅な加筆や再構成を行いますので、よろしくお願いします!!
「これ、このまま採取していいのかな?」
『はい。採取自体には問題ありません。ですが、それを運ぶとなると話は別です』
あ、そうか。新月草は光に当てると消滅しちゃうんだっけ。
確かにこのままじゃ、持ち運んでも朝には消えちゃうな。
「どうしよう」
『大丈夫ですぞ、コハク様。スフィアがなんの力を持っているか、お忘れですか?』
「え? でもスフィアって、未来の兵器を使えるって……」
『その通りです。つまり未来には、新月草を保存する方法が確立されているのですよ』
あ……なるほど、そういうことか。
スフィアを見ると、どことなく誇らしげに胸を張っていた。
よくよく考えると、『今の技術では採取や合成は難しい=スフィアにはできる』ってことだもんな。
「スフィア、お願いできる?」
『お任せくださいませ』
スフィアがどこからか四角いケージのようなものを取り出した。
中には透明な液体のようなものが満たされていて、蓋を開けて触れてみると、異様な感覚に眉をひそめた。
触っているのに、触ってない。
手を抜いても何も付いてないし……なんか不思議な液体だ。
「何これ?」
『新月草を光の魔力から守る液体です。新月草は光に帯びる魔力を感知し、消滅します。なので光の魔力を完全に断つことで、光の下でも持ち運ぶことができるのです』
そんなカラクリなのか。
「手に付かないのは?」
『この液体は物質に張り付かないのです。なので手を入れても、抜けば元の乾いた状態になるのです』
未来の技術力すげー。
とりあえずこの場にある新月草を全てケージに入れてみる。
最後の1つだけ採取せず、蓋を密閉した。
1つだけケージに入れなかったのは、ちょっとした実験だ。
スフィアに言われ、クレアの手に白い炎が灯る。
辺りを明るく照らす炎により、新月草が姿を現した。
新月草を手に、森の中を歩く。
暫くして、少し広い湖にやって来た。
湖の中に新月草を入れる。
『クレア、聖炎を』
『オッケー』
クレアが黄金色の炎を灯す。
湖の中で揺らめく新月草。黒い、黒すぎる。葉の部分だけでなく、根っこまで真っ黒だ。
黒すぎて、水の中に葉っぱの形に穴が空いてるように見える。
違和感オブ違和感。違和感しか感じない。
そのまま見つめていると、灰になるように崩れていった。
ゆっくりと崩れ、湖に溶けるように消えていく。
クレアが炎を消した──直後。
湖が光り輝き、淡く光る泡が無数に現れた。
ただの泡ではない。どこか暖かさを感じるような色の泡は風に流され、ゆらゆらと湖の上を漂う。
「こ、これは……?」
『水に浸けた新月草に光を与えると、こうして光の泡となって辺りを照らすのです』
なんて幻想的な光景だろうか。
これが1つだけでなく、ここら一帯に植わっていた新月草が全て消えたら、どれほどのものだっただろう。
暗い森を包み込む七色の泡。
その光に誘われてか、森の中の魔物や動物達もどこからか現れた。
泡を見て、遊んでいる魔物や動物。
この光の泡は、獰猛な魔物すら惹き付ける何かがあるみたいだ。
「綺麗だね」
『ええ、とても』
『フェンリルは残念だったけどね』
『仕方あるまい。フェンリルの体はでかいからな』
はは。次の新月の日は、フェンリルにも見せてあげたいな。
◆
しばらく眺めていると、全ての泡は弾け、消えてしまった。
辺りが再び闇に包まれる。
だけど、さっきのような不気味さはなく、どこか安心感の漂う暗さだった。
スフィアがライトを点け、辺りが照らされる。新月草は無事に採取できたし、もうライトを点けても問題ないからね。
ライガが持つケージを見る。
うーん……改めて見ると、本当に黒い。驚きの黒さだ。
「それじゃ、行こうか」
みんなと一緒に、フェンリルの待つ森の入口に戻る。
──が。
「こ、こらー! なに光を点けてますですかぁー!!」
「え?」
突如、森の中に1人の女の子(?)が現れた。
なぜハテナかというと、黒いローブを纏っているから性別がわからない。
声の感じからして、女の子だ。
「ここは今日っ、新月草の生える森です! 今すぐライトを消さないと、新月草が消えちゃいますー!」
慌てたようにぶんぶん手を振り回す女の子。
が、肌の色は青く、伸びる爪は鋭い。
人間で言う白目は黒く、虹彩は赤く輝いている。
この特徴は……。
「えっ、魔族?」
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