呪い──④
新しい短編を投稿しました!
『聖女様の裏アカと秘密の活動を知ってるのは、プロカメラマンの俺だけです。』
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よろしくお願いします!
◆
「はぁ? 死霊系魔物のカース?」
「はいっ! その通りでございます!」
さっきまでの『キラッ☆』とした言葉遣いはどこへやら。
スフィアに羽交い締めにされ、必死の形相で頷くサーシャさん。
カース……そんな魔物聞いたこともないんだけど。
「スフィア、本当にそんな魔物いるの?」
『はい。個体数は少ないですが、確かに存在します。人々の呪詛や負の感情が集まり、呪いを生み出す魔物……それがカースです』
うわ、陰湿な魔物。
でもそうか。人間の負の感情が集まって生まれたから、こうやって人の言葉も喋れるってことね。
「ならさっさと浄化しちゃうか。クレア」
『オーケー』
「まままま待って! 待って下さい! 少しだけっ、少しだけ私の話を聞いてください!」
サーシャさんの顔で命乞いすんのやめろ。
「なら、まずはその体から出てこい。これ以上サーシャさんの体を弄ぶのは許さん」
「はい! 今すぐ出させて頂きます!」
と、サーシャさんの口が大きく開き、吐き出されるようにして黒い何かが出て来た。
うわ、グロ。きも。
黒い何かが全部出ると、サーシャさんは意識を失ったのか、全身から力が抜けた。
とりあえずスフィアにサーシャさんを任せ、黒い何かを見下ろす。
大きさは1メートルくらいだろうか。
おうとつのない真っ黒な人型で、華奢な見た目もあり子供のように見える。
クレアがカースの元に飛び降り、聖炎を見せる。
体をビクつかせて正座し、背筋を伸ばした。
「それが本体か?」
『は、はいっ』
「……なんで喋れるんだ? 魔物だったら人の言葉は喋れないだろ?」
『私は人の負の感情が集まった存在なのでその影響で人の言葉を喋れますですはい』
ふむ、なるほど。
そういや死霊系最強の魔物、リッチも言葉を発してたな。
人が媒体になって誕生する魔物は、言葉を発するのか。
「で、なんでまたサーシャさんに取り憑いた? 返答次第によっては、問答無用で消し去るけど」
『わ、私の呪いを消した人達の中に、面白い感情を持った人間がいると思いまして……』
「面白い感情?」
それがサーシャさんってこと?
「それってどんな?」
『この人間が、あなたのことを好──』
ガッ!!
カースが何かを言い終える前に、目覚めたサーシャさんがカースの口を塞ぐように鷲掴みにした。
「あ、サーシャさん」
「……コハク君、今の聞いた?」
「え? あ、ごめんなさい。最後まで聞こえませんでした」
「謝らないで。それでいいから」
そ、そっすか……?
なんかサーシャさん、めちゃめちゃ怒ってません……?
「ごめんコハク君。ちょっとこのちんちくりん借りるね」
「え? は、はぁ……?」
サーシャさんはいそいそと裏路地の奥に行くと、何か小声で話し始めた。
「何してるんだろう?」
『ご主人様、お気になさらず』
『コハクは知らなくていいのよ』
『コハク様も罪な男ですな』
『ボクの方がコゥのこと大切にしてるもん!』
???? ど、どういうこと? みんなは事情を知ってるみたいだけど……えっ、知らないの俺だけ?
待つことしばし。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』
戻ってきたサーシャさんとカースだが、カースが土下座して延々と謝罪してきた。
「サーシャさん、何したんですか?」
「ちょっとだけお話しただけさ。ほんのちょっとね」
嘘だ。ぜーったい嘘だ。
だって口だけ笑ってるけど、目が笑ってないもの。
「それでコハク君、ちょっとお願いがあるんだけどさ」
「はい?」
「このカースって魔物、ウチに譲ってくれないかな?」
……今、なんと?
「譲る、て……え?」
「文字通り、ウチにくれないかなって。話を聞くと、この魔物呪いが得意なんでしょ? こいつがいれば、アサシンの仕事に役立つと思って」
えぇ……いいのかな、そんなことして。
『大丈夫じゃないかしら。もし本当にコントロールできるのだとしたら、カースは本当に強力な力を持つわよ』
『そうですね。サーシャ様の力なら、コントロールできるかと』
どうやらみんなは賛成らしい。
でも、心配なものは心配なんだよなぁ……。
『それならばご主人様。提案があります』
スフィアの提案を聞く。
ふむふむ。なるほど……確かにそれなら安心かな。
「わかりました。ですが条件として、昼間にプレゼントした髪飾りにちょっとした細工をさせてください」
「細工? いいけど……」
髪飾りを受け取り、それをクレアが触れる。
と、青いクリスタルの中に青白い炎が灯った。
「綺麗……」
「火精霊クレアの聖炎を付与しました。これの発動条件は2つ。1つ、カースがサーシャさんに危害を加える場合。2つ、カースがサーシャさんを裏切る場合。これを守れない時、聖炎がカースを燃やし尽くします」
『ピッ……!?』
カースを睨むと、ガタガタと身を震わせた。
「サーシャさん、お返しします」
「ふふ。……コハク君、ウチのことそんなに心配?」
「ええ。サーシャさんは俺にとって、大切な仲間ですから」
「……仲間……そっか。うん、今はそれでいいよ」
……今は? それってどういう……?
サーシャさんは髪飾りを受け取り、再び髪を留めた。
「さあカース。馬車馬の如く働いてもらうから、覚悟しなよ」
『お、お手柔らかに……』
ふむ……何がなんだかわからないけど、一応一件落着、かな。
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