煉獄──⑤
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アシュアが地上に降りると既に一箇所に全員集まっており、煉獄の住人を見上げる。
レオンが厳しい表情で口を開いた。
「アシュア、あれはなんだ?」
「はい。グラドが煉獄の門を創造し、そこから煉獄の住人をこの世に召喚したそうです」
煉獄の住人は生者の命を食い、生者の攻撃では殺すことはできない。
よって、門の向こう側に押し返した瞬間にグラドを殺すことで、門を消し去る。それしか手段はない。
その事を説明すると、コロネが「ふむ……」と煉獄の住人を見上げた。
「まだ奴は完全に門から出ていない。もし出たら、グラドが門を消すのではないか?」
「はい。だから奴を外に出してはいけません。ここで食い止めます」
アシュアも煉獄の住人を見上げる。
既に頭と腕は外に出ていて、すぐにでも出てきそうだ。
「へっ! 煉獄の住人かァ……腕が鳴るぜ! コル!」
「はいはい」
コルがロウンに身体強化の魔法を掛ける。
ロウンの体を赤いオーラが纏うと、煉獄の住人へ向けて跳躍した。
元々高かった身体能力に加え、身体強化の魔法で強化されたジャンプ力。
それにより、煉獄の住人へと迫った。
煉獄の住人の眼前まで跳躍し、空中で構え。
「魔闘殲滅流──波紋掌底!」
眉間に掌底突きを放った。
波のような衝撃が肉体の内部を破壊する必殺の技。
「??」
のはずが、煉獄の住人は眉間を掻いて首を傾げた。
「マジかよっ、今のでビクともしねーのか……うっ!?」
煉獄の住人が無造作に腕を振るう。
間一髪、身を捩ってかわすが、まるで嵐のような暴風により吹き飛ばされた。
「ロウン! くそっ、オレたちも行くぞ!」
レオンの号令で、煉獄の住人へ向かっていった。
「ふふふ~。クルシュちゃん、魔人化行きますよ~」
「グルッ!」
トワがクルシュに飲まれ、魔人化する。
まるで漆黒の閃光のように飛翔し、煉獄の住人の胸部へと体当たりをぶちかます。
ドゴオオオオオォォォォッッッ──!!
体当たりの衝撃で、煉獄の住人は僅かにぐらつく。
「くっ、重い……!」
だが押し返すまでは行かない。質量が違いすぎる。
「なら、俺ちゃんたちのパワーならどうよ」
直後、その背後で待ち構えていたノワールと魔人化したザニアが、空間を蹴って煉獄の住人へと肉薄した。
「《獣王の衝印》」
「ガルアァッ!!」
ドッッッパアアアァァァァッッッ!!!!
魔人化ザニアとネロの二重の攻撃が、更に煉獄の住人をぐらつかせる。
「アイレ、アネモス、リーフ! 《阿修羅の螺旋風》!」
「「「────!!」」」
3つの竜巻が、更に螺旋状に連なり煉獄の住人の喉元を穿つ。
「なら僕も。《暴嵐の槍》!」
同時にコルが、空気を超圧縮した風の槍を放つ。
2つの最強クラスの風魔法が煉獄の住人を更にぐらつかせた。
「いいぞ、このまま──」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッッッ──!!!!!!!!」
今まで聞いたことがないほどのおぞましい咆哮が、衝撃波となって大気を震わせる。
その衝撃により、近くにいたトワ、ザニア、コロネは魔物たちと一緒に吹き飛ばされた。
「トワ!」
レオンが激昂し、霊槍レブナントを構えて棒高跳びの要領で跳躍。
吹き飛ぶトワを空中でキャッチした。
思わぬ助けに、トワは少しだけ胸が高鳴った。
「……お気遣いどうも……」
「気にするな。足場が無くなるのを防いだだけだ」
「は? ちょっ!?」
レオンはトワの背を足場に更に跳躍。
霊槍レブナントを構え、煉獄の住人に迫る。
「生者の攻撃は通じないのだろう? なら、黄泉の攻撃はどうだ?」
「!?」
霊槍レブナントが白い光を帯びる。
レブナントの能力により、黄泉の国から死霊が召喚された。
レオンの目にしか見えない死霊の軍団が、煉獄の住人へと群がる。
死霊の攻撃により、煉獄の住人は不快そうな顔をした。
小さくてダメージは微々たるものだが、確実に死霊の攻撃は通っているみたいだ。
「霊槍レブナント──死霊纏い・貫穿!」
レオンの攻撃が煉獄の住人の肩を撃ち抜く。
しかしそれも微々たるもので、この巨体相手ではダメージとはならない。
「チッ。木偶の坊が……!」
だがダメージは与えられる。
少しづつだが、こうして攻撃していくしかないのだ。
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