ライガVS偽フェンリル──②
『────!』
ライガへ向けて放たれる偽フェンリルの光線。
ライガは大剣の柄を握り締め、光線を下から斬り上げる。
黄金の光線は切り裂かれ、V字となってボード森林を焼き払った。
『チッ、下手に斬るのは得策ではないか。ならば……』
再度放たれた光線。
今度はそれを大剣を斜めにすることで、面で逸らすようにして受ける。
光線の軌道は変わり、天高く消えていった。
偽フェンリルはそれでも連発するが、ライガは弾き、逸らし、体に触れさせない。
だが……。
(くっ。完全にいなしているつもりだが、衝撃を殺し切れないっ。さすがはフェンリルと同等の力を持つ者……!)
手が痺れ、僅かだが押されているのがわかる。
このままだとジリ貧。油断すれば押し切られ、負ける。
(──負ける? 俺が? 剣神として生まれ、剣そのものとして生き、コハク様を守る存在の俺が?)
心に去来する初めての感覚。
腸が煮えくり返る。
臓物が焼け落ちる。
脳がスパークし、感情が爆発する。
(コハク様を守る剣が、この程度の贋物に負けるかッッッ──!)
刹那、ライガの中で何かが弾けた。
内側から込み上げる何かが、それを明確に欲した。
手数を多く? ──否。
力で押し潰す? ──否。
今必要なのは、圧倒的な速さ。
他を置き去りにする、絶対的な速さ。
それを求めた瞬間、ライガの脳内に必要なイメージがよぎった。
この世界ではない、どこか。
どこか遠くの世界で生まれた、一本の武器。
形状は太刀に似ている。が、太刀ではない。
【斬る】という一点に向けられた異界の武器が、ライガの求めに呼応して現れた。
「俺に傅け──妖刀村正」
周囲の生気を吸い取るかのようにドス黒いオーラを纏っている妖刀村正。
ライガがそれを握ると、ドス黒いオーラはライガに取り込まれるようにして消える。
次の瞬間、ライガの装いが変化した。
重厚な鎧は消え、黒く、薄い着物風に。
これが、この装いが、妖刀を最大限に使うことのできるものだと本能が理解する。
『────』
新しい姿になったライガに対し、偽フェンリルは警戒するかのように距離を取る。
しかしライガはそれを見ても慌てず、妖刀を腰に差して腰を落とした。
こんな構えは取ったことがない。
だがライガの本能が叫ぶ。
この技は、この構えが正解だ。
『雷鳴縮地』
ライガの体から雷が迸り、刹那にも満たない間に偽フェンリルへ肉薄。
偽フェンリルは反射的に爪撃を繰り出してくるが。
『遅い』
ライガの目には、それが酷くゆっくりに見えた。
そして──。
『居合一閃──雷牙』
キンッッッ──!!!!
何か甲高い音が響き渡り。
『────?』
偽フェンリルの体は、上下に真っ二つに割かれた。
『ふむ。俺にも上があったか……礼を言おう。俺はまだ強くなる』
空気に溶け込むように霧散した偽フェンリルを見つめ、ライガはコハクの元へと戻って行った。
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