ライガVS偽フェンリル──①
◆ライガVS偽フェンリル◆
『────!』
『フッ──!』
超高速で動く偽フェンリルの爪撃を、ライガは両刃剣で迎撃する。
手に痺れが残る。こんなこと、この世に生を受けて初めての感覚だ。
思わず顔がニヤける。
強者との戦いは気分が高揚するが、これ程の高揚は久方ぶりだった。
『焔月・螺斬り』
『────!』
螺旋状の焔の斬撃が偽フェンリルを襲う。
が、超高速移動によってそれを回避。かすり傷1つ負わせられない。
『ふむ。速さと力は本物のフェンリルと同等か……』
実際には、幻獣種同士での戦闘は行ったことがない。
だから今まで見てきたフェンリルの動きや力を元に推測する。
どんなに強くても、偽フェンリルは擬似生命体だ。全ての攻撃を弾く体毛は意味をなさない。
が、スピードとパワーは本物と遜色ない。並の攻撃なら当てることはできないだろう。
(ならば──手数で押し切る)
背後に10個の魔法陣を展開。
円形状に並んだ魔法陣が歪み、波打つ。
それらが様々な色の光を放つと、10本の剣が虚空から現れた。
『十剣舞踏・鋼翼』
まるで五対十枚の翼のように、背後に大小様々な形の剣を召喚。
そこから2本の両刃剣を手に取り、構えた。
圧が高まり、周囲の景色が歪む。
通常の魔物ならその圧だけで怯むが、偽フェンリルは牙を剥き出しにしてライガを威嚇する。
緊張感が辺りを包む。
刹那。
『参る──』
『────』
ライガと偽フェンリルが、同時に肉薄した。
ライガの双剣の技術は他の追随を許さない。
だが偽フェンリルの直感とスピードは、ライガの剣撃を尽く弾く。
剣と爪が交錯し、暴風のような衝撃波が発生した。
『破門天蓋』
無数の剣撃が、線の攻撃ではなく面の攻撃として偽フェンリルを襲う。
スピードとタイミング、申し分無し。
『────』
だが偽フェンリルは後脚に力を込め、右前脚を高速で突き出した。
天狼の撃鎮。
フェンリルの使う肉球を使った面の攻撃が、破門天蓋を押し返した。
『ほう。やるな』
『────』
お前もな。そう言われた気がした。
攻撃を押し返されたことで、2人の間には僅かに距離が生まれる。
油断なく構えるライガ。
鋭い眼光で威嚇する偽フェンリル。
(俺の手数と奴の手数は同じ。パワーも、正直俺の方が押されている、か)
体格差もあるが、獣型の幻獣種の中でもフェンリルはずば抜けたパワーを持っている。
過去に、数トンにも及ぶ鉄鉱石を涼しい顔で運んでいたのがいい例だ。
今はなんとか剣の技術で対応できているが、それでも獣型と人型にはそれほどの力の差がある。
(とにかく攻撃を続けるしかない。そして隙をついて頸を斬り落とす。……仲間の姿をしている者を斬るのは、抵抗はあるが)
両手の剣を構え、闘気を高める。
鋭い眼光はより鋭く。
風も吹いていないのに髪は逆立ち、揺らめく。
偽フェンリルの毛も、ライガの闘気に呼応するかのように逆立った。
『ッ……!』
『────!』
激突する剣と爪。
目まぐるしく変わる攻防。
絶対的剣技を誇るライガの未来予知に似た直感と、獣の王としてのフェンリルの超本能が、互いの攻撃を攻撃をもって防ぐ。
攻撃こそ最大の防御を地で行く2人だった。
甲高い音と共に火花が散る。
ライガの使う剣はどれも伝説として語られる剣だ。それらを自由に出し入れし、使いこなすことができるが……。
(信じ難い。まさか俺の剣で斬れぬものがあるとは……!)
オリハルコンすら切り裂く偽フェンリルの爪の前に、ライガは攻めあぐねる。
こんなこと初めての体験だ。
だが、そんなことでライガの闘志は消えない。
『面白い──!』
むしろ燃えていた。
渾身の一撃で偽フェンリルを後退させる。
その隙に双剣を脇に構え、純白のオーラを纏わせる。
『悪断ち・真引』
双剣を平行に引き斬るように振るう。
チンッッッ──!
何かが擦れた音が響き、次の瞬間偽フェンリルの爪が僅かに欠けた。
『ふむ。やはり斬り落とせぬか。フェンリルの爪は硬いな』
『────!!』
『ムッ──!?』
偽フェンリルの口内に魔法陣が浮かび上がったのを見て、本能的に回避。
直後、黄金の光線がライガがいた場所を通過した。
フェンリルの得意技、《天穿つ死の一撃》だ。
ボード森林を薙ぐように光線が通過し、木々や大地が吹き飛んだ。
『今のは食らったらまずいな。……ふ、面白い!』
今の一撃を見て、ライガは更に闘志を燃やす。
得物を双剣から大剣に変え、偽フェンリルへ向かって飛翔した。
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