VS七魔極・創造──⑤
◆
『コハク、全力で行くわよ。付いてきなさい』
「う、うすっ」
俺の内側にいるクレアから、炎のような怒りの感情が湧き上がるのを感じる。
俺自身は熱くないけど、周囲が熱気で揺らぐ。
……いや、俺だけじゃない。みんなの周りも怒気によって景色が歪んでる。相当お怒りみたいだ。
「凄い……俺も感じるよ。幻獣種の存在を……!」
「え、ええ。みんな激怒してるので……」
「はは。これは……」
アシュアさんですら冷や汗を流している。
その気持ちわかる。これはヤバい。というかここら一帯が更地になる可能性がある。ヤバい。
『眼球沸騰と血液蒸発、どっちがいい?』
『処す処す処す処す処す処す処す処す処す処す……』
『とりあえず死んどくか、害虫』
『ガルルルルルルルルッッッ……!』
「弱い虫ほどよく吼える」
ブチィッ──!!
『『『『殺す!!!!』』』』
スフィアの腕が組み代わり、両腕が砲塔に変わる。
『目標捕捉。──爆撃』
超重量級のミサイルが連射され、グラドへ向かっていく。
グラドは鋼鉄の盾を作り出すと、その尽くを防いだ。
ミサイルの爆撃音と衝撃波がここまで届く。
余りの巨大さに、思わずこっちがたじろいだ。
『聖剣カラドボルグ──星薙!』
「──ッ」
直後、ライガの召喚した剣が無限に伸び、鋼鉄の盾を真っ二つに斬り裂いた。
その奥にいたグラドにはギリギリでかわされたけど、その顔には僅かな焦りがあった。
『裂き殺す!』
「速──!」
フェンリルの移動速度は、馬車で1ヶ月かかる距離を1週間で走破するほどだ。
だけどそれは、俺らがフェンリルの背に乗っている場合。
枷がないフェンリルの本気の高速移動は、超至近距離では視認することすらできない。
巨大すぎる殺気で避けられたが、グラドの頬はフェンリルの爪で引き裂かれた。
『コハク!』
「うん!」
人差し指でグラドに狙いを定める。
手に纏っていた炎を圧縮し、凝縮し、黒く光り輝く黒炎を作り出し。
「『《深淵の鳳凰炎》!!』」
漆黒に輝く黒炎の怪鳥が、グラドへ放たれた。
「チッ」
あれはっ、魔銀の盾……! しまった、防がれる……!
『砕け散りなさい!』
だがスフィアから放たれたガトリング砲が、魔銀の盾を木っ端微塵に砕いた。
「しまっ──」
《深淵の鳳凰炎》がグラドを包み込む──が、無数の触手のような腕がグラドを護るかのように蠢き、本体に燃え移る前にちぎれた。
魔銀の盾は物理攻撃に弱く、鋼鉄の盾は魔法攻撃に弱い。
あいつがどんなものを創造しようと、こっちはそれに対応できるだけの力がある。
絶対に、逃がさない。
ちぎれた無数の腕が、瞬く間に生えてくる。
多分あれも創造で創り出したものなのだろう。
あれがある限り、本体にダメージを与えるのは難しい、か。
「なるほど、なるほど。これが幻獣種と剣聖の本気か」
「本気ではないけどね」
『アシュア様の言う通りです。この程度が本気だと?』
「いいや──十分だ」
グラドの手から漆黒のオーラが放出されると、5つの球体となる。
それらが揺らぎ、蠢き、徐々に何らかの形を作っていった。
って……こ、これは……!?
「み……みんな……!?」
まるで影のように黒く、表情に変化はない。
が、そこには間違いなくスフィア、ライガ、フェンリル、アシュアさん。そして魔人化している俺とクレアがいた。
まさか、俺たちの姿形を創造したのか、グラドは……!
「君らの力と瓜二つの俺の人形たちだ。倒せるものなら、倒してごらん」
くっ……! もしそれが本当なら、あれはとんでもない強敵だぞっ……!
「へぇ……あれが幻獣種の本当の姿かい? こうして見るのは初めてだけど、どれも強敵そうだね」
え? アシュアさん、見え……あ、そっか。あいつが創ったものはあくまで擬似生命だから、あの姿なら見えるんだ。
…………。
「そうでしょう、強そうでしょう!?」
『コハク、今喜んでる場合じゃないから!』
はっ!? そ、そうだった。今は戦いに集中しなきゃ……!
『ふむ。誰が誰にします?』
『では、俺はフェンリルとやろう。1度やってみたかった』
『じゃあボクはライガとやる!』
となると。
『私たちがスフィアね!』
『え、じゃあ私がご主人様と……? うぅ、羽虫だけなら思う存分やれますのに』
『アンタねぇ!』
はいはい、喧嘩しないの。
「それじゃ──行くよ、みんな!」
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