終戦──④
「簡単です。ターコライズ王国とは、今後ブルムンド王国の友好国として手を結ぶことになりました」
「……友好国?」
ターコライズ王国側を見る。
ビクッと肩を震わせ、黙って俯いたままだ。
この反応……友好国なんてものじゃないな。
多分だけど、今回の件と刺客達の命を盾にして無理な条約を結ばせたんだろう。
その代わり、幻獣種の力を使ってターコライズ王国の国力を回復させる、とでも持ちかけたのかも。
「……友好国だからというのが、理由ですか?」
「いけませんか? 仲間になる国が困っている。これを助けたいと思うのは、人情でしょう?」
ふむ、理由はごもっともだ。
(スフィア、女王陛下は嘘をついてる?)
『心拍計測──体温計測──。嘘をついているようには見えません』
(……真実と嘘を混ぜれば、信憑性が増す、か)
といっても、スフィアの計測を逃れるほどの度胸、そして冷静さ。
この人がブルムンド王国の女王になる理由も、なんとなくわかるな。
さて、理由は聞いた。
問題は俺の心だ。
正直な話をすると、どんな理由があろうとターコライズ王国の国力を回復するのは賛成できない。
生まれた国、育った国というのは関係ない。
俺の心がそれを拒否してしまっている。
だけど、このままターコライズ王国を衰退させておくのもなんとなく後味が悪い。
ならどうするか。
……うーん。この件を引き起こした張本人を引っ張ってくるか。
(スフィア、幻獣種を呼び出すにはどうすればいい?)
『今のご主人様でしたら、少量の魔力を使えば召喚できるかと。ただ、長時間の召喚はできないのでご注意ください』
(わかった、ありがとう)
俺は右手に魔力を集中させると、それを足元に向かって落とした。
「いでよ、ガイア」
直後、落ちた魔力が幾何学模様を作り、膨大な魔力が噴き出すと共に半透明の人影が浮かび上がった。
エメラルドグリーンに輝くロングヘアーに、黄金に輝く瞳。
大樹を思わせる存在感ある服。
周囲にはツタが触手のように蠢いている。
これが幻獣種、大地の神ガイア、か。
ガイアは俺の前に跪き、頭を垂れた。
『お初にお目にかかります、コハク様。私は大地の神ガイア。以後お見知り置きを』
「ああ、はじめましてだね」
って、ガイアを召喚してもみんなに見えなきゃ意味ないんじゃ……。
『ご主人様、ご安心を』
(スフィア?)
『ガイアはこの世界において、神として崇められています。永きに渡り崇拝されてきた念が力となり、唯一人間が視認できる幻獣種なのです。まあ、本物を見たことがあるのは、世界中を探しても極一部の者のみですが』
何それ聞いてない。
でもスフィアの言う通り、ガイアを見た全員が一斉に跪いた。
「が、ガイア様っ。こここ、この度はお日柄もよく……!」
『カエデ、かしこまる必要はありません。私は今、コハク様とお話しているのです』
「は、はいっ……!」
お、おぉ……一国の女王を黙らせるなんて、さすが……。
『コハク様、本日はどのような御用向きでございましょう』
「……ガイア、質問がある。俺がターコライズ王国からブルムンド王国に移住した時、なんでターコライズ王国の国力を下げた?」
『下げてはいません、元に戻っただけです。元々ターコライズ王国の土壌の力は、私がいる頃の4分の1ほどなので』
つまり、ガイアの力で国力は4倍に上がっていたってことか。
なるほど、そりゃあ生活水準も下がって、生活しづらいだろうね。
『それに、我ら幻獣種のマスターであるコハク様に危害を加えたターコライズ王国に力を貸すほど、私達は寛容ではありません』
その言葉に、ターコライズ王国側が更に縮こまった。
この言葉、つまり俺がお願いしても、ガイアはターコライズ王国に力を貸すことはしないってこと、か。
『私は明確に優先順位を付けています。一番はコハク様の生命。2番はコハク様の幸せ。3番にコハク様の周囲の幸せ。4番目にその他です』
「だから、俺がブルムンド王国に移住した時に、ブルムンド王国の国力を上げた、と?」
『コハク様に何不自由ない生活を送っていただくためです』
幻獣種のみんな、俺のこと好きすぎ問題。
でも、ここまで慕ってくれているのは素直に嬉しい。
俺の為に怒ってくれて、俺が不自由ない生活を送れるようにしてくれている。
それだけでも、俺は十分恵まれている。
けど、本当にそれでいいのだろうか?
この事実が世界中にバレたら、俺1人の存在を巡って世界中が戦争を起こす可能性がある。
俺に取り入り、機嫌を取れば、その国の国力は増すから。
そうなれば、俺の身の安全は保証できない。
それなら、俺は。
「ガイア、頼みがある──」
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