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20.クリスティアン・クロムウェルの独白



 少女の背を見送り、クロムウェルは深い息をついた。


 グロリア・ヴィクトリア。エドガー王子の美しい婚約者。


 とても良い子だ。明るくて、優しくて、人らしい弱さも持っていて。幼女時代にもその片鱗はあったが、そのまま素直に育ってくれたようだ。

 エドガー王子の心の安定に少しでも役立てば、というつもりで婚約者に推したのだが、結果としてそれ以上の働きをしてくれている。あともう一押しすれば二人の心は互いに通じるだろう。


 今日この後起きる『彼女の危機』に、きっと王子は駆けつけてくれるはずだ。

 そうすれば迷える彼女の心も、王子の心も、お互いの大切さを再確認するに違いない。


 たとえそれが天候も、怪我まで仕組まれた事件であっても……。


「グロリア、あなたを利用する形になってすみません。けれど分かって欲しい……王国の安全の、そして『彼ら』と私の悲願のためなのです」


 自分が許される存在でないことはわかっている。歴代の王達の悲劇を、もう繰り返すことはさせない。そう決意してから長い年月が経った。悲しみも、優しさも、心のすべてを凍てつかせ、幾多の屍を乗り越えてきた。


 脳裏にあるのは、かつての二人の笑顔。

 そして歴代の王達のように、折り重なる亡骸。


「アンゲリス、マキ、もう少し、もう少しですから……」


 苦しげなクロムウェルの表情を雷光が映し出す。

 それを見る者は誰もいなかった。


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