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18.先生の相談室(2)


「一年ほど前も同じように来られましたね。王子のお気持ちが分からない、と」


 そういえば。脳裏にうっすらと記憶が蘇る。

 もちろん前世の記憶は無かった頃だから、純粋な悩みだったのだろうけれど……逆を言えば「グロリア」は確かに悩んでいたのだ。

 ふむ、と先生が腕組みをする。


「王子は恐らく感情を顔に出さない性格ですし、その立場故に感情を押さえているのでは、と私はお答えしました。それでは解決になりませんでしたか」

「私もそうは思うのですが、今日は心の中で強く引っかかってしまって」


 私は心の中を引っかき回して言葉を探した。


「もちろん、親同士が決めたことで、王子の感情が私に向いていない、ということは前提として分かるのですが……それでも、本当はどう思われているのかな、と」


 先生は腕組みのまま考え込んでいたが、小さく息をついた。


「直接聞く、というのがあなたに出来ればよいと思うのですが、王子はあれで頑固な方ですからね。内側に抱え込んでしまう。ただ思い詰めると一途な点もあります」


 ふむ、と先生は考え込んだ。


「あのとき、あなたは言われていましたね。自分に自信がない、と。今もそうですか?」

「ええ。それで、婚約者にふさわしいのかと悩んでいます」

「なんと、そこまで思い詰めておられるのですか!」


 私自身も驚いている。正直、ここまで心が混乱するとは予想外だった。うーん、今朝まではしっかり断罪ルートで行くつもりだったのに。


 そう、きっと気の迷いなんだろうとは思う。王子とあんなに近くで踊ってしまったから。触れあってしまったから。


 さっさと忘れて当初の目的通り断罪された方がいい。そうしてユイカを婚約者に、私は安泰の引退をして王子からもこの気持ちからも解放されて……。


「あなたは、本当にそれでいいのですか?」


 先生の、青灰色の瞳が静かにこちらを見つめていた。


 ユイカの言葉と同じだ。二人の言葉が重なって心に刺さってくる。そこで答えに迷ってしまう自分の心……ちょっと弱すぎじゃない? ぐぬぬ。

 眉間にシワを寄せる私の前で、先生が首を傾げた。


「一年前とは違いますね」

「えっ」

「あのときのあなたは即答していた。『自分の考えはいいんです。王子の望むままに、嫌いなら嫌いで、好きなら好きで、その考えに沿って行動すれば幸せだと思うんです』と。けれど今の貴方は迷っている。自分の考えを必死にまとめ、彼の感情を、内面を知ろうとしている」


 もしかして、と先生は小さく微笑んだ。



「……あなたは、王子に恋をなさったのでは?」


 私の心臓がひとつ、大きく飛び跳ねた。


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