旅立ち
フロドとグリーズという謎の冒険者達に出会ってから一週間が経っていた。
「……さて、準備も出来たし、あとは母さんに挨拶しておかないとな」
「フェンー朝よー! って、あら珍しく早起き……その荷物は何かしら?」
起こしに来た母親が既に起きていた息子に驚き、持っていた物を見て、目の色を変える。
「ああ、丁度良かった。母さんに話が──」
「駄目よ」
話をしようとする息子の言葉を遮り、断る母。
「まだ何も言ってないんだけど」
「言わなくても分かるわよ。貴方の母親よ。どうせ、旅に出たいとか言い出すんでしょ」
図星を突かれたフェンは、言葉にならない声を出す。
「駄目よ。父さんもそうだったけど、嬉しそうな顔をして、『俺、ちょっくら旅に出てくる!』って言ってもう十数年経つのよ」
「いや、俺は戻ってくるよ」
怒り心頭の母を安心させようと掛けた言葉がより火に油を注いだ結果となる。
「貴方のお父さんもそうだったわよ! 『大丈夫、大丈夫。帰ってくるから』って十数年帰ってきてないじゃない!」
「じゃあ、どうすれば良いんだよ!」
「そうね……なら、こうはどうかしら」
フェンの母の提案は以下の通りだった。
1.五年に一度は村に帰ってくる。
2.父親を見つけたら連れて帰ってくる。
3.定期的に手紙を出す。
2はともかく1と3は必ず。と釘を刺されるフェン。
「手紙って言っても近況報告ぐらいしか書けないけど。それと、なんで五年に一度?」
「そうね。近況報告くらいでいいわよ。旅に出るんだから、すぐ戻れないのは分かってるわ。だから、五年に一度にしているのよ。それだけでいいから帰ってきなさい」
フェンは数瞬考えた後、分かったよ。と返す。
「それなら文句はないわ。いってらっしゃい」
「ああ、行ってくるよ」
フェンは母親に見送られながら、村を出た。
こうしてフェンの冒険の旅が始まる。