第9話 ああああ、爆誕させる(☆)
「スラリーナ、スラリーナ……うん! 可愛くて良い名前なの! ありがとうマスター!」
ははは……マスターか、なかなか良いな。
あの《ああああ》よりはずっと嬉しいぜ。
「スラリーナ! 私はスラリーナ!」
「こら、あんまりはしゃがないの!」
さて、まあともかくだ。
俺はこうして色々みっともないザマを晒したりしたが、どうにか無事に指輪回収とこの表情豊かな可愛い女の子を助ける事が出来たんだった――
「やっほー! 元気してた? 呼ばれてないけど飛び出てきたみんなの名前の神様マリオンちゃんだよ! やっほぉ! やっほぉ! 元気元気?」
「うにゅ!? なに今の声!?」
「うっわ……出たな神様!」
ってか、相変わらずムカつく前口上だな!
しかもこんな幸せな一時にお邪魔するとか男の神様としてデリカシー欠けてますよ!
「もう暁斗君ってば……隅に置けないんだからぁ、このこの! そんな可愛らしいスライムちゃんを引っ掛けちゃって。もう私ぃ嫉妬しちゃう!」
うごっ!? 何だ今芽生えた明確な殺意は!
全身が炎で激しく焼けてるみたいに熱いぞ!
いや、もうそれよりもひたすらキモいわ!
良い年したオッサンがそんな言葉並べんな!
「マスター、マスター」
「うん、どうしたスラリーナ?」
「アレ……何? あの神様とか大法螺吹いてる汚物の塊みたいなイライラするのは誰なの?」
あら、スラリーナもあの神様見えてんのね。
それと……今凄まじい猛毒吐いたなお前。
しかも正面切って堂々とは恐れ入ったぜ。
「だが、まあ流石にこれにはあの神様も――」
「えへっ☆ そんなに私の事褒めなくてもいいじゃん? なに汚物の塊? うーん、可愛いスライムちゃんに言われたなら神様許しちゃうよ!」
「マスター、私アイツ殺したい」
「よし落ち着こうかスラリーナ」
うーん……ダメだ。てんで効いちゃいねぇ。
しかもさらにスラリーナに軽く反撃するとは、あの上空の神様はなんて屈強なメンタルを……。
「ゴホン。まあ、とりあえずお戯れはこの辺にしてっと。まずはおめでとう暁斗君。あっ、そのスラリーナちゃんには《ああああ》って聞こえるんだっけ。まあそんな些事は置いとくとして――」
いやそこは置いとくなよ!?
名前についてはお前がやった事だろうが!
「へへん、実はね今回君にプレゼントしたい物があるんだ。だから、ほら両手を前に出して!」
「……もしゴミとか渡して来たらキレるぞ?」
「アッハッハッハ! そんなアホな事は流石にしないよ! これに関しては割と真面目な話なんだよ! さあ、ほら今からそっちに送るからさ」
「はあ、分かったよ。こうか?」
俺はそう言われるがまま両手を前へと。
とりあえずアイテムをくれるっていう話だから乗せられるよう開けた状態で待ってみる。
すると……神様はそれを確認した後に、
「オッケー、じゃあ早速送るよ! それ!」
「うわ……何かピカピカする物が飛んできた」
そのまま何やら光を纏った物体を二つ。
ゆっくりと俺の両手へと降ろしてきたんだ。
そして俺の手元に降りた直後、次第にアイテムの光が治まって見えてきたその中身はというと、
「これは……腕輪か? あとこっちは饅頭?」
「うんうん。よし、無事届いたみたいだね。その君の両手に乗せたアイテムはそれぞれ『共鳴の腕輪』と『仲間玉』っていう名前のアイテムでね。いずれも魔物使いとしては必須な物なんだ!」
共鳴の腕輪……仲間玉……ねぇ。
「まあ、最初はそっちの綺麗な銀の腕輪『共鳴の腕輪』の説明からするからさ。そのお饅頭みたいな仲間玉は君の膝の上か近くに置いといて!」
「はいはい、置いときゃいいんでしょ。じゃあとりあえずこのベンチの空いてる場所にでも――」
「……じーーーっ」
なんかスラリーナがやたらと仲間玉を見てるんだけど。神様のプレゼントって事で警戒してんのか? 随分と嫌われたもんだな。
だがまあ今は説明に集中するとして、
「置いたぞ、じゃあこの腕輪から頼む」
「うん。じゃあ早速、まず共鳴の腕輪の効力は簡単! 君の仲間になれるモンスターがいたら光って反応する。それだけ! だから“今”は深く考えずに仲間に出来ないモンスターもいるぐらいだと思ってくれれば大丈夫だから!」
……なるほど、珍しく分かりやすい説明だ。
言ってしまえばこの腕輪は仲間モンスター専用のレーダーみたいな感じか。これからの冒険でもしも仲間になる奴がいたら……って、うん?
「それじゃ、もしかしてスラリーナは――」
「ああ、スラリーナちゃんに関しては私が先にリサーチしてるから安心して。彼女は君にとって真の仲間となる大切な存在だ! だからこれからもしっかり大切にしてあげるんだよ! いいね?」
ふう……そうか、それは本当に良かった。
せっかく一生ものの名前を付けてあげたんだ。
それを今更仲間になれませんでしたなんて言うわけにもいかないしな……マジに安心したぜ。
「ほんじゃあ次が一番肝心な部分ね! さっきおいてくれた仲間玉についてなんだけど……おや?」
うん? どうした? 面白い間抜け面晒して。
次はさっきの俺が置いた『仲間玉』の説明をするんだろ? ほらこの饅頭みたいなやつの……、
「って……あれ?」
ありゃ、仲間玉がいつの間にか消えてる。
えっ、あれれ? 何処に置いたんだ俺?
確かさっきまでここに置いてたはず……。
「一体どこに――」
「むぐむぐ、むぐむぐ」
………………………………。
「むぐむぐ、むぐむぐ」
「あ、あの……スラリーナさん?」
「むぐむぐ、なあに? マスター」
「君は一体何を食べていらっしゃるのかな?」
「マスターがさっき置いてたやつ。すんごく美味しそうな匂いがしてたから……つい出来心で」
「な!? なな、なにぃっ!?」
「あらあ、スラリーナちゃんってば食いしん坊なんだから。確かに仲間玉は仲間モンスターからすれば甘い匂いがするからね。しょうがない!」
いやそんな呑気な事言ってる場合か!
「おい神様、ご覧の通り手遅れだ! 既に仲間玉はスラリーナの腹ん中だ! だから早くこの玉の効果を教えてくれ! 何かあったら大変だ!」
「は、はい! えええっと……えっとね。とりあえず細かい点は省くとして、大きな特徴としてそれを食べたモンスターは【主に忠誠を誓うって契約】を結んだような感じになるわけなんだ!」
「それだけか? 他には何かないのか?」
「それでその主人に忠義を尽くすって高い志によって基礎能力の向上やモンスター特有の固有能力とかも獲得できるわけ。まあ一言で言えばパワーアップだね!」
「……そうか。それなら安心だな」
ほっ、なんだ心配かけさせやがって。
食べて強くなるだけなら別に問題はないな。
てかむしろそれはそれで嬉しいって言うか……とりあえず良かったぜ。変な悪影響が無くて。
「ああ、あともう一つ!」
「……まだ何か効果があるのか?」
「うん、実はね。それ食べると追加で――」
「う……うにゅ!?」
ピカリッ!
うおっ!? なんだなんだ!?
スラリーナの体が急に閃光に包まれて!?
しかも、なんか……様子がおかしいぞ!?
心なしか球体から形が少しずつ変わって――
「うにゅにゅにゅにゅう!」
「おお! 言ってる間に【変形】始まったね!」
「なにっ!? 変形!?」
「うにゅにゅ! 力がみなぎってくるの!」
と、とりあえず体調面は問題なさそうだ!
だ……だが、まさかこの変形してる形は!?
この見覚えがある二足の生命体の姿って!?
「おい! これって――」
「そう、まんま見た通り! なんと腕輪に選ばれたモンスターが仲間玉を食べると擬人化……もとい【娘化】しちゃうってワケなんだ! じゃあ後よろしく! エッチな事しちゃダメよ!」
「あっ、おい待て! 話はまだ終わって――」
「マスター? これ……確か人間の言葉でおっぱいって言うんだよね? 男性の好きな――」
「なっ!? なにこの急展開ぃっ!?」
そうだ……ま、間違いない……。
この青紫色のにゅるにゅるとした触手状の髪。
そして同配色のこの姿は……まさしく数秒前に神様が無責任に残していったあの言葉通りっ!
「ううう、でもやっぱりこの状態でのすっぽんぽんはちょっと寒い……かな? ねぇマスター。何かこのおっぱいだけも隠せるような服は――」
「スッ、スラリーナさん!? とりあえず戻って! お願い! 元のスライムの状態に戻ってください! アウト! こんな公衆の面前だと完全にアウトだから! あと色々見えちゃってるからあ! 胸とかお尻とか丸見えだからあああ!」
「……にゅ?」
なんと! うちのスラリーナは人型に変身!
さっきまでの水餅みたいな球状から【モンスター娘】に変身しちゃったんだった……。