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第6話 ああああ、見つける


 井戸の中は俺が思っていたより広かった。

 それこそ広さ的には人一人が生活できそうな広い空間で、溜まった水量は浅く具体的には足から(すね)までが浸かるくらい。


「静かだ。聞こえるのは水滴の音くらいか。これでこのジメジメとした感じさえなければ、絶好の引き籠りゲーム環境だったのにな……」


 それでさっきまで俺はそんな井戸の中。

 おばさんから預かったランタンの明かりを頼りに降りた場所の隅々まで目を凝らし、目的の指輪を探ってみたんだが……何処にも無かった。


「おっと、いかんいかん。今はおばさんの指輪探索とスライム探しだ。だから余計な事は考えず気を引き締めて()()()()を進んでいかないと!」


 そこで俺は現在そんな井戸内の横穴。

 周りを覆っていたレンガ壁の一部が老朽化したせいか不自然にボカリと開いていたその穴に足を踏み入れ、如何にもモンスターが出そうな何処かへ繋がる怪しい通路を進んでいたんだった。



 ―― ―― ―― ―― ―― ――



「ピピー! ピィピィ!」

「ピキー! ピキキィ!」

「ピピピ! ピッピッピ!」


 ……見つけた。

 辺りを警戒しながら謎の通路を進んだ先。

 突き当りの最深部の部屋に()()()()はいた。


「ピ……ピピ……ピピ」


「ピキキッ! ピキキキ!」

「ピピピィ! ピピピィピィ!」

「ビギギッ! ピビィッ!」


 一目で確認しただけで合計4匹。

 俺がこの扉に付いている小窓から確認出来たこの小部屋のモンスターの総数は4匹。

 そして……多分あれ全員がおばさんの言ってたスライムだな。


(青くて丸い体、体質はゼリーみたいなプニプニボディ。如何にもスライムって感じだ)


「ピピィ……ピピピッ!」


「ピキ! ピキキッ!」

「ピンピィ! ピンピピィピィ!」

「ビギギィ! ピギギィギィ!」


「それで……あれが目的のやつか」


 そして同時に発見した。おばさんの指輪だ。

 あと状況がよく分からないがその指輪を頭に乗せたスライム一匹、そして残った三匹のスライムがそれを取り囲んで会話しているみたいだ。


 恐らく誰が貰うかの相談でもして――



「おや! モンスターの言葉が聞こえないの?」


 うわっ!? ビッ、ビックリした!

 何だ! 急に神様の声が聞こえたぞ!?


「いっ、一体どこから――」


「ここ、ここ。君の肩。ほらこっち見て」


 肩? うわっ!? ホントだ何かいる!

 何か喋る小っちゃい神様の人形が乗ってる!

 思わず叩き潰したくなる様なクオリティだ!


「へへぇ、これは私の分身。その名も『小型命名神ミニマリオンちゃん』だよ。可愛いでしょ? キュートでしょ? 添い寝したくなるでしょ?」


 なに、添い寝? 寝首を掻くの間違いだろ。

 誰がこんな毛むくじゃらの小さいオッサンの人形と添い寝したくなるんだ? 呪い装備か?


「まあまあ、とりあえず【()()()()()()()()】が聞こえないみたいだね? ったく、しょうがない。ここはミニマリオンちゃんデビュー記念に一つお役立ち情報をあげようじゃないか」


 よし、ならば処刑はそれを聞いた後だ。

 ヒントを聞いた後に(つぶ)してやる。

 小型神様、良かったな延命出来て。


「ゴホン。では教えよう。まずは意識を集中させてモンスターの言葉にしっかり耳を傾ける。そしてこう言うんだ。『秘技・魔物聴覚同期(モンスターイヤー)』発動! ってね。これで君は()()()()()()()()()()()()()()()()になるよ!」


 うーん……なんかスゲェ胡散臭いんだが。

 だが確かに魔物使いとしてモンスターの言葉を聞き取れないってのは問題あるしな……仕方ない、ここは神様コイツの言う通りに意識を集中して、


「ええっと、秘技・魔物聴覚同(モンスターイ……)――」


「まあ別にこれ言わなくてもいいんだけどね」


 じゃあ言わせんなやっ!

 なんか恥ずかしいだろうが!



「だ……だからこれは持ち主の所に返そうよ? あのおばさん困ってたみたいだし……」



 おっ……本当だ、聞こえてきたぞ!

 ともかく意識を集中したら本当に聞こえた。

 さすが魔物使いの面目躍如ってとこ――



「馬鹿野郎! そんなのは落としたニンゲンが間抜けなだけなんだよ! 落としたからには俺達スライムのもんだ! そう思うだろ、お前ら?」


「はい、100%兄貴の言う通りです!」

「落としたニンゲンが間抜けなだけです!」


「で、でもこの指輪は私が見つけたのに――」


「黙れ! 兄貴がそう言ったからにはそれが正解なんだよ! ほら! 分かったら黙ってさっさとそのキラキラな指輪を兄貴に渡せってんだよ!」



 おい……なんだよ、この光景。



「ダメ! これは渡さないの! それにこのチームのルールじゃお宝は見つけた者の自由にって約束でしょ? だったらこの指輪は……キャッ!?」


「こいつ、(メス)の癖に言わせておけば――」

「へへへ……兄貴どうします? コイツ?」


「ふん。決まってんじゃねぇか、お前ら体当たり攻撃の準備だ。コイツに俺達、(オス)スライムに逆らうとどうなるか教えてやろうじゃねぇか!」


「「あいあいさー!」」



 何なんだよ……この胸糞悪い光景は。



 ペチンッ! ペチンッ! ペチンッ!


「キャッ!? ぐぐ……や、止めて……」


「止めろだ? じゃあ指輪を早く寄越せよ!」

「そうだ、とっとと兄貴に渡せばいいんだよ!」

「弱っちい女の癖に調子乗んな!」


「そ、それはダメ……この指輪は絶対にあのおばさんの所に返すの……だから渡せない!」


「けっ! 頭の悪い女だな!」

「少し回復が使えるからって調子のんなよ!」

「おらおら! おらおら! 指輪を渡せ!」


「ぐっ……ぐっ……キャッ……」


 なに……男が束になって女の子いじめてんだよ。いくらお前らがスライムだからって、やっちゃいけない境界線ぐらいあんだろうが。


「さて……どうするんだい暁斗君?」


 そんな俺が激しい憤りを覚える最中。

 肩の神様はふとそう尋ねてくる。


「あれ、見捨てるかい? いくら最弱と言われるスライムとはいえ三体も相手だ。それに性格も中々に狂暴そうだしね。苦戦しちゃうかもしれないよ? さあどうする。助ける? 見捨てる?」


 ……確かに神様の言う事には一理ある。


 人相手の喧嘩ならともかく、常識の通じない動きをするモンスター相手の戦いならば話は別だ。

 それも三匹となればスライムとはいえこの狭い空間じゃ苦戦は免れない…………だがな!



「そんなの決まってんだろ……神様」



 そうだ……今はこれで良い。

 俺のこの選択は決して間違っちゃいない。

 たとえ、もし仮に肩の神様が笑おうとも、



「ここは男らしく――」

「おっ?」



 俺はこの行動に堂々と胸を張れる。

 男として……一匹のオスとして。だから!


「あの優しい女の子(スライム)を助けに行くに決まってんだろうが! それが男ってもんだ!」


 俺はそう自分を鼓舞する意味も兼ねてその傷つきながらも必死に指輪を護る女の子を救う為に、大声で勢いよく眼前のドアを蹴破ったんだっ!


ここまで読んでくださりありがとうございます。

次回、主人公大活躍の巻となります(申し訳程度の予告)

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