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第42話 ああああ、解決する


 ……全てが解決した。



「ガッハッハッハッ!!! 我がリッツァーニャに住まう全ての民達よ! 今日は満足のいく限界まで食事を食らい、酔いつぶれるまで飲み、筋肉を傷めるまで盛大に踊り盛り上がるがよいっ! 今日は我らの英雄生誕祭&解放の宴だあああ!」



「「うおおおおおお! ブラストル王!」」

「「我らの待ち望んだ解放にばんざーい!」」

「「英雄の《ああああ》様ばんざーい!」」



 と……時折、王様が入れる言葉の影響で思わず耳を塞ぎたくなるとんでもない声援や盛り上がる声が返ってきたりしてるが……まあとにかく。


 まずは最初の食料事件について。


 俺とスラリーナがデブーンを無事に討伐した事により、この国の秘宝であり生命線である【恵みの石】をもう渡す必要がなくなり、このリッツァーニャ国は以前までの豊かで安寧な生活に戻った。


 そのおかげか国の周囲に点在し枯れかけていた大地にもみるみるうちに緑が戻っていき、今じゃあ果樹園や牧草が生え揃う牧場に早変わり。それこそ、映像を早送りして見ていたかのように急激な速度で痩せた地は恵み溢れる地へと変化したんだった。



「うむむぅ……しまった、喉が……みずぅ」


「もお、貴方ってば調子に乗って。はいお水」


「うぐうぐ……ぶはあ! 死ぬかと思った」



 よって。現在開かれているこの国中をあげてのド派手な宴に並ぶ食料も、全てその恵みの石の凄まじい恩恵によるもので誰もかれもが【()()()()()()()】を待ち望んでいたせいで、あちこちで食べ過ぎて喉を詰まらせる奴が続出。


「うんむ!? うんむうんむ!?」


「ありゃりゃ……勢いに乗せられてチキンの丸飲みなんかするからだぜ? ほらよ。水代わりに景気良くお酒で流し込みな。うちの最高品質の酒だ」


「ごく……ごく。ほおお……危うくめでたい席なのに窒息死する所だった! 危ない危ない」


 ったく。いい大人が何やってんだか。


 まあ今までは(デブーン)に貴重な食料を奪われ抑圧されるばっかで、長い間ひもじい生活をしていた反動でこうなっているんだろう……それでもふざけ過ぎだとは思うけど。



「いやぁ、にしてもまさかな……ガルシア」


「ええ、王様。私も驚いています。まさか我が国に単身で乗りこんできた()()()()()()()()()が伝説のモンスター『アニマルキング』だったとは」



 そして。次は【モンスター側】についてだ。

 追加の内容だったがこれについても解決した。


 あのデブーンが言ってた通り、奴を灼熱の息で丸焦げにしたら強力な呪いの力を失ったのか。

 当事者の俺達も含めて全員がデブーンだと思い込んでいた、あの()()()姿()()()()()()()()()がその本来のあるべき姿へと変化し戻ったんだった。



「ふむ……本当にな。よもやあの温厚で聖獣と名高いモンスターが……私はてっきり全滅したと聞いていたが我が国の領土で生存していたとは」


「私も伝承だけで実物は初めて見ました。本当に実に美しいモンスターでした。それこそモンスターと言う概念が何なのか分からなくなる程に神秘的でまだあの体毛の輝きは頭に残っています」



 そう。


 あのデブーン城の元々の城主だった人物であり、デスアーマー達が真に仕えていたという獣王。

 全身を覆う黄金に輝く体毛が眩しい、ライオン型の魔物であるアニマルキングへと姿を変えて再び彼ら(デスアーマー)の長として君臨する事となったんだった。



「しかし……王様。よろしかったのですか?」


「うん? 何を……ああ、【彼女】の事か?」


「はい、いくら《ああああ》様の紹介で事情があったとはいえ……当初は敵対していたモンスターを城内へ招き入れるというのはどうも――」


「ガッハッハ! この宴の席でそんな些事は気にするに値せんわ! それにお前もしっかりと確認したであろう。彼女は我々に危害を加える気など更々無い事に。だからこのめでたい宴では魔物も人間も分け隔てなく楽しむ権利があるのだ!」


「わ、分かりました王様!」


「ガッハッハ! そうだそれでいい! あんまり細かい事で悩み過ぎるとお前の頭がさらに薄くなってしまうぞ! ガッハッハッハ!」



 ああ……そういえばそうだった。

 今回の食料&獣王失踪事件以外にもう一つ。

 まだ一つだけ大切な報告が残っていたんだった。


 そう、件の【()()】についてなんだが……。


「……我が君(マイ・ロード)。やはり、私はこの場に招かれる存在ではなかったのではないだろうか? 寛大なブラストル王はああ言ってくれているが、兵士達の目がどうしても厳しい――」


 彼女……いや、元々は先の獣王アニマルキングに仕えていた【アーマーリーダー】という白銀の鎧型モンスターと言った方が正しいだろうか。



「まあまあ、あんまり気にすんなって。せっかくの祝いの席なんだしさ。それにお前の煙玉が無かったら事件は解決出来なかったんだし、もっと堂々としとくべきだぜ! ()()()()()!」



「……そうか。そうだな!」



 これは、あのデブーン撃破後の話だ。

 時期は奴を倒してからこの宴会が始まるまでの空白期間で、場所はあの魔物の城にて玉座に返り咲いた獣王が俺達の事情を色々と尋ねてきた時の事だ。


 それで俺達が大まかな事情を説明し終えると、獣王は熟考した後に以前からの側近である彼女(アーマーリーダー)へ向けて『こんな命令』を下したんだった。



『我にこれまで長く仕えてきてくれた最優の兵、アーマーリーダーよ。初めに言っておくがお前は本当に優秀な兵士であった。優しさと強さを兼ね備えた兵としても理想的な人物だった……だが、だからこそこんな辺境の古城でその才を生かせずに朽ちていく事だけは我をしたくない。よって……此度をもってお前と我の()()()()()()()する』


『っつ!?』


 その時の彼女の動揺は分かりやすかった。

 けれどもその王の命に逆らう事はしなかった。

 だからこそ獣王もそんな彼女の後押しをするようにして、俺達の話も兼ねてこう続けてくれた。



『勇者とは常に成長をするものだ。だからこそお前もそちらの勇敢なる魔物使い《ああああ》殿の元で世界中を旅し、更に見聞を広めてこい。お前にはその器と器量がある。そして世界中に蔓延(はびこ)る魔王の配下を倒してくるのだっ!』



 ……と、アニマルキングは俺達へと斡旋(あっせん)

 仲間モンスターを見極める共鳴の腕輪(レーダー)に反応した彼女が、選ばれし魔物である事を承諾したうえで彼はそう勧めてくれたんだった。


「むぐむぐ……あれ、アマーリアってばマスターの所にいたの? そんな端っこで遠慮せずに私みたいにご馳走いっぱい食べればいいのに……」


「ああ、またそんなに口の周りを汚して……ほらこのハンカチをあげるから綺麗に拭うのだ。君も一端のレディなんだからもっと清潔感を――」


「うにゅう……マスター。またアマーリアが私にお説教垂れてくるの。どうにかしてほしいの」


「ダメ。彼女の言う事を聞きなさい」


「にゅう、マスターのいけず!」


 だから、こうして俺は新たな仲間モンスター。

 仲間玉による【娘化】はまだ出来ていないが、その重厚な銀鎧に身を包み鮮やか剣術を扱える戦士型のモンスターである彼女を正式に仲間へ引き入れ、それからすぐに(アーマー)をもじった固有名となる《アマーリア》の名前を授けたんだ。



(しっかし……)



「いいか、スラリーナ。小さな子供ならともかくとしてだ。君は見た目からして立派な女性だ。だからチキンを口に詰めっぱなしで話したり、ソースで口周りを汚したり行儀の悪い事は控えるべきだ。多少は自由でも最低限のマナーは身に――」


「むうう……今日は折角のおめでたい席なんだからこんな時くらいは別に羽目を外しても……」


「こんな時だからこそマナーは必要だ。そもそも君は自由奔放過ぎると思うぞ。我が君(マイ・ロード)から聞いた話でも色々と目立つ点が――」


「ふええ、火に油を注いでしまったの」


 こうスラリーナと比較してみると、アマーリアは【常識あるお姉さんタイプ】って感じだな。きっと娘化したら()()()()()()()()()()()()()()()()()()にでも変形をするような予感がする。


 それに……。


(これからの戦闘面においても彼女みたいな戦士型は必要だ。まだどんな固有能力を秘めているか分からないけど、少なくとも装備していたあの『槍斧(ハルバード)』と身の丈はある『大きな盾』を生かして前線で活躍してくれる事だろう)


 そう俺は新たな仲間であるアマーリアの実力についても考えてみる。

 スラリーナは確かにステータス的にも優秀で灼熱の息は強いが……吸収でもしない限り、単体に対する重い決定打が無い。


 だからこそアマーリアのような重い一撃を放てる戦士キャラと組ませる事で、その敵を翻弄する素早い立ち回りを強化でき、さらにお互いに持ち味を生かせる事が出来るというワケだ。



「ブツブツ……だから君は……ブツブツ」


「ふにゅう……アマーリアは厳しいの」



 まあ……これは偶然かどうか知らないが。

 そんな防御力に優れる鎧モンスターである彼女の強固さが、このきちんとした常識人という性格で表れているのだろう……多分だけど。



(さあてと。それじゃあ彼女の戦力確認はこれくらいで済ませるとして……もう来るかな?)


 そうして……俺はお説教を続けている仲間を二人を尻目に、お互いの分析をある程度済ませると意識を逸らす。賑やかなのも結構だが……後に控えている()()()()()の為に。

 

 えっと、ブラストル王の話だとそろそろ。

 もうすぐに到着する予定って話だけど――



「おーい《ああああ》殿! 君がお待ちかねの美女の踊り子たちが到着したぞ! 早くこちらの特等席へ来るが良い! ガッハッハッハッハ!」



(いよっしゃああっ! ドンピシャだ!)


 はい来ました! 待ってました!

 本日の俺のメインイベント!


 豪華な食事も勿論嬉しいけど、やっぱり男としてファンタジー世界に来たからにはこの【セクシーな踊り子】達の美しいおっ……おし……踊りを見ないと始まんないよね! いよーしっ!



「はーい! 今行きまーす!」



 さあてと。それじゃあ失礼しまして!

 早くブラストル王と一緒の特等席に移動だ!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――



「マスタァァ……嬉しそうにどこ行くの?」

「……我が君(マイ・ロード)いずこへ?」



 あ゛っ……。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

次話は投稿時間を少しずらします(´▽`*)

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