第40話 ああああ、対面する
「「デブーン様! 客室の捜索終わりましタ!」」
「「こちらも物置の捜索が完了しましタ!」」
「んおおお……それで、どうだったっぺ!? 奴らはいたのかど? オラの部屋から逃げていったあのニンゲンの男と、水色の亜人種の娘は!」
「そ、それが。その……」
「誰もいませんでしタ……」
「ぐぬぬぬっ! まだまだ探すんだっぺ! 奴らはこの三階に逃げ込んだに違いないんだっぺ! 部屋の隅から隅まで探すんだ。まるで姑がホコリを見つけるぐらいにだど!」
「で、ですがもう探せるところなんテ」
「客間、我々の寝室、物置、更衣室。この三階にある場所は一通り探しましタ。これでもまだお探しになるつもりですカ? デブーン様――」
「うう……うるさーいっ! あのとっても賢い兵士長が確かに三階に逃げたって言ったんだっぺ。だから間違いないんだど! だからもう一度念入りに探すんだどぉ! 家具の下、クローゼットの中、窓の外、天井裏! ネズミでも探すような気持ちでもう一回このフロア中を探すんだっぺ!」
「は、はい! 分かりましタ!」
「今すぐもう一回探してきまス!」
「ボソ……見つかんないと思うけど」
「今、誰かオラに文句言ったのかど!?」
「いひっ!?」
「「い、いいえ! とんでもありませン!」」
「「では我々はすぐに探してきますのデ!」」
「ぐぬぬぅ……なんとしても見つけてやるんだっぺぇ……絶対に見つけて【あの場所】にだけは行かせないようにしてやるっぺぇ……オラの秘密を知った奴を生かしてはおかないんだどぉ……」
―― ―― ―― ―― ―― ――
教会跡地。
デブーン城をどうにか脱した俺達はすぐに目的地へと足先を変え、デブーン攻略の為にボロボロの廃墟と化したこの教会へと無事に到着した。
「スラリーナ。暗いから足元には気を付けろよ」
「うにゅ。ありがとうなのマスター」
いつ、何が原因でこの教会が放棄されたのかは見当すらつかなかったが、俺達が到着した段階では既に天井や壁の一部には大きな穴が幾つもあり、外から見ても吹き抜けの筒抜け状態。
他にもさぞ美しかっただろう窓のステンドグラスも大半が割れ散っており、今や神を信仰していた頃の名残などは跡形もなく失せていたんだ。
そうして。そんな廃墟の中で俺達は、
「でも明かりがあって良かったの」
「ああ、そうだな。ランタンは荷物の制限的に持って来られなかったからな。助かるぜ」
この教会の大部分を占めた礼拝堂にて。
現在の俺達はその中でも聖書台の下。
神父や牧師さんが集まった民衆たちに聖書の中身を語り聞かせる際に使うその台の下に、俺達はこの【教会地下へ通じる隠し階段】を発見。
それからはこうして一定の間隔ごとに備えられ燃えているロウソクの明かりを頼りにし、一歩一歩深部を目指して降りていっているというのが現状だ。
地下という環境であるが故に己の足音以外は何も聞こえない静寂。それもボス戦前という状況なのだからどこか不気味さや寒気を覚えさせる。
「にゅ? あれって……ねぇマスター?」
「うん?」
するとそんな道中。突然のモンスターの奇襲に備えて、先行してくれていたスラリーナが何かを見つけたのか後方にいた俺へそう向けてくる。
何か変わった物でも見つけたのかな。
仕方ない、俺も少し足を速めてっと……。
「よっ、ほっ、と……どうしたスラリーナ。何か変わったアイテムとかでも見つけたのか?」
「ううん違うの。マスター、あれ――」
「うん?」
視線をずらし彼女の指の先へやってみる。
するとその通路の奥にはあった物は……。
「ご、ごくり……よし、覚悟を決めよう」
扉だ。
恐らく最深部に繋がる扉だろう。
僅かなロウソクの明かり程度でそこまで詳しくは確認出来ないが、鉄縁で象られた重厚そうな片扉がここから見える……つまり。
「スラリーナ、敵は仮にも魔王配下の魔物だ。油断するんじゃないぞ」
「ご、ごっくん……了解なの」
この先に恐らく待ち構えているだろう。
俺達がここに来た目的であり討伐すべき【デブーン本体】が……どんな形状をしているのか分からないが、今も俺達を見つける為に不死身の身代わりボディを操りながらイライラしているに違いない。
「行こう……」
「うにゅ!」
さあて、そんじゃあ相手さんの望み通りにこっちから乗りこんでその姿を拝見させてもらおうかな?
食いしん坊大悪魔さんの真の姿をよ!




