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第3話 ああああ、水晶に触る


「実は魔物使いなんです」


 俺は王様の問いにそう正直に答えた。

 まだこの異世界の情勢がどうなってんのかは全く知らないが、とりあえず補助金が出るという『戦士』や『魔法使い』などではなく【魔物使い】と、


「なるほど、魔物使いか……そうか」

「すいません、ご期待に添えなかったようで」


 まあ贅沢を言えばそりゃ補助金は欲しかったさ。

 特にまだ異世界に飛ばされて一時間も経ってない俺にとって装備を買い揃える金は貴重だ。

 だがこんな場所での嘘は勿論御法度だろうし、たとえ嘘をついてもデメリットの方がデカい。


(よってここはこれで正解――)



「そうか、まものつか……なっ!?」



 ……うん?



「我が王よ! ま、まさかこの青年!?」

「う、うむ! 信じられん……ま、まさか()()使()()じゃと!? そんな事は……あり得ん!」


 へっ? へっ? なに? 何なの?

 普通に正直に魔物使いって言っただけなのに!

 なんか王様の態度が急変したんだけど!?

 それに乗じて他の兵士とかもどうしたの!?


「おいおい、嘘だろ!?」

「そんな馬鹿な!?」

「信じられません……」


 なんでそんな人を疑う様な視線を向けるの?

 おまけになんで皆揃ってうろたえ始めるの?


 まさか……俺何か変な事言っちゃいました?


「わ……わたくし頭が痛くなってきました」

「震えが……あまりの驚きで私も震えが――」

「ごくり、控えめに言って……希望の光?」

「おお……救世主よ。貴方様に祈りましょう」


 ……ってそんな最近流行りの謳い文句(フレーズ)に便乗してる場合じゃねぇ! 気付けば何か俺に向かって拝み始める兵士までいるんだけど!? あと希望の光って何!? 全然控えめに出来てないんだけど!? 過剰評価も良い所なんですがっ!?


「そ、其方! 本当に!?」


 うわっ! そうこうしてる内に次は王様だ!

 玉座から勢いよく降りたと思ったら俺の方に飛んで来たよ! めっちゃ近い! あと鼻息荒い!



「ふぅふぅ……も、もう一度だけ……聞くぞ!」

「は、はい……な、なんなりとご自由に……」

「新たな冒険者である《ああああ》よ。其方は本当に()()使()()なのだな!? 嘘では無いな!?」



 もう……ホントに威圧感が半端じゃなかった。

 ヤベェくらい目を血走らせて息を滅茶苦茶荒くしながら、それこそ嘘をついたら殺すぞくらいの圧迫感を伴って王様は俺に尋ねてきたんだ。


 だが俺だって嘘は付いてない! だから!


「はい……俺は魔物使いです。間違いないです」


 もう一度はっきりと真実を言ってやった。

 この戦士でも魔法使いでも無い魔物使いというありがちな職業能力が、どうしてここまで王様達全員を動揺させるのか見当すら付かなかったが、


「そ、そうか。やはり本当に其方は……」


「ボソボソ……信じられませんわ」

「ワタクシ……今日この瞬間を生涯で最も大切な一日として後世に伝えていこうと思います……」

「おお……神よ。ご加護に感謝いたします」


 ひとまず俺はもう一度、今にも俺の首根っこを掴んで絞め殺してきそうな超近距離にまで接近して来ている王様へ向けた……。


「よ……よし、りょ……了解した。では《ああああ》よ。其方の言葉を疑う訳では無いが一つだけ。たった一つだけ簡単な試験を行わせてくれ」


「し、試験ですか?」


「ああ、そうじゃ。なに難しい試験では無い。ちょっとした確認の意味も込めての試験じゃ」



 ―― ―― ―― ―― ―― ――



「お待たせしました。《ああああ》様」


 うーん……まだイマイチその名前ああああには全く馴染めないが、まあそれはともかくとして……俺の前には()()()()()()()が用意された。


「では失礼致します」

「あっ……うん、ありがとう」


 というのも普通なら透明が多いイメージの水晶玉だが、これに関してはその中で赤・青・黄・紫とコロコロと色の変わる光が輝いていたからだ。


「で、これをどうしろと?」


「ふむ。では試験の内容だが……触るだけだ」


「えっ? 触るだけ?」


「うむ、触るだけで試験は終了する」


 なんだ……随分と拍子抜けな試験だな。

 てっきり戦闘でもするのかと思ったぜ。


「その水晶は『選別の水晶』と言ってな。その手で触れた人間の職業能力を解明する魔法が込められておるのじゃ。例えば()()()が出れば戦士、()()()が出れば魔法使いというわけじゃ」


 なるほど、だからカラフルに光ってんのか。

 それじゃあ魔物使いは一体何色に――


 ピタッ。


「「「「「んんっ!?」」」」」


「あっ、ごめんなさい。手が滑って――」


 しまった……ふと指先が触れてしまった。

 まだ王様の合図も無かったのに勝手に――



 ビカアアアアアアアッッッ!!!!



「うおっ!? なんだ!?」


 まさか今のワンタッチで反応したのか!?


「「「うおおおおおおっ!」」」


 だが……確かにすげぇ反応してるみたいだ!

 すんごい耳に響く音と共に水晶は激しく発光してやがるっ! まるで自爆前の魔物みたいにこの王の間全体に眩い閃光をずっと放ってるぞ!



「ああああ……ま、まさか……こんな!?」

「伝説は……あの伝説は本当だったのか!?」

「しかし! これは疑いようのない真実です!」



 さて……まだ何だかよく分からないが。

 ひとまずはこの試験の肝心なポイントとなるこの空間中を照らし続ける光。

 この水晶が放つ閃光の色はというと――



「にに、【()】じゃっ! 伝説の七色……()()()()じゃっ! あ……あの伝説の通り、レインボーじゃああああ! レインボーパワーじゃああ!」


「うおおおおおおおおおっ!」

「これは、控えめに言って……神!?」

「ああ……だめ、もうワタクシ意識が……」

「故郷の子供達やったぞ……パパはお前達に最高の物語を聞かせられそうだ……うううう……」



 そう虹色だった!

 ま、まあとりあえずこれで分かったのは、


「ううう……認めよう。いえ、認めさせてください! 其方は……いや《ああああ》殿は伝説の魔物使いの職業能力をお持ちの方と。この世界を救う鍵となる重要な力を持った方という事をっ!」


「いよ! 我らが《ああああ》様!」

「魔物使い《ああああ》様、万歳! 万歳!」

「この感動は墓に入るまで大事に保管します!」

「希望の光! 英雄! 究極! 無敵! 神!」



「……………………はい?」



 なんか、俺があの神様ラスボスから貰ったこの職業【魔物使い】は何かスゲェ能力だったって事だけだった……。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

これにて序章は終了となります。

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