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第25話 ああああ、空路を往く


 ……地上から離れたのは人生初だった。


「どうだ、駆動装置の様子は?」

「はっ! 異常ありませんでした!」

「よし、機体の方は何か異常無かったか?」

「はっ! そちらも問題ありません!」


 飛空艇。

 轟々と機体が空を切る音や、ヘリコプターとはまた違う馬鹿でかいプロペラがギュルギュルと幾つも回転する音が響くこの大型の航空船にて、


「わあっ、ねぇマスターマスター見てみて! あの山の麓の所! すっごくおっきな湖があるのっ! ほらほら! あそこあそこ!」


「どれどれ? おおっ、本当だ!」


 俺とスラリーナは次なる目的地『リッツァーニャ』を目指しこうして船上で待機していた。


「うーん……他にも何か面白い物無いかな?」


「おいおい、危ないからあんまり身を乗り出さない様にな。もしもこの高さで落下なんかしたら、いくらスライムのお前でも一溜りもないからな」


「うん! 分かったの!」


「よし、偉いぞスラリーナ」


 だがしかし……何とも新しい刺激だな。

 平日は大学で勉強で休日は家でクソゲー三昧と引き籠りがちな俺からすればこの飛空艇で空を旅するという感覚は斬新だ。まあ若干怖いけど――


「お疲れ様です《ああああ》様!」


「おうっ、そっちも見張りご苦労さん。どうだった? 何か怪しい影とか飛んでなかったか?」


「はい! 今の所は異常ありません!」


「そうか、それならいい。引き続き頼むぜ」


「はっ! 了解致しました!」


 けれども……あくまでここは異世界だ。

 俺のいた地球なら飛行機が()()()()()()()()()()()、爆撃機などで叩き落とされる様な事例も無く快適な空の旅を満喫出来る筈なんだが……。


「お疲れ様です《ああああ》様。それにスラリーナさんも。()()()()()の際は本当に助かりました。いくら我々にも武器があったとはいえ、あのままでは苦戦は必死だった事でしょう……」


「あはははは……まあまあ、あんまり気にせずに整備の方に集中してくれよ。アンタ達がいなくなったらこの飛空艇は真っ逆さまだからな」


 だがそこは流石にルールが違う異世界。


 飛空艇と言っても敵との遭遇(エンカウント)せずに全世界を巡れる手段と思われがちなゲームとは違い……残念ながら現実(リアル)ではモンスターが平然と襲ってくる為、墜落の危険が常に付き纏うという点に大きなギャップを感じた。


「いやあ、それにしてもスラリーナさんのブレス技【灼熱炎(しゃくねつほのお)】は凄まじかったですね。私、あんな高火力の技は生まれて初めて見ましたよ。やはり伝説の魔物使い《ああああ》様の仲間だけはあります! 尊敬します!」


「褒められてるぞスラリーナ。良かったな」


「えっへん。あんな『キメラ』や『バルーン』の大群くらいなら私の必殺技で簡単に叩き落としてあげる! だから安心してねマスター!」


「ああ、また頼むぜ!」


 だが現状を正直に言うならこの通り圧勝。

 ハゲタカと蛇が合体したような【融合魔獣キメラ】や火球を吐きだす【風船型の魔物バルーン】などの宙を舞う敵との交戦も既に何度か経験したが、いずれもスラリーナの灼熱の息で軽く一掃してくれた。


「「あのスラリーナさん!」」

「「すいません、もう一回お願いです!」」


「もう一回って……さっきのアレ?」


「「「はい! さっきのアレです!」」」


「もおしょうがないんだから。じゃあ危ないから離れててね。それじゃいくよ……スウウウウウッ、ムググググッ! 灼熱炎しゃくねつほのお!」


 ヴォゴオオオオオオオッッッッッ!!


「「うおお! やっぱり凄い火力!」」

「「まさに火炎光線だああああああ!」」

「「貴方こそ最強のスライム娘です!」」


「ふう……えへへ、そう褒めないの!」


 うーん……。

 しかし本当に序盤からとんでもない技を身に着けたもんだな。

 広範囲に大ダメージ技ってバランスブレイカーもいいところだぜ……まあ助かるからいいけど――


「《ああああ》様。お取込み中すいません」


 うん? なんだ見張りの兵士か。

 てっきり報告はさっき済んだものと思っていたが、何か追加の報告でもあったのかな?


「どうしたんだ? また敵襲か?」


「いっ、いいえ。決してそんな物騒な報告ではなくてですね。実はもう少しで目標の着陸地点であるリッツァーニャの地に到着するという旨を先にお伝えしようと思った次第でして――」


「えっ? もう着くの?」


「はい。地図的にはあの並ぶ山々を越えた先がリッツァーニャの国境となってますので、後一時間もすれば着陸地点にたどり着ける計算です」


 ほほお。やっぱり空路だとかなり早いな。

 陸路だと道が入り組んでるから数日は絶対かかるって聞いてたが……空を往く飛空艇だとここまで短縮できるとは王様の計らいに感謝だな。


「では、続いて着陸後の説明なんですが……」


「ああ、それは大丈夫だ。確か俺とスラリーナは飛空艇から下りた後に一緒に積んでくれてた馬車に乗ってリッツァーニャに向かう。それでアンタ達は一旦王様の所に戻り報告する。だろ?」


「ええ、まさにその通りです。そしてご命令通りに一週間後にてこの場所で一旦様子見も兼ねてお迎えにあがりますので、その間はどうかお気を付けて。我ら兵士一同、《ああああ》様の武運をお祈りしております!」


「おう、任せとけ!」


 よし。そうと分かれば今の内に上空から見える絶景とこの心地いい風を満喫しておく事にしよっと! さっきのスラリーナみたいになっ!


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