第☆話 ああああ、スラリーナを紹介する(☆)
いわゆるキャラ紹介回。
「ふわああああああああ~~」
ふひぃ、今日もあくびが出るくらい平和だな。
雲一つない綺麗な青空に心地いい風、あとはゲームでもあれば良かったが……いきなり異世界転移させられたからそれは無理って感じか。
「さあてと……もう一寝入りするか」
しっかし。こうして屋敷の敷地内に用意されたハンモックで寝てると余計に魔王の配下ってヤベェ奴らがこの世界にいるのを忘れそうになるぜ……まあ言っても待機中だが――
「はあい! 暁斗君元気してた!? 私ですよ! あの有名な神回のレジェンド級にして皆の名前の神様、命名神マリオン様だよーんっっ!!」
「……リモコンどこにしまったけ?」
「ちょっと! テレビ消す感覚で私の存在を抹消しようとしないでくれる!? 残念だけど電源落としても別の方法で追い掛け回すからね!」
ストーカーかお前は!?
ってか……また出てきたのか神様。
相変わらず上空からムカつく顔してこっちを見下ろしてやがるな。なんか最近あの顔面見るだけで蓄積されるストレスが半端ないんだが……。
「もお、暁斗君ってば酷いんだから……私だって君みたいな冴えない男をストーキングしたくないよ! こっちにも選ぶ権利くらいあるんだよ!」
「勝手に人の心を読まないでくれる!?」
ああ……もう畜生っ!
あの神様のせいで心地いい時間がパアになっちまったじゃねぇかっ! あの野郎これをどう落とし前つけるんじゃ! オラァ!
「まあまあ……そういきりたたないの! ところでスラリーナちゃんは? またあの喫茶店で働いてるのかい? それとも遊びに行ってるの?」
「ああ、スラリーナだったら今はお昼寝中だぜ。この前働いてた喫茶店の店長から余ったケーキをたくさん貰ったとかで、色々食べた後にソファを独占したと思えばすぐに寝ちまったよ」
「なるほどねぇ。でもなんで君は外に?」
ギクッ!?
「うん? どうしたの?」
「そ、その……なんというか……あの純粋無垢な寝顔を見てたらさ……色々こう悪戯心に火が点くと言いましょうか……もう察してくれよ神様」
「ふぅん……なるほどねぇ。スライム娘とはいえあの美少女の寝顔を見てたらムラムラしたわけだ! うん、実に正直で私は良いと思うよ!」
うるせぇっ! あんま大声で公言すんな!
そういうのは同じ男性として心の中に留めとけよ! もしもバレたら軽蔑されんだろうがっ!
「それで? 今回の神様は俺に一体何の用なんだ? 次の目的地でも分かったのか?」
「ああ、そうそう。その事なんだけどさ。一応私もこの天界から暇があれば君達の活躍を見たり見なかったりしてるわけなんだけどさ……」
へっ……よく言うぜ神様。
いつも暇してるアンタが何言ってんだか。
「その……まああれだよ。なんやかんやで最初のボスもやっつけたんだしさ。ここで一つ冒険の振り返りも兼ねて、私に改めてスラリーナちゃんの成長具合とか技とかの紹介をしてくんない?」
「スラリーナの成長具合?」
「そうそう! ほら、人に紹介とか説明する時ってさ、その説明対象についての情報を充分に理解しておかないとダメなワケじゃん? そんな感じでさ、この異世界の案内役である私の知らない情報が無いかを確かめようと思ってね」
うーん……正直あんまり気乗りする話ではないんだけど……だが神様の言葉にも一理はあるな。
(確かに自分ではそれなりに理解していても、人に説明する時ってその対象の事をもっと詳しく知っておかないと出来ないもんだしな。ここは彼女を知る者としてキッチリと説明してやるか! 自分でもおさらいする感覚でな!)
―― ―― ―― ―― ―― ――
「――ってな成長具合で具体的には……」
「うんうん。詳しい説明を頼むよ、暁斗君」
まず一つ目の話題。
それは俺の職業能力、魔物使いとしての振り返りも兼ねた仲間モンスターについて説明した。
「それで神様がくれた仲間玉を食べて娘化した彼女についてなんだが、どうやら本人の意思で【モンスターの姿】か【娘状態の姿】になれるらしい。だからスラリーナの場合だとたまに球体になってくつろいでいる時があって――」
そう俺は神様に軽く紹介した。
二つの形態を自由に変えれる事。
そして衣服の状態も保存される事について。
「うんうん、やっぱり娘とモンスターの二つの形態を自在に操れるって事だね! 了解だよ!」
すると珍しく真面目に聞き、相槌打つ神様。
俺からしたらわりとマジで不思議な話なんだが……まあ間髪入れずにそのまま次の話に行くか。
「そんじゃ次は彼女の固有能力【吸収】についてだが、これもかなりシンプルで、倒した敵の一体を吸収。あとはそれを真似て攻撃とか防御に移ったりと色々利用できる。ってまあ……まだまだ成長するかもだが、今の所だと固有能力はこんな感じだ」
「うんうん、確かに分かりやすい。吸収って言う通りやっぱり敵の能力を真似る感じなんだね。いやあ本当にスラリーナちゃんは優秀だね! どっかのクソザコ暁斗君と違って……うぷぷっ!」
くっそぅ……あの髭もじゃクソ神様め。
マジで毎回俺を罵倒しねぇと死ぬのか!?
絶対この世界救い終わったら、俺がチェーンソー持って天界に殴り込むからなっ!
「へへへぇ、またまたあ……チェーンソー如きで私を真っ二つに出来ると思ってんの? この前だってまた借金取りに捕まった挙句、ギロチンにかけられても無傷だったのに……無理だよ無理!」
だから人の心読むなって!
あとそれ言ってて恥ずかしくないの!?
それにまた酷い目に遭ってたのか!?
「ハア……なんか俺が手を下す前に殺されてるような気がするんだけど、まあいいか。それじゃあラストはスラリーナの特技の説明なんだが――」
「あっ、次行く感じね。オッケー」
今はちゃんと説明を終わらせるとするか。
どうせ今更言った所で神様の悪癖は消えないし、これ以上のツッコミは無駄だろう。
「えっと、それで現在のアイツが使える特技は基礎的な回復呪文と解毒呪文。そして神様が言ってたすっごい技である全体攻撃技【灼熱炎】だな。にしてもマジで序盤からあのブレス技は反則過ぎるだろ……」
「あっはっはっは! でもそれこそが魔物使いの性質ってやつさ。普段は弱いモンスターでも仲間玉を食べて仲間になれば強い技を覚える。だから彼女の面倒はちゃんと見てあげるんだよ。でないともし裏切られでもしたらヤバいからね!」
ああ……マジでそれは言えてるな。
あんな可愛い女の子が光線みたいな灼熱の息を吐いて敵を一掃するんだから恐ろしいのなんのって。怒らせたら間違いなく火葬要らずだぜ。
「よし。これで今回の説明は終わりだね。ありがとう! じゃあ最後に神様からのささやかなお礼に特別に私のスリーサイズを公開――」
よし家に帰ろう。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次話からは新章開幕となります。




