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第21話 ああああ、追跡する


「それじゃあマスター、また行ってくるね!」

「ああ気を付けてな。日が暮れるまでには帰ってくるんだぞ。人間の世界も夜は危ないからな」

「うん、分かったの!」


「ああ、それから……知らないおじさんに声をかけられたり、お菓子あげるって言われても絶対に付いて行ったらダメだからな! それから――」


「もおっ、マスターってばいつもそうやって私を馬鹿にしてっ! 私だって立派な女の子なんだからそんなの引っかからないよ! じゃあ夕方前には帰ってくるからね! 行ってきまーす!」


「あっ……ああ」



 …………………………………………。


(うーん、やっぱり少し怪しい……のか?)



 ―― ―― ―― ―― ―― ――



 これはほんの昨日の出来事だった。


「うーん、ごめんね暁斗君。まだ次に君達が向かうべき目的地についての情報が一つも無くてさ。ほら見てよ、『間抜け 目的地』って検索しても該当ゼロでしょ? 全然見つからないんだよね」


「くそっ、アンタはこんな時でも人を煽らないと生きていけないのか! このクソ神様が!」


 俺とスラリーナが王様から家を貰った後日。

 次の目的地についてを神様に尋ねていた時だ。


「まあまあ、そうカッカッしなさんなって。少しカルシウム足りてないんじゃないの? まったくストレスは健康に良くないよ? 毒だよ、毒!」


「……そんじゃあ神様アンタ()()()()()()()()()()()()()って認識でオッケーか?」


 とまあ、慣れたくはないがいつもの調子。

 神様がストレス解消と言わんばかりにこちらを煽り散らすのに対して俺が全力でツッコむという、


「んもう、厳しいんだから。まあ次の目的地についてはちゃんと調べとくからさ。安心してよ」

「ホントか? 全く信用出来ないんだが……」


「んもお……心外だなあ。いくら君が《ああああ》なんて馬鹿な名前入力して異世界送りにしたとはいえ、私だって命名神として責任感じて職務を全うしているんだよ? 少しは感謝してよ!」


「お、おう……分かった。悪かったよ」


「うん、分かればよろしい。じゃあとりあえず、この漫画読み終えたら探すようにする――」


「今すぐやれ」


 そんな傍から見れば漫才かの如く、腹立たしい構図ながらも会話を進めていた時の事だった。


「うん? そういえばスラリーナちゃんは?」


 神様はこの場にスラリーナがいない事に違和感を覚えたのか、漫画を何処かへ放り投げると俺に向けてそう尋ねてきたんだった。そこで俺は、


「実は……かくかくしかじかで――」

「なるほど、とらとらうまうまって事ね」


「……すいません神様。ちゃんと話します」


「そうだね。いきなり『かくかくしかじか』って言われても訳分かんないもんね。はい、どうぞ」

「ああ、その……実は――」


 神様にその理由を簡単に説明した。

 この家を貰った次の日からスラリーナが毎日俺に外出の許可を求めてきたという事。

 そして俺も普通に許可していた事を告げたんだった。


「……ってな訳で今ここにはいないんだ。別に家に縛っておく理由も無いし。マスターとしては彼女の望みもちゃんと聞くべきだと思ってさ」


 そう俺が思う主としての在り方を伝える。

 だが、それを聞いた神様の反応は……。


「うーん、それは怪しいねぇ……」

「へっ? 怪しい? どこが?」

「なぁんか……臭うんだよねぇ」


「臭うって? 神様がオッサン臭いって事か? 大丈夫だってそんなの世界中が知ってるから。多分、教科書で習うくらいに有名な話だろうよ」


「なっ!? ちち……違うわっ! そういう臭いじゃないのっ! ほらアレだよ! 彼女を狙ってる男の匂いがプンプンするって言ってんの!」


「はあ? あのスラリーナが? あっはっはっは! いやいや、そんな事は流石にあり得ないでしょ! そりゃあアイツは優しい奴だが、そんな不純そうな野郎の所に行くなんかあるわけ――」


 俺はその神様の話に思わず吹き出した。

 実に馬鹿げた冗談だなと一蹴したんだ。


 だが……そんな俺の態度とは裏腹に、


「いやいや、分かんないよ? スライムとはいえ彼女は純粋な女の子だ。それにモンスター娘状態だと誰もが振り向く美少女だし……おっぱいも大きいし、その辺の男が見逃す訳無いでしょ?」


 神様はそう続けて発してくる。


「ははは…………ま、まっさかぁ」


「暁斗君。純粋な白って色はね……他色に染まりやすいんだよ? 別に分かりやすい悪意の黒だけじゃない。ちょっとしたきっかけで今の彼女はどんな色にも染められるんだよ? 意味分かる?」


「はは、そんなまさかぁ……あははは」


「確かにスラリーナちゃんは良い子だ。正直、天界から君達の様子を見ていても嫉妬しちゃう程に優しい子だ。君もそれは知ってるでしょ?」


「ま……まあな。でも、だからって――」


「だからだよ。主である君に極力迷惑はかけまいと、外に出かける振りをして一人でこっそりと何かしているんじゃないかなぁ……なあんて」


「…………………………………………」


 それで……この瞬間だったんだ。

 あくまでこのクソ命名神が垂れ流した根も葉もない話だというのを承知で、ここ毎日の連続した彼女の外出について気掛かりになったのは――



 ―― ―― ―― ―― ―― ――



 ……よって。


「スラリーナ……行った……かな?」


 別にストーカーというわけでは無い。

 あくまでこれは彼女に危険が及ばぬように見守る為、彼女のマスターとしての義務なんだ。


(そうだ……決して彼女を疑ったり、あの縦セーターの上からでも分かるセクシーなお尻を追いたいとかいう不純な動機で追うわけじゃないっ!)


「ふっふっふ。それじゃ作戦決行……だね?」


「あ、ああ……見失う前に俺達も出発するぞ」


「はいよ、そんじゃあ彼女の追跡開始だ。うーん、何かワクワクしてきた! この神人生で一度でいいからこういう尾行やってみたかったんだ!」


「おいおい……頼むからあんまり騒がないでくれよ。もしこんな仲間の行動を探る様な真似がスラリーナにばれたら、ただじゃ済まないからな」


「はいはい。静かにしときますってば」


(ったく、大丈夫かよ……だがマジにごめんなスラリーナ。これもお前の為なんだ。俺とこのバカ神様の勘違いで済む事を一番に祈ってるぜ……)


 こうして俺はこの神様の分身である小型人形。

 その名も『小型命名神ミニマリオンちゃん』を肩に乗せ、スラリーナの跡を追う事にした。


 彼女に変な虫が付いていない事を祈って……。


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