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第2話 ああああ、正直に答える


 ……いきなりだが俺は王様の前にいた。


「うむ……では異世界より現れし新たなる勇気ある冒険者よ。まずは其方の名を聞こうか?」


 そしてその王様は一度王冠を軽く被り直すと、眼前にいる俺へそう尋ねてきた。

 対して俺は彼の問いにこう素直に答えた。


「はい。私は《赤羽(あかばね) 暁斗(あきと)》と言う冒険者です。以後お見知りおきを……王様」


 失礼は無かっただろうか?

 無礼な発言は交じってなかったか?

 そんな幾つか不安がよぎりつつも俺は側近たちに見守れる中で、玉座に鎮座する王様へ向けた。



「ふむ、なるほど。其方は《()()()()》と申すのか。むぅ……少し変わった名前だな」



 だが案の定、こんな返答が帰ってきた。

 くそう! やっぱりこういう事になってんのか。

 やっぱり本当の俺の名前は()()の言う通り、


「ごほん! いやこれは失敬した。人の名を愚弄する事は例え王とて許されんのでな。すまぬ、我は恐らく其方にとって余計な事を申したな……」


 しかも気を遣われちゃったよ!?

 怖いよ!? 側近の目がスゲェ怖いよ!?

 あれ絶対、なに新参の冒険者如きが我らの偉大な王に頭を下げさせてんだって顔してるよっ!


「ふむ、では我が国の新たなる冒険者ああああよ。早速次の質問に移るが、問題はないかの?」

「はい……お願い致します」


 とまあ、未だ向けられる側近の殺気含む視線を感じつつも一度ここで話を整理してみよう。

 どうして、さっきまでクソゲーをプレイしてた俺がこの異世界に送られた挙句に()()()()になっているのかというと……記憶は数時間前に(さかのぼ)る。



 ―― ―― ―― ―― ―― ――



 (さかのぼ)るはクソゲーで名前入力を終えた直後。

 気絶から目を覚ました俺は……なんと雲上。

 そう、世にも不思議な雲の上にいた。


「んもう! 君には常識ってもんが無いの?」


 それで眼前には()()がいた。


「本当に……君みたいな名前に対して責任感の無い人間の屑が子供に【流布伊(ルフィ)】とか【りあむ】みたいなキラキラネームつけたりすんだよ!? 子供の気持ちも知らずに……ホントに馬鹿な人間は名前を何だと思ってんの!?」


 あと覚醒早々何かボロクソに超怒られていた。

 しかもかなり一方的な理不尽な怒られ方だ。

 流石に初対面相手に人間の屑はないだろ……。


「えっと……」


「ああ、紹介が遅れたね。私は世界中の名前を統括する【命名神マリオン】という神さ。まあ簡単に言えば、ふざけた名前を付けた奴に鉄槌を下す存在だと思ってくれれば良いかな」


 命名神マリオン。

 それが出会い頭から俺へ容赦なく精神に来そうな罵詈雑言を浴びせてきた神様の名前だった。


「全くもう……ブツブツ……」


 彼の風貌を一言で言うなら()()()()()()()

 その長い髪、サンタの様にふさふさと蓄えた立派なひげ、他にも身に纏う法衣まで全部白いとある意味おじぃちゃんとも呼べる神様だった。


「それで……どうして俺は神様の前に――」


 さて、ではまずは本題だ。

 なんでさっきまでゲームをしていた俺がこんな【あの世】みたいな場所にいるのか、肝心なそこを教えてほしい。今座っている雲の確かな感触的にも夢オチって感じでもなさそうだし。



「どうして俺は神様の前にいるんですか?」



 しっかりと聞かせてもらおうかな?

 ゲームで培った知識と、クソゲーを嗅ぎつける嗅覚くらいしか取り柄の無い俺がなんでいきなり命名神様の前に召喚される事になったのか――



「ああ、それはね。()()()()()()があまりにもふざけていたからに決まってんじゃん!」



 …………へっ?



「幾らゲームのキャラクターだって言ってもさ、そいつだって世界を救っていう役割ロールを担わされている訳なんだよ? それを《()()()()》って名付けるって……マジで信じら――」


 俺の予想の遥かな斜めをいっちゃった。

 えっ……なに名前? たったそれだけ!?

 そんな誰でも一度はやりそうな事で俺は――


「だからね。君には名前を軽んじた厳罰として、元々その主人公が背負う筈だった名前ああああを背負って異世界で生きてってもらうからね!」


 はあっ!? おい……ちょっと待って!?

 コイツは何言ってんだ!? 異世界!?

 そんなの小説とかアニメとかのフィクションの中だけだろ!? なんで俺がそんな所――



「ああ、ちなみに()()()()()()()()()()()()()()()! だから君がいくらこれからの異世界生活で自分が赤羽(あかばね) 暁斗(あきと)だって泣き喚いても、皆には《ああああ》にしか聞こえないから!」


 どこの千尋のおばあちゃん!?

 ちょっ、なに許可無く人の名前奪って――


「ほんじゃ、そう言う事で! 詳しい話は後で連絡(ナビ)するから! とりあえず異世界(あっち)着いたらステータス確認した後に王様に会ってね!」


「えっ、ちょっと!? 待って! まだ――」


「それじゃあ最後に神様らしい一言。ゴホン! 己の名前を取り戻したくば……異世界を救い再び我の元へ来るがよい! それが貴様の宿命だ!」


「それ絶対悪役(ラスボス)のセリフゥゥゥゥゥゥ!!!」


 ……という訳で反論も述べる暇なく俺は転移。

 俺の名前を勝手に奪いやがった最終敵(ラスボス)と言っても過言ではない神様の為すまま、異世界へ送られる羽目になったんだった……。



 ―― ―― ―― ―― ―― ――



「ふむふむ……なるほどなるほど」


 そうして……現在。

 最早100%近く理不尽ながらも、自分のふざけた名前入力のせいで神様ラスボスに名前を奪われた俺は、


「《ああああ》は二ホンという異世界からこちらへ召喚されたいうわけか。それも『げえむ』という作品に挑戦していた最中に……ふむ、其方にもそちなり色々込み合った事情があるのだな」


 あの《赤羽(あかばね) 暁斗(あきと)》と言う自分でも思い入れのあった名前から《ああああ》へ改名され、この異世界へと送られたんだ……。

 名は体を表すって言うけど本当に自分が自分じゃない様な気分がするぜ、クソッタレ!


「では……最後の質問に移ろうかの?」


「あっ、はい。分かりました王様」


 そうして……気が付けば話は終盤へ。

 話し相手が余裕ある物腰の柔らかい王様だった甲斐もあって、緊張は少しあったが雰囲気的にも実に話しやすく、ついに最後の質問へと突入した。


(まったく、終始強引で上から目線な話し方だったあの神様とはえらい違いだぜ)


「それではお主の職業能力を……。まあ異世界に来たてでまだ不慣れかもしれんが、そちの持つステータスに記されているについて尋ねよう」


 うん? 職業能力? ステータスにある?

 あっ、ああ……多分さっき調べたやつか。

 この視界左上の【+マーク】を押して……。


「えっと、もう一度確認してみたんですが……多分この自分の名前の下にある称号みたいな――」


「うむ、そうじゃ! それこそ其方が生涯を共にする『職業能力(ユニークジョブ)』じゃ! そこで……それがもし現在我が国に不足している『戦士』か『魔法使い』であれば、すぐにでも補助金を出そうと思っていたのだが……どうかのう?」



 瞬間、王様の期待する視線を感じる。

 けれども……残念ながら、


(補助金は戦士か魔法使いだけか、くそう)


 俺の職業能力はその()()()()()()()()()

 けれどもここで嘘をついても何の得にもならないし、下手すれば王様への冒涜とかで処刑されてしまうかもしれん……ここはやはり正直に、


「すいません、その俺の職業は――」


 まああの愚神ラスボスと違って、この王様はこんな《ああああ》という名前を笑わないでくれたんだ。だから俺もここは誠実に嘘偽りないよう、



「実は()()使()()なんです」



 そう正直に答えたんだった。


 すると?


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