第17話 ああああ、敵陣に殴り込む
「「「ダークマジシャン様！ 戻りました！」」」
「おおオ。どうジャ、首尾の方は。ワシの命令通りに全員に戦闘態勢に入るよう伝えたか？」
「はい！ それはもうバッチリ！」
「全員すぐにでも戦える準備になってます！」
「いつでもコテンパンにして追い返せます！」
「よしよし！ よくやったぞお前達！ きっと将来は立派な悪魔族になること請け合いジャ！ このワシが保証してやろうではないか！」
「「「はい！ ありがとうございます！」」」
「それで……敵の数は？」
「はい、さっき塔確認したところ二人です！」
「まず片方はガーゴイル先輩の報告であった通り、件の魔物使いと思しき男が一人。それから――」
「それからすっごい可愛い女の子がいました！」
「……なぬっ！？ 女の子ジャと！？」
「あっ、やっぱりそこ食い付くんですね」
「流石スケベなダークマジシャン様だ！」
「良い歳なのに全然衰えませんねっ！」
「当り前ジャ！ それでどんな娘だったんジャ？ 蛇娘種か？ 鳥娘種か？ それとも……まさか夢魔娘！？」
「い、いや……それが初めて見るタイプで」
「なんかスライムっぽいんですが……」
「とにかく今まで見た事ない感じでした！」
「そうか……まあ構わんゾ！ おい、お前達今すぐその魔物使いと我々の同士が戦っている階に向かって命令するのジャ！ 命令の内容は――」
「女の子を生け捕りにでしょ？」
「もう既に言ってありますよ！」
「マジシャン様の言う事はお見通しです！」
「ケッハッハッハ！ なんと、これは一本取られたワイ！ ならば良かろう！ 後はのんびり待つだけじゃ！ どちらにせよワシの軍団は早々易々と敗れはせん。ましてやたった二人など！」
「はい！ そうですとも！」
「人間に思いしらせてやりましょう！」
「きっと今頃は尻尾巻いて逃げてますよ！」
「ケッハッハッハ！ そうだろうそうだろう！ 最早ワシが確認に行くまでもあるまいて。それにもしもの時はワシが相手になるだけジャ！」
「でもぉ……そうはならないんですよね？」
「だって今頃魔物使いはサンドバック！」
「それで可愛い女の子は無事にゲット！」
「ケッハッハ！ ケッハッハッハ！ そうジャ！ 人間如きがこの階にやって来るなど不可能！ 我々にとって脅威の魔物使いか何か知らんが所詮は伝説！ 数の暴力に勝てるわけがな――」
ギイイイィィィィ！ バタンッ！
「「「「うん？」」」」
「だっ！ ダダッ、ダークマジシャン様！」
「うわっ！？ ビックリした」
「ただの扉の音だろ？ それより今の声は……」
「見張りをしていたガーゴイル先輩だね」
「ほれ見ろ、そうこう言ってる間に勝利報告ジャ。ご苦労だったなガーゴイルよ。まあ正直分かりきっていて聞くまでもないが……やったか？」
「いいい……いいえ！ じじじじ実は――」
「「「へっ？」」」
「お、おい。ガーゴイルよ……一体どうしたんジャ？ そんなに取り乱すなどお前らしく――」
ギイイイィィィィ！ バタンッ！
「おっ、スラリーナ。着いたみたいぞ」
「ほんと？ ふにゅう、少し疲れちゃったの」
「そうか。じゃあさっき宝箱で見つけたこのキラキラキャンディーを食べていいぞ。調べた感じだと甘くてやる気が出るらしいからな。はいよ」
「わーい、ありがとうなのマスター！」
「ヒィィィィィ！ き……ききき来たああ！」
「「「へっ！？ あっ……あれは！？」」」
「ま……まさか！？」
―― ―― ―― ―― ―― ――
魔術師の塔。最上階にある大扉を越えた先。
如何にもボス戦にはもってこいのこの大広間にて【そいつ】は驚いた顔をしながら控えていた。
「な……ガーゴイルよ。これは一体……」
「へへ、お待たせ。じゃあいきなりだがお前がこの辺の村々を脅して宝石を奪っている《ダークマジシャン》ってモンスターだな？ 探したぜ？」
ったく……にしても本当に長い道のりだった。
あっち行ってもこっち行っても敵とは遭遇するし、神様の言っていた通り数もそれなりに多かった。ありがとうとかの謝辞は死んでも言いたくないがアドバイスには感謝だな。
「ひ……ひぃぃぃぃ！ すいません、ダークマジシャン様！ 退職金は結構ですから今すぐ故郷へ帰らせていただきますぅぅ！ それではっ！」
「あっ、おいっ！ 貴様、何処に！？」
「「「ガ、ガーゴイル先輩！？」」」
「いやあ！ 私逃げますぅぅ！ うわーん、故郷のおっかさん、俺に子守歌を歌ってくれぇ！」
ほお、あの悪魔鳥が有名なガーゴイルか。
戦況を見て退散とはお利口なモンスターだな。
まあ開幕からスラリーナのあんなものを見せられたら誰でも尻尾巻いて逃げたくもなるか。
「マスター、あれ見逃していいの？」
「ああ、別にこちらに怯えて逃げたんなら放置だ。それに今俺達が優先して倒すべきなのは――」
「な……何故ジャ」
「うん？」
「何故！？ この五階に来るまでの区間。少なくとも100以上は待機させていた筈のワシの部下達の猛攻を退けたのジャ！？ どんな兵士でもここまで来れんかったのにっ！ なぜ貴様のような小童があっさりとこの場所へ！？」
「「「あわわわわ……ヤベェよヤベェよ」」」
ああ……なんだそんな事か。
別に今頃聞いたところでお前にはどうにもならないと思うけどな……まあ軽く答えてやるか。
「それはこの俺の相棒スラリーナが襲ってきたお前の部下をぜーんぶ蹴散らしたからに決まってんだろ？ じゃなきゃ俺は教会送りになってるさ」
「んナっ！？」
「そんじゃあ、早速始めようか？」
「覚悟するの！ ダークマジシャン！」
この魔物使いとしての初めの大仕事。
魔王配下の魔物の討伐をよっ
