第16話 ああああ、突撃前に尋ねる
「ダークマジシャン様! お待たせしました!」
「宝石回収係、ただいま帰還致しました!」
「今回はこの袋にある宝石が収穫であります!」
「おおオ……ご苦労であっタナ。どれどれ……ほほお……うむうむ今回も質の高い宝石が多いのウ! やはり活動範囲を広めて正解であったナ」
「「「はい!」」」
「ふむぅ……これと今まで愚かな人間どもから奪っただけ分があれば……グヒヒ。ようやくワシの抱いていた念願の夢が叶えらレル。それに……」
「「「それに?」」」
「この宝石の余り部分を使って……行くか?」
「行くって……まっ、まさか!」
「まさか、あそこに行くんですか!」
「あの僕達のパラダイスにっ!?」
「そうジャ! 我々が大好きでセクシーな蛇女ちゃん達がいっぱい見れる、眼福間違いなしのあの高級店へ繰り出そうじゃないカ!」
「「「うおおおっ!! ダークマジシャン様!」」」
「どうだ? 嬉しいカ? 嬉しいカ?」
「「「はい! もう最高であります!」」」
「よーしよしよしよし! しかしお前達も好きよのウ。そんなにラミアちゃん達のあの美しい体を拝みたいとは……スケベよのウ」
「いやいやマジシャン様も大概じゃないですか」
「そうです、可愛い女の子には弱いんですから」
「あんまり羽目を外し過ぎないでくださいよ」
「ケッハッハッハ! 大丈夫ジャ、安心せイ! このダークマジシャン。腐っても魔王様の力を授かった魔物じゃ! だからそんな心配は――」
「ダークマジシャン様! ダークマジシャン様!」
「むっ? お前は見張りのガーゴイルか。どうした慌てた様子で。また人間が攻めてきたのカ?」
「い……いえ、そうではなくて。その、未だ私めも目を疑ってはいるのですが……実は先程マジシャン様が宝石を取り立てている村々の近辺を空から巡回しておりましたら…………ヒソヒソ」
「なっ!? なんジャと!?」
―― ―― ―― ―― ―― ――
魔術師の塔へ向かう道中。
俺はちょっとしたモンスター図鑑を作っていた。
「えっと……」
蜂型モンスター……『イエロービー』
液状モンスター……『ヌマヌーマン』
蟻型モンスター……『ジャンボアント』
妖蝶モンスター……『グリーンモス』
「それでさっきスラリーナが倒した敵の名前表示が確か『フォレストゴブリン』っと」
しかし凄いモンスターの種類だな。
さっきから書いても書いても間に合わねぇ。
まあ、ぶっちゃけこれはこれでゲームの【やり込み要素】みたいでそれなりに楽しいんだけどな。
「マスター何してるの? お絵かき?」
「これか? これは俺流のモンスター図鑑だな。まあ絵はそこまで上手くないんだけど、一応自分でも分かるように技や特徴を書いてるんだ。あの博士とは違って分かりやすいようにな!」
「へぇ! 私にも読ませて!」
「ぶおっ! ス、スラリーナさん!? 別に抱きつかなくてもいいんじゃないですかねぇ!?」
「えへへ!」
うわあ、やべぇ可愛い。ずっとこのままでも良いかも……。
プニュリと背中の辺りに大きくて柔らかい感触があるし、非リア充だった俺からすればこんなに可愛い女の子が傍に……って何考えてんだ俺は!
「えっと? グリーンモス……大きな蝶型のモンスターで傷を負うと地面に口吻を刺して、大地のエネルギーを吸って回復する。弱点としては毒攻撃に弱く大ダメージが期待でき……る?」
ああ、それか。
「それはさっきお前が取り込んだ毒ガエル『ポイズントード』の毒で攻撃しただろ? その時に効果大だったから書いてみたんだ。何か弱点でも見つけれらたらこれからの戦いも楽になるだろうし」
「へぇ、中々面白い情報なの! マスターもマスターで色々頑張ってくれてたんだね!」
ははは、せめてこれくらいはさせてくれ。
自分が戦えない分、敵の情報を知り次の戦いに生かしたり技を覚えたりして少しでもお前がモンスターと戦いやすいように…………うん?
「ふんふんふん♪ ふんふんふん♪」
「そ、そういえばさ……スラリーナ?」
「うにゅ? どうしたのマスター」
そうだ、まだ聞き忘れていた事があった。
今頃になって変な質問だが聞いておきたい。
「その……今更なんだが。お前はモンスターを攻撃する事に抵抗とかないのか? いや、別にこれは責めてるわけじゃなくて……この先も同族との戦いになるだろうし。主としてお前の気持ちを知っておかねばと思ってさ」
正直戦ってくれないとこの先マジで厳しいが、ここは彼女のマスターとして秘めている気持ちや気苦労について理解しておかないとな。
「うにゅう、その事かあ……えっとね」
「正直に言ってくれていい。それに俺は代わりに戦ってもらっている身だからな。お前の想ってる複雑な気持ちをきちんと知っておきたいんだ」
「うーん…………」
ふむ、やはり少し酷な質問だったかな。
スラリーナは一旦図鑑を俺の手元に戻すと頬に手を当ててそのまま深く考え込んでしまった。
「うーにゅ、どう答えようか凄く悩むの」
(無理も無いか……いきなり変な事を聞いちまったからな。くそ、なんで急に俺こんなの聞いたんだ。答えにくい事くらいは分かってたろうに)
「悪い……スラリーナ。この質問は無か――」
「えっとね。確かに最初はマスターの言う通り少し抵抗はあったよ。でも彼らも彼らで私達を倒そうとして襲ってくるんだもん。だから私達も倒されちゃうくらいなら戦う……が正しいかな? それに私はマスターの為に戦うって決めたしね!」
!?
「す、スラリーナ……」
「えへへ! だからマスターは気負いする事なんて無いの! マスターに牙を剥く悪いモンスターは全部私が倒しちゃうんだから! 任せてね!」
そうか……ありがとうなスラリーナ。
お前も覚悟をもって戦ってくれていたんだな。
ったく……本当に俺は幸せなマスターだな!
「あっ、マスターってば嬉しそうなの!」
「へへへっ! いやー、流石にそこまで言われたら主として嬉しいに決まってんじゃねぇか! ほらほら、これはご褒美だっ!」
「わーい! マスターのなでなでだ!」
ああっ、もう! マジで可愛いなお前は!
どこまで俺をキュンキュンさせれば気が済むんだよ! もう俺……今にもモンスター娘以外の女性に興味持てなくなりそうだぜ、ちくしょう!
(よし! ならばこれ以上は何も聞くまい!)
「おっしゃ! じゃあそろそろ行くか魔術師の塔! 村でもしっかり休んだし、ここまで来たんなら敵は目と鼻の先だ! 気合い入れるぞぉ!」
「おーっ!」
いよっしゃあ! そんじゃ一気に行くぜ!
また強くなったうちのスラリーナの実力ぅ!
塔のモンスターどもに味合わせてやんぜっ!




