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第12話 ああああ、励まされる

冒頭は前話の最後からみたいな感じです。


「オッケー。じゃあもうハッキリ言うね! 暁斗君! 魔物使いの君はこれからの冒険でどれだけ頑張っても()()()()()()()()()()()()んだ!」


「…………はい?」


「あとは一応服とかはいいんだけど()()()()()()。例えるなら普通の剣とか槍、盾や鎧とかは()()()()()()()()()()んだよね! だからもし無理に装備しようとしたら激痛が走るってわけ!」



 …………………………へぇっ?



 ―― ―― ―― ―― ―― ――



 瞬間、俺の体から何か抜け落ちた。

 こう……なんて言うか芯みたいなものが。

 驚きや困惑を通り越して力が抜けたんだ。


「な、なんで……どうして?」


「ん? どうしたんだい? 私は別にそこまで驚かれる事言ったつもりは無いんだけど……」


 いやいや、意味が全然分からないんだが?

 何を馬鹿な事を言ってんだよ? なあ神様?

 もしもそんな馬鹿な事が本当なら、俺は――


「それじゃ俺、()()()()じゃないか」


「んんっ? もしかして暁斗君は自分もスラリーナちゃんみたいにドンドン強くなって、よもや創作物みたいに無双出来るとでも思ってたの?」


「い、いや……別にそこまでは。で、でもさ」


 流石に俺だってそこまで欲張りじゃない。

 でも正直少しくらいは戦えると思っていた。

 いや戦えるようになる筈だと信じてた。


(それを……こんな)


「うーん、まあ落ち込む理由は大体察しがつくけど。でもよく考えてもみてよ。魔物使いである本人が強かったら、ぶっちゃけ意味無くね?」


「はあ? 意味が無いだって?」


 神様、アンタは本当に何を言って――


「ほら、魔物使いの本質って()()()()()()()()()()()()()事じゃん? だから育成ゲームとかでも仲間全滅してもトレーナー本人は戦わないでしょ? 要はそれと同じ。そもそも本体マスターが強いんならテメェで戦えよって話になるし」


「そ、それは――」


「だから要するに、君はこれからずっとスライムにすら勝てないまま。だからこれからの魔物との戦闘面においては常に君が最弱。一撃でもまともに攻撃を食らえば即気絶、教会行きってわけ」


「んな……無茶苦茶な」


 おいおい、嘘だろ?

 いくらなんでもそれって。


「んな馬鹿な事があって――」


「そんじゃ私はこれから神友しんゆうのアポロンとゴルフに行ってくるから! 何かあったら大声で呼んでね! それじゃバイバーイ!」


「…………………………………………」


 …………………………。

 ……………………。


「マ、マスター?」


 神様の煽りにもう言い返せなかった。

 それどころか完全にやる気が消えちまった。


「マスター、マスター」


 ダメだ、力も入らねぇ。だが仕方ないよな?

 神様がああ言ったんだ、どうしようもねぇよ。

 ははは、改善できない己の弱さを突きつけられた人間ってのはこんな気分になるんだな……。


「マスター! マスター!」


 ああ……ダメだ。自分でもわかる。

 もう誰かの声にすら反応する気力も無い。

 顔が濡れたパンのヒーローみたいだ。


「マスター! しっかりして!」


 悪いなスラリーナ。俺はここまでだ。

 もうなんか自分が情けなくなったよ。

 いっそ、このまま永遠に放置して――



 パシンッ!



「ぶおっ!? ……えっ?」

「ハア……ハア……」


 一発。俺は頬に鋭い痛みを覚えた。

 それも目覚ましの如く脳に直接刺激が伝わりそうな殴られた方へ顔が向くキツイ一発を、


「……いい加減にするの」


「す、スラリーナ?」


「マスターの馬鹿! 私はマスターが弱い事なんか気にしないの! 例えマスター自身がどんなに弱くたって、マスターは私のマスターなの! だって私はマスターのそういう強さじゃなくて、その優しい所に惹かれたんだからっ!」


 ……呆れている様子など微塵も無かった。

 ただ彼女は励ましてくれた。こんな弱い俺を。

 こんなに惨めで情けない最弱なマスターの俺を、


「だから立つの! 立って私と一緒に冒険するの! 危険な戦いは私に任せていいから! マスターはただ命令してくれるだけで大丈夫なの! だって攻撃をするだけが戦いじゃないもん!」


 そのモンスター娘の状態のまま。

 彼女は落ち込んだ俺を応援してくれたんだ。

 初めて見せるその本気で怒った表情で――


「だから今は自分に出来る事に必死になるの! 別に弱さは負けじゃない! 無駄に弱さに固執して自分の強みを生かせない奴が一番弱いのっ!」


「!?」


 瞬間。

 なんというか……こうビビッ! と来た。

 それと同時にハッともさせられた。


(自分の強みを生かせない奴が最弱……そうか)


 背筋へ強い電流が走った感じみてぇだ。

 そして、それと同時に確かな感触もあった。

 先まで失せていた気力が戻りつつあったんだ。


(そうだ彼女の言う通りだ。俺は……)


「だから……ね? マスター、私」


 そうだ、今の俺は一人じゃないんだ!

 ならば自分で戦えないなら戦えないらしく。

 俺は俺なりに魔物使いらしく仲間スラリーナの強さを信じて、勝つ為の的確な命令や指示を下すしかないんだっ!


 だったらここで俺が返すセリフは一つ!


「ありがとうスラリーナ。目が覚めたよ」


 泣きそうな彼女を安心させるのみだ。


「良かった……少し不安になったの」

「大丈夫だ。お前のキツいビンタとお説教のおかげで俺に出来る事が分かった。ありがとう!」

「えへへ、ちょっと照れくさいの」


 ああぁ、やばい、すんげぇ可愛い。

 頬を染めて、液状の髪を触る仕草が尊すぎる。

 女子じゃなかったら確実に飛びついてるな!


(むしろ女の子だからこそ飛びつきたい!)


 そうだ。ゲームと似ててもこれは現実だ!

 だからやり直し(リセット)出来ない以上は前を向いて現状を受け入れるしかないよなっ!


(そ、それに)


「うにゅ? マスターどうしたの?」

「……い、いや、なんでもない!」

「むう、女の子をじっと見つめるのはダメ!」

「はいはい、分かったからポカポカ殴らない!」


 それに幸運な事に俺には既にこんな優しくて可愛すぎる心強い仲間(スラリーナ)がいるんだ!

 だから彼女の強くなりたいって夢の為、俺は自分の名前を取り戻す為にも頑張らなくっちゃな!


「よおし、ありがとうなスラリーナ! マジに元気出たぜ。じゃあひとまず気晴らしに飯でも食うか! 腹いっぱいになって幸せになるぞ!」


「わーい! さんせーい!」


 よおしっ! そうと決まれば飯屋探しだ!

 異世界の旨い料理食って前向きになるぞっ!


ここまで読んでくださりありがとうございます。

もし読んでいて少しでもヒロインが可愛いと思っていただけたのであれば幸いです。

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