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ダンジョン内部

どうぞ


 エルメスト帝国が誇るダンジョン、その名は神の迷える迷宮。

名前の由来は第一階層にある巨大な石碑に古代文字で書いてあるからだ。ただ、今現在では古代文字の存在自体が消滅しており、解読が不可能だったのだが、帝国の書物に記されてあったそうだ。


 この神の迷える迷宮の内部は二百階層と言われおり、実のところ人類は百層すら到達してないそうだ。その最高到達層が七十五層だそうだ。

 異世界ダンジョンあるあるで、三十階層ごとに周りの外観がかわるそうだ。俺たちがいるこの一階層は洞窟の様になっており実に興味がそそられる。辺りはファンタジーの謎で真っ暗になっておらず、少し光が存在し、薄暗くなっている。それでも目を凝らしていないと魔物が余り見えない状態であることには違いないが。


 三十一階層からはどこぞの神殿の様になっており、六十一階からは地下迷宮になっている。

また、魔物も段々と凶悪になり、五階層ごとに階層主と呼ばれる他とは卓越した魔物が存在するそうだ。一度倒せば終わりではなく、これまたファンタジー世界の謎仕様で一定時間でリポップする。

 なんとも厄介なダンジョンとなっている。


 そんなダンジョンだが低階層はあまり危険ではなく俺たちの勇者なら大丈夫だそうだ。

俺の場合だけ苦笑いされ厳しいとは思うが頑張れとザウス騎士団長に言われた。だが、俺にはその顔が悪巧みをしているように歪んで見えた。


 騎士団に守られ、お使い気分でダンジョンを楽しむ勇者達。急に強大な力を手にいれ、まるで新しい玩具を貰った子供かのように奮う。無理もない、これまで普通の特別扱いを受けたことのないただの高校生が厚待遇で扱われたのだ。それに帝国の貴族が言葉巧みに持て囃したために増長してしまった。


 勇者達がわいわいと進んでいると蜥蜴のような生物が体をくねらせながら出てきた。だが、その姿は蜥蜴とは比べ物にならない程大きくそして気持ちの悪い形をしている。顔と思われるものは少し潰れており2つの大きな目が半分を占めている。


「お前たち、これから初めての戦闘だ。訓練通り落ち着いて行動せよ!」


 ザウス騎士団長にそう言われざわざわとしていた生徒が落ち着きを取り戻す。

ただ、気持ち悪さが我慢ならないのか天舞音や綾香、紫乃も頬を引き攣り顔を歪めている。


 何を思ったのか知らないが、か弱い女の子を守るように戦闘に立つバカ三人組。

言うまでもないと思うが翔輝、英斗、龍二の三人だ。


「天舞音達を傷付ける奴は許さない!」


 声を高らかに上げ真正面から飛びかかる翔輝。だが、そこはさすが勇者スペック。ダッと駆け出すと蜥蜴もどきは認知出来なかったらしく、一瞬で蜥蜴もどきの側に移動し剣に炎のような輝くものを纏わせ振り下ろし一刀両断。生理的嫌悪を掻き立てる音を上げながら、黒緑色の血液のような体液撒き散らし、2つに体が別れる蜥蜴もどき。


 その姿を見た女子生徒達は顔を真っ青にさせ体を震わせる。男子生徒も例外ではなかった。

だがその事を全く理解していない残念な三人は勇姿を見せたと勘違いし、ドヤ顔で振り向く。

もっとも訓練の成果を全く無視するようなスペックにものを言わせた戦いに頭を抱える騎士団達もいたが。

 最初でこの調子だっため困難を極めると思われた今日のダンジョン攻略だったが、少しずつ覚悟を決めたのか多少の事では折れなくなり、その後は順調に騎士団の指示通り攻略して行った。他の生徒達もスペックはこの世界では上位に当たるため、俺以外は大丈夫そうだった。そして予定より早く十階層に到達できた。


 俺はスペックが一般人に近いためあまり直接的な戦闘には参加させて貰えていない。

夢にまで見た異世界で無双して活躍出来ないことに不満なんてありはしない。ないったらないのだ!

俺の戦闘方法は本当に地味で、騎士団のおこぼれの魔物を後ろから首もと辺りを一突きしているだけだ。

 これはゲームで言う寄生プレイというやつなので情けない気もするがしょうがないので諦めるしかない。


 五階層ではナメクジのような生物が階層主だった。エンカウントしたとたんに、その粘液まみれの生理的嫌悪な存在が目に映りクラスの皆は悲鳴を上げ速攻で魔法を撃ったのである。

 実に呆気なかったと思う。かの勇者スペックの皆が成長途中とはいえ全力で魔法を放ったのだ。洞窟の壁を抉り、多種の属性魔法のよりナメクジの魔物は原型すらも留めず、大きな穴の空いた惨状がそこにはあった。


 特に勇者である翔輝の『聖攻斬』という技が一番強大だった。一度打てばクールタイムを要するが圧倒的な破壊力を持つ攻撃だ。いかにも勇者っぽい光のエフェクトが剣の周り漂い、一直線にナメクジの 魔物に向かって、地面を抉り取りながら飛ぶレーザーのような斬撃が衝突した。 

完全にオーバーキルな攻撃を放ったあと、攻撃の衝突で見えなくなったナメクジの魔物が姿を形すら残らず、完全に消滅した事にに安堵する勇者の集団はとてもシュールであったという。


 十階層。ここではゴブリンが階層主だった。地球のゲームで出てくる定番の最弱キャラといえばスライムとゴブリンだと思うが、この世界ではゴブリンは中級レベルの敵となっている。スライムに至っては強敵と認定されている。ゴブリンの場合、人型のそしてある程度の知能を有しているからである。それに知恵もあり武器を使い連携をしてくるからだ。


 スライムは別格だ。まだ実際に見たことはないが、聞いた話によると体長は最低でも3メートルあり、明確な弱点もない。あの世界では核が弱点という事になっているが核なんてものは存在しない。半端な攻撃は効かず攻略方法はひたすら火力のごり押しだそうだ。


 さて、階層主はゴブリンだったが問題が発生した。今まで出現してきたのは動物などに見た目が近いため殺すことにあまり禁忌感を抱かなかった。だが、今回は完全に人型である。平和というぬるま湯にこれまで浸かってきた生徒達には幾らか荷が重い。


 俺自身は戦闘に参加出来ないため後衛で見ているだけなので被害は及ばないが前衛や、他の戦闘する生徒達は違う。人型のゴブリンを殺すことに躊躇い怪我を負う生徒も現れ始めた。

本来能力的には余裕だが勇者たちの本来の性能が発揮できなかった。


 それに流石の三バカ達にも堪えたらしいく、三大女神と呼ばれいる天舞音、綾香、紫乃に至っては口元を抑え震えていた。

そんな状況を見兼ねて、騎士団だけではカバーが難しくなってきた頃である。


「お前たち!躊躇うな、こいつらは魔物だ、遠慮なんぞいらん!戦場でそんなことしていたら真っ先に死ぬぞ!殺るか殺られるかの世界だ!甘ったれるな!」


ザウス騎士団長の活により多少だが持ち直した生徒達。


 集団戦闘なので後衛の俺にもゴブリンが襲いかかってくる。ここに来るまでに心構えはしっかりしてきた。いずれ来るであろう人型の魔物を殺す覚悟も俺には出来ている。


 ゴブリンは二足歩行で棍棒を持って結構な速さで向かってきた。俺はゴブリンが近づいたタイミングを見計らい、棍棒の間合いに入った瞬間にしゃがみ足を掛けて転がし、そのまま上を取り心臓付近を一突きした。ゴブリンはごふっと青緑の血と思われしものを吐き死んだと同時に粒子となって消えて行った。

 手に残った肉を断つ感覚は最悪だった。人型の魔物を殺すということは物凄く吐き気を催すものであった。


 最初に一番落ちこぼれの俺がゴブリンを倒したことにより、勇気が出来たのか躊躇っていた生徒達も次々と倒していった。物理攻撃が無理な生徒達は魔法を使い倒していった。

 最後に、ザウス騎士団長が他とは一回り大きいゴブリンを倒し、十階層を攻略した頃には皆は憔悴しきっていた。本来は能力値的には余裕である。それこそ二十階層でも通用するレベルだ。だが、戦い、殺しに無縁であった生徒達には精神的苦痛は計り知れない。

 ハァハァと息を切らし、四つん這いになりえずいたり、吐いている生徒が多い。


「お前達、良くやった...人型の魔物を殺すことがそこまで堪えるとは分かっていなかった、すまない!だが、同時に無事に十階層を攻略出来たことを嬉しく思う。今日はここで終わりにする。今から城に帰りたいと思う。あと少しの我慢だ、城に戻ったらゆっくりと休んで体を癒してくれ」


 ザウス騎士団長がそう締め括ると皆は少し安心した様子だった。

こうした精神的苦痛やこの世界で生きる厳しさ、アクシデントがあったものの俺達の初ダンジョン挑戦は終わった。各々無事を称えあい、十階層攻略という確かな功績を噛み締めていた。



 だが、この時俺はこのダンジョン攻略の真の目的を知らなかった。

俺は、悪巧みを企てる大人たちの思考に、少しずつ背後から迫る脅威に気付かずホッと一息を付き座っているのであった。

大変大幅に遅れまくった投稿となります。

これまで読んでくださった皆様申し訳ありませんでした。

これからはしっかりとした内容で頑張って行きたいと思います!

どーぞ宜しくお願いしますm(_ _)m

もう一作品の方も見ていただけると幸いです。

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