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ガチャから始まる異世界征服!

魔王討伐から千年。世界は平和そのものだった。

魔物は未だ健在だが魔王不在のため統率を取っての襲撃はなく、群れをはぐれた魔物が周辺の村や町を襲うことがあっても在中の騎士団で事足りる。

全ては"伝説の勇者"がもたらした平穏だった。


しかし━━。


魔界。

悪魔共が棲う混沌と闇の世界。ここでは至る所で紛争が絶えなかった。それというのも全ては"伝説の勇者"が魔王を討伐したことによるもの。"力こそが全て"の魔界では次期魔王の座を巡って『我こそは!』と力ある悪魔共が紛争を繰り返していたのである。その年月は千年。悠久を生きる悪魔にとっても長く感じる時間だ。

故に徐々に疲弊する悪魔が現れ始め、悪魔達はその数を減らす一方であった。

これに終止符を打たんとする悪魔が一人……。


魔王城跡地━━。

かつて魔王の根城として使われていた建物。その荘厳な風貌は千年が経ち、所々で劣化が見られるものの健在である。

そこの玉座であった場所に複数の悪魔達がせかせかと右往左往していた。そこにスーツを着た男が悪魔達に指示を出していた。

「邪星石はどうなっている?」

「はっ!着々と集まっております!」

「貯蔵はいくつか?」

「29個ッスね。」

「何をしている!3ターン周回が重要だと何度言えば分かる!」

「す、すいません!すぐにでも集めてきます!」

「全く……。」

男は落胆し溜め息をついた。

魔界全土で巻き起こる紛争。この千年もの間で生命を絶ったものは既に数十億に及ぶ。かつての魔界人口の三分の一もの悪魔が生命を絶ったと言われている(エセ学者談)

この戦争を終わらせるには魔界全土を支配出来るほどの力の持ち主、"魔王"の存在が不可欠であろう。私は指揮能力こそあれど先導者には向かない。どちらかといえば暗躍する側の悪魔だ。故に力のあるものの召喚を試みようとしているのだが………。

「残り1つの邪星石が見つからない。どこにある……!」

そこへトテトテと使い魔が両手で大事そうに運んでいる禍々しくも輝きを放つ石が1つ……。

「それだああああああああぁぁぁ!!」

ここに大悪魔と使い魔の小さな戦争が幕を開けた。


現代。

日本某所━━。

「さあ、今日こそは出すわよぉ!」

意気揚々とスマートフォンを弄り始める少女。画面には人気のゲームアプリが映し出されていた。少女は躊躇い無く課金してガチャを回す。今回も一万円分課金した。

(バイト代のほとんどを課金するとか我ながらやばいわ)

と思いつつも止められないのがスマホゲーの怖いところである。

画面が切り替わりガチャの演出が始まる。ここでの演出がガチャの結果を左右すると言っても過言ではない。

このゲームのガチャ演出ではカプセルから溢れる光の色で当たりか否かを判断できる。光が虹色であれば最高レアリティのキャラ、金色であれば最高レアリティまたは準最高レアリティのキャラが確定で排出される。

「ふおおおおお!?虹確キターーーー!!」

そして今回のガチャの結果。見事にカプセルからの光が虹色だった。カプセルが開き、光の輝きはやがて少女を包み込む程だ。

「って。え?ちょっ、眩しっ!」

あまりの眩しさに目を閉じる。ゆっくりと目を開けるとそこには見知らぬ男性が立っていた。


お互いに目を合わせると同時に出た言葉が。

『………は?』


魔界魔王城跡地━━。

何者だ?この娘は。どこから現れた!?ようやく手に入れた邪星石で召喚したのだが、全て下級悪魔とこの娘。伝承と違うではないか!必ず高位の悪魔かそれに相応しい者が召喚に応じるとあったはずだがこれでは今までの苦労が水の泡。とにかくこの娘をさっさと返還して………。

「ねぇ。ここどこ?あんた誰?あたしをどーしよーってーの?」

「一気に質問するな。ここは魔界だ。貴様に名を名乗る気はない。貴様はハズレだ。すぐにでも元の世界へと返してやる。と、その前にここにきた事は忘れてもらうがな。」

「はぁ!?ちょっと勝手過ぎだし!元の世界に帰るのはとーぜんでしょ!?でもって記憶も消すとかあんた、頭湧いてんじゃないの?」

「……ほぅ?貴様、どうやら死にたいらしい。」

男がかざした手からは禍々しい魔球が放たれた。しかし。

「きゃっ!?………あーもーマジふざけんなし!服がボロボロじゃん!どーしてくれんのよ!!」

「……は?」

「『……は?』じゃないわよ!どうしてくれんのか聞いてんだってば!!」

ば、馬鹿な!魔球は直撃したはずだ!い、いや落ち着け。よく観察しろ。着ている衣類は所々損傷している。だが、当の本人はどうだ?魔球の爆風によって巻き起こった土煙で多少汚れてはいるものの無傷だと?ふざけるな!たかが小娘が、いや、人間風情が耐えられるものではない。

「おい、貴様。何者だ?」

「はあ!?あんたさあ、なんかよくわかんないのぶつけておいて謝りもしないとかふざけんじゃねーよ!てかてめぇが名乗れ!そんで謝れ!」

「……ぐっ!」

小娘のクセに正論ぶつけてくるか!こいつが何者か分からない以上下手に動けないか。仕方ない。

「私はセバス。悪魔だ。先程は悪かった。これでいいか?」

「………は?」

「何をほうけている?あたかも『は?何言っちゃってんのコイツ?頭マジで湧いてんじゃね?』みたいな顔をするな。事実だ。」

「………う、そ……でしょ?」

「全く。忙しい娘だな。それで?貴様はなんと言う?」

「え?あぁ。マオよ。十六夜 マオ。ねぇ、ホントーにここどこなの?ちゃんと元の場所に帰してくれるんでしょうね!?」

「分かっている。そこを動くな。送還転移の陣を書く。」

「………ねぇ。」

「なんだ?あまり話しかけるな。小娘。」

「その、陣?どか書くのどれくらいかかるの?」

「早ければ2日だな。」

「はぁ!?ちょっとふざけてんじゃないでしょうね!2日とか死ぬわよ!」

「私としてはそれならそれで構わないが?」

「ぐぬぬ……。別な方法はないの?死ぬ以外で」

「ないな。だが、動くなと言ったのは陣が消えると面倒だからだ。消えないようであれば動いても構わん。」

「なんだ、そうならそうと言ってよ!」

マオは書きかけの送還転移陣をひょいっと飛び越えた。

「その辺、探索してくるわ。暇だし。」

「死ぬなよ?」

「何?心配してくれんの?」

「いや?貴様が死んでは私の苦労が無駄になるのでな。」

「そーゆー事にしといてあげるわ♪」

マオが魔王城跡地を探索してから数時間後。

「しっかし、なんもないわね。奥の部屋に変な箱があったくらいで目星ものはなんもなかったし、とーぜんといえばとーぜんだけどスマホの電波は立たないし、やってらんないわ。途中でなんか変なの出てきたから思わず殴っちゃったけど大丈夫よね?」

マオが通った後には悪魔達がその辺に転がっていた。

「んー。お腹すいたなぁ。とりあえず戻るかー。」

魔王城跡地 召喚儀式所。

「ねぇ。お腹すいたんだけど?」

「なんだ?もう、戻ってきたのか。残念だが食料なら自分でなんとかするんだな。」

「マジで言ってんの?ここ、コンビニすらないじゃん!どーすんのよ!」

「はぁ。うるさい娘だな。ほら。」

セバスが投げて寄越したのは生魚だった。

「うえ。何よコレ。」

「小悪魔共にやるためのエサだ。少しは腹の足しにはなるだろう。」

「これ、食べるの?」

「いやなら食わなければいい。」

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