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7陰謀

暫く改稿続きますがお許しください。


「首尾はどうだ?」


 太陽も青空も、海も人も、全てが存在しない、ただただ広い世界があった。異常に濃い魔素のせいか、明らかに怪しい紫の光がぼんやりと大地から発せられており、何とか視界が保たれている。大地の至る所に建造物の残骸が溢れており、かつてはかなり高水準な文明の世界であった事は容易に想像がつく。


 そんな世界に巨大な塔が一棟。至極色の空を突き抜けんばかりに伸びている。バベルの塔、とでも呼べば良いのだろうか、その高さは誰も知る事がない。最上階へ足を踏み入れた〝人〟は誰も居ないし、そもそも生物が存在しないのだから。


「はい。あのコロシアムは何者かにより機能が停止しましたが、黄金卿の者共は計画通りに」


 塔の最上階から大地を見下ろす、一際大きな身体をした漆黒のマントを纏う男の背に、片膝をつき、微動打にせず頭を下げる男。両側頭部から伸びるツノが特徴だ。


「数は」


「はい。5柱です。カグツチも死に、あのヨルムンガンドは依然と不干渉を貫いており、実際アーデとハダルのみが我々と敵対する形です」


「そうか」


「例の世界はどうしましょう」


「丁度いい。奴らの力を使え」


「畏まりました。邪神、スルト様」


 膝をつき、頭を下げていた男が忽然と姿を消す。


「このバベルの塔をかの世界にて顕現し、全てを壊す……」


 漆黒のマントを纏う男の肩がゾクゾクと震えだす。


「ふ、ふはははっもう直ぐだ、もう直ぐ全てが終わる……」


 邪神スルトの声が何も無いこの世界で何処までも響き渡った。



ーーーーーーーー



 私は今風になっている。


 大地からはるか上空、鳥を追い越し、風を追い越す。


 鳥が追い抜かれる時、目玉を飛び出して驚いていたが、その時の私は気が付かない。


 もう一度言う。私は今、風になっている。


「いーやぁああーー!!」


「うおおおお! だい! 大丈夫かー! エリー!!」


 今の私達にとっての大地は鉄の強度を持つ、ゴツゴツとした白いもの。所々ある突起を必死で掴み、振り落とされまいと必死に私へ話し掛けてくるのは、赤い髪を靡かせるテウラ。


「無理無理無理無理!」




 現在テトラに乗り、マッハの速度で移動中だ。俺がテトラに乗って尻の皮がむけたことは内緒にしてある。実は今もヒリヒリと痛むので乗りたく無かったが、最速の移動手段がテトラなのだから仕方がない。


「こんなの、聞いてませんわっ」


 天使なら空を飛ぶ事くらいできるだろ。と口に出しそうになったがぐっとこらえる。


「皆んな、振り落とされないようにー」


 実は俺の所だけ藁を敷いてあり、風魔法を上手く使って豪速でぶつかる空気の塊を回避できる快適スペースに改造してある。お茶目なイタズラだ、許して欲しい。


「お、おち、落ちてしまいますぅ! あ、アルディさん、た、助けて下さいぃ!!」


 おぉ、まだ知り合って間もないが、ケーラがこんな顔をする子だとは思っていなかった。空気で無理やり開かれる口に半分白目の瞳からキラキラ輝く涙が、可愛らしいケーラの顔面を悲惨なものに仕上げている。


 おっと、今ジェンシーのドリルはどうなっているのかな?


「やばい!」


「な、何ですの!?」


「ストレートになってるぞ……」


「な、なんの、話し?」


「いや、エリーには関係無いよ」


 驚いた。ジェンシーのチャームポイントが空気抵抗でストレートにされていたのだ。


 とまぁふざけてみたが、それも直ぐに目的地へと到着するからだ。幾ら何でも長距離の移動でこんなイタズラをする程鬼では無い。


 そうこうしている内に森の中に幾らかのスペースが空いているのが見えてくる。恐らくあの辺りが狐人の里だろう。ライラーヌさんから聞いた位置と概ね一致しているし、先ず間違いない。


「よし、降りるぞ! しっかり掴まってろよ! テトラ! 見えるか? あの辺りに着地してくれ!」


「はぁい! 皆んな、気をつけて、ねっ!」


 グンッと身体に荷重がかかる。


「うおっやべぇ!」


 テウラが顔に似合わず紅の瞳をウルウルさせているので、そろそろ助けてあげよう。


「エアシールド! ウエイトコントロール!」


 ネーミングは適当に効果のまま名付けた。空気抵抗による圧力を空気の壁で防ぎ、重力をコントロールする魔法だ。


「あれ? なんだか急に楽になりましたわ」


「あ……アル? もしかして、初めからこれできたんじゃ……」


「え? い、いや、今気が付いたんだよ。皆んながやばそうだったから何かしなきゃってね?」


「本当……だよね?」


 やばい。エリーが怖い。俺は気が付くともの凄い勢いで首を縦に振るっていた。嘘も方便と言う。


〝ズシーンッ〟


「おっと。着いたみたいだ。それじゃあ、コアを探そうか」


 周囲一帯巨大な木々に囲まれた小さなスペースへなんとか着陸したが……どう見ても歓迎ムードと言う訳ではなさそうだ。


「ガルルルッ」


 全身真っ白の毛並みで、ドーベルマン程の大きな魔獣がズラッと数十匹、俺達を囲む様に今にも襲い掛からんとばかりに威嚇している。


「お迎えだ。全員、直ぐに準備!」


 言うまでもなく既に全員が戦闘態勢に入っていた。


「グルァアア!!」


 白い魔獣が、白い残像を残して一直線に肉薄して来る。


「待つです!!」


 突如聞こえたその声に反応して、魔獣達の動きが止まる。


「こ……この声は……」


 エリーは声のした方に釘付け状態で声を震わしていた。


「どうして……いえ、何をしに来た……ですか?」


 そう言って木陰から身を出すのは……


「コア!」


「助けに来たんだ」


 相変わらずふわふわとした綺麗なブラウンのロングヘアーにこれまた赤みがかったブラウンの瞳。前世では見たこともない程最高峰の毛並みをした大きな尻尾。初めて出会った時と違うとすれば、暗く閉ざされた表情と、垂れ下がった明らかにやる気の無い尻尾だ。


「……頼んで無いです。もう勝手に死んで下さいです」


「ちょ、ちょっと待てよ! エリーもアルもお前の事をずっと心配してここまで来たんだぞ!? そりゃあねーだろ! 仲間だったんじゃねーのか!」


「お仲間が増えて良かったですね。私なんか居なくても全然……神獣達よ。この者らを始末しなさいです」


 急に冷酷な表情に変わり、俺達を殺せと命じて木陰へ消えてしまう。


「俺は……俺はお前を信じるぞ!! いやだと言おうが必ず助ける!」


 聞こえているのかは分からないが、気が付いたら叫んでいた。


「だよねっ」


 隣でファイティングポーズをとり、ニカッと笑顔を咲かすエリー。


「グルァウ!」


 クロも当然だと言わんばかりにコアが消えていった茂みを見つめていた。


「来ますわよ!!」


 ジェンシーの声と共に神獣とやらが襲い掛かる。待てよ? 神獣って何だ。疑問と同時に戦闘が開始される。


〝ザッ〟


 神獣は一度地面を蹴るだけで、まるで弾丸の如く目にも留まらぬ速度で肉薄して来る。それが四方八方から来るのだからたまったものではない。


「固まれ! ジェンシー、テウラ、ケーラ、シアンは一度に何匹も相手取らず一匹ずつ仕留めるんだ!」


「は、はい!」


 背と背を合わせ、死角をなくす事で同時に多数と対峙する事を防ぐ。


「エリーとクロはテトラの死角を潰しながら戦ってくれ!」


「ごめん、お願いするね!」


「任せて!」


「グルァウッ」


 神獣の脅威はその速さと数だが、彼らの脅威はこれだけではなかった。


〝キュンッキュンッ〟


「マジかよ!」


 テウラが絶叫するのも仕方がない。何故なら神獣達が空中を蹴り上げ、空を駆けて向かって来るのだから。これまで直線状で厄介であった動きが立体的になると言うのは最早絶望的だ。


「出し惜しみはしてられないな……」


 何が起こるか分からない以上、できるだけ【テイクオーバー】は節約しておきたかった所だが、そうもいかない様だ。


「テイクオーバー、神炎!」


 全身から白く神々しい光を発光する炎が吹き出る。その炎の勢いを利用し、目の前の神獣へ炎をぶつける。


「ぎゃんっぎゃんっ」


「倒せない!?」


 全く効いていない訳では無い。だがあの魔王ですら抵抗する事すら許さず消し去った【神炎】の炎を以ってしても消滅させられなかったのだ。


「平伏せ!」


 だめだ。神言も効かない。神獣と言うのだから【神炎】の属性に耐性でもあるのかも知れない。【テイクオーバー】するのを【神炎】から【雷】へと変更。


「スパイダーネット!」


 大地に這うように広く全体的に電気を流す技だ。スネークライトニングと迷ったが何となく前者にした。


「グッギルルル」


 【神炎】と似たようなレベルでしか効いていない。魔力の消費量を考えても【雷】の方がいいだろう。


「まずいな」


 テウラ、ケーラ、シアン、ジェンシーはそれぞれ背合わせに一対一で戦うようにしているが、それでも何とか耐えている程度、エリーとクロも五匹程同時に相手取り、自分のことで精一杯。テトラに関しては身体がでかいせいで十匹以上に狙われていて今にも押し込まれそうだ。かく言う俺も全方位から攻められており突破口が見つからない状態だ。


「不味いです! このままでは全滅ですよ!」


 シアンが遠くから叫ぶ。本当にヤバい。このままでは5分も持たずに誰かが死ぬ。思い切った大技では仲間を巻き込みかねないので使えないとなると……


「あれをやってみるか」


 まだまだ机上の空論で実験すら怖くてしていない事がある。それを使えば、そう思った時、彼女が名乗りを上げた。


「テトラ! そっちの皆んなを乗せて飛べますわね!?」


「エリーとクロちゃんならいけるけどこの距離じゃあアルまでは……」


 何か考えがあるのか? テトラの周囲にエリーとクロ、少し離れてジェンシー達。俺はテトラ寄りには居るが、丁度テトラ、ジェンシー、俺で三角形を作るようにそれぞれがばらけている。


「これくらいなら届く! 心配するな!」


「それならこの子達は任せて貰いますわよ!」


 ジェンシーは天使で、色々と【隠蔽】で隠している事だ。いざという時の何かもあるのだろう。ここは信じてみる他ない。


「合図で一気に飛んでくださいまし! 3、2、1……今ですわ!」


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