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3 コロシアムダンジョン3


 時は少し遡る。


 俺とテトラはライラーヌさんに聞いた狐人の里へ向かっていた。


 どうやら狐人の里までは相当遠いらしい。


 どれだけ頑張っても徒歩では2ヶ月以上掛かるのだとか。


 当然そんな悠長に歩いて行くつもりはない。せっかくマス◯ードラゴン並の白龍が一緒に居るのだから飛んで行く事にした。


 飛行機並の速度なら7.8時間で着くだろう。そう思った。


 想像して欲しい。もし飛行機がオープンカーの様に天井が無かったら?


 魔法やスキルを使えば落ちても死なないと分かっていてもめちゃめちゃ怖かった。


 しかも座席もリクライニング付きのソファではない。硬さが自慢のドラゴンの鱗だ。現在俺の尻は皮がズル剥けている。


 と言っても俺だけのせいでもない。テトラはまだ龍人として目覚めて日が浅い為か長時間の龍化はキツイ様だ。


 取り敢えず現状を踏まえた上で休憩を入れつつ1週間程で到着の予定だ。


 実際1日の内飛んでいる時間は精々1.2時間だ。尻の皮を守る為にも速度もそこまで出していない。


 休憩時はテトラに魔法を教えたり戦闘訓練をした。当然俺のスキルや【錬金術】の実験もしている。


 そんなこんなで龍の谷を出てから何日経っただろうか、空を飛んでいると眼下には白銀の世界が広がり、そのど真ん中にポツンと魔物に占拠された街があった。


 街自体は結構大きい街で、区画毎にレンガの壁で囲われているのが特徴的だ。見るからに寒そうな土地なので、防寒対策の為だろう。


 明らかにダンジョンの異変からくるものだろう。先は急いでいたが見捨てるわけにも行かず、調べる事にした。


「テトラ、ちょっと調べてくるからこの辺りで待っていてくれるか?」


「うん、分かった!」


 俺達は魔物に占拠されていた街の外れに降り立った。


 魔物の群れのど真ん中へ着陸するわけにもいかず、ここを選んだ訳だ。


「うーん、予想以上に寒いな。テトラは大丈夫か?」


「全然?」


 ドラゴンと言えば寒い熱いには強いイメージだしな。それにテトラは白龍、見た目からして寒さには強そうだ。風邪を引く心配もないだろう。


 対して俺は場違いな格好をしていた。龍の谷は一枚布の服で十分と言える気候だったからなぁ。


 布どころか尻の皮まで無い今の俺には耐え難い寒さだ。


「いや、ヒリヒリしてて冷たい方が丁度いいか?」


「どうしたの?」


「いや、何でもない」


 冗談は置いておいて、そろそろ中を調べに行こう。


「ちょっと行ってくるけど、ちゃんと大人しくしてるんだぞ?」


「うん! 分かったよ!」


「あ……あの」


 突然背後から声が聞こえた。


 しまった! 寒さと尻の痛さで完全に油断していた!


「誰だ!」


「あ、怪しものではありません! 私はここの市民のデルガと申します!」


 魔物達と一緒に暮らしているのか?


 それにしてもこんなでかいドラゴンも居るのによく話しかけて来られたな。怖くないのか?


「その大きなドラゴン。もしやあなた様の従魔でしょうか? 仮にそうでなかったとしても、相当なお力をお持ちだとお見受けいたします」


 なるほど、何か力を貸して欲しいとかそういう事か。それで危険を冒してでも話しかけて来たんだな。


「貴方様のお力をお借りしたい」


 そう言いながら木陰から1人の男が姿を見せた。


「あぁ……私は冒険者のアルディと申します。丁度今この街を調査しようとしていた所です」


 状況から考えて、どう見てもこの街を助けて欲しいとかだろう。


「ひ、引き受けて下さるのですか!?」


「任せてください」


「では少しだけ説明したい事が御座いますので此方へ……」


 何の情報も無しに行くよりはマシだ、ここは少しでも情報を集めておこう。


「分かりました」


「あの……誠に申し上げにくいのですが……」


 テトラの姿は生き残った人々のトラウマに触れてしまう可能性があるから、連れて来ないで欲しいみたいなことを言われた。


 その為にテトラは一度人型に戻ったが、予想以上に外気温が寒かったらしく一瞬で龍化した。


「私待ってるね!」


 という事で俺だけが説明を受けに行く事となり、テトラはこの場で待機する事となった。


 デルガさんについていき、生き残った人々の生活を見たが悲惨なものだった。


 取り敢えず俺が聞いた話はこうだ。


 現在街の真ん中にダンジョンがある。その街には魔物がはびこっているので街の中で生き残っている市民を助けに行く事ができない。


 そこへ最近偶然現れた冒険者達とこの街を最初の被害があった時に活躍した英雄ジェンシーが現在救出作戦を実行中で、その手助けをして欲しいとの事だった。


 デルガさんはその冒険者の事が心配で、無駄だと分かっていながら街の近くまで来ていたそうだ。


 話からするとその冒険者はついさっき街に入ったらしい。


 という事は共同作戦をするなら早い所合流した方がいいな。


 必ず全て助けてくるから、大人しくここで待つようにデルガさんには念押しをしてダンジョンへ向かった。


「ん? テトラの奴、何処にいるんだ?」


 ついさっきまでここに居たはず……


 デルガさんとの移動も面倒になって途中から担いで走ったからそんなに時間は経っていないはずなんだけど……


 と周囲を見渡し、【魔力感知】を使った。これはここ数日の実験で得たスキルだ。錬金術の効果を上げる為、魔素の濃い空間を目で見える様にしようと試行錯誤した結果得たものだ。


 【魔力感知】をマスターさせたら任意の魔力を見る事ができる。これでテトラを探そうという事だ。


 だがそんな事をする必要はなかった。何故ならテトラの行き先が直ぐに見つかったから。


 外壁……穴空いてんだけど。


 十中八九テトラの仕業だろう。外壁の穴の形がドラゴンのシルエットなのだから。


「たく。勝手に街のものを壊すなよな!」


 文句を言いながら外壁を潜り抜けると異様な光景を目の当たりにする事となった。


 なんと人間が魔物の奴隷となり、魔物を崇め奉っているではないか。


「じゅあああ」


 魔物がこちらに気づいた。


 よく見るとドラゴンのシルエットで家や壁に穴が続いていて、あちこちに戦闘の跡がある。


「家まで壊すとか何考えてんだか……」


 一緒に家を建てた事もあるんだから、家を建てる大変さは知っているだろうに……


 取り敢えず魔物は俺にとって脅威にはならなかった。


 ここ最近で習得した技を披露する事もなく立ち塞がる魔物のみを薙ぎ倒し、最速で街の真ん中まで突っ切った。


「なんだこれ」


 真っ直ぐにテトラの開けた穴を抜けて行くと巨大な魔法陣があった。


 そこでテトラの穴が消えている事からもあの魔法陣に入った事は間違いない。


「転移魔法陣か? って事はこれがダンジョン?」


「じゅあああ!」


 背後からいつのまにか数十匹にまで増えた魔物が追って来ていた。


「っち。しょうがないな」


 相手をするのも面倒なので取り敢えず魔法陣へ飛び込んだ。


 すると目の前の景色が変わり、どこか闘技場の様な場所へ飛ばされた。


「何をやっているぎゃ。お前達には戦えと命じた筈だぎゃ?」


「何訳分かんねぇ事言ってやがる! 鼻っからお前の言うことなんか聞く気ねぇっつの。さっさと出てこい!」


「……お前達の強さはよく分かったぎゃ。いくら俺様でも楽にはいかなさそうだぎゃ。またいずれ相手をしてやるぎゃ」


「に、逃げる気です!」


「逃がしません!」


 成る程、大体分かった。


 ここが闘技場である事とあそこにいるのが冒険者だな。そんであれがテトラ。


 それと目の前に居るのがこのダンジョンの支配者か?


 なんで誰も気が付かない。ここに居るのに。


 あぁ、【魔力感知】か。


 取り敢えずパラメータで名前だけでも確認しておくか。


 ふむふむ【レヴィアタン】か。見た目からして魚か?


 後ろ姿なのではっきりと分からないが背びれと鱗の質感から魚類である事は明らかだ。人型で二足歩行。大きさは人と対して変わらない。


 まぁ、名前からしても魔王で間違いないな。マモン、ベルゼブブと来てレヴィアタンだからな。


「ぎゃぎゃぎゃっ。お前達は最後まで俺様に踊らされていれば良いんだぎゃ! じゃあせいぜーーっぶあぎゃふっ!」


 取り敢えず背後からレバーブローを決めて頭蓋骨を鷲掴みにして捉える。


「おいおいテトラ……勝手に進んじまうだけじゃ飽き足らず……ダンジョンにまで手を出すなんて何考えてんだ?」


「……あ……る?」


「……エリー?」


 遠かった事と後ろを向いていた事、他の冒険者で姿が隠れていた事もあってエリーだと判断できていなかった……


「は、離すぎゃ!」


 魔王レヴィアタンも流石魔王といった所か力は大したものだ。俺の後頭部アイアンクローを無理矢理外して距離を取る。


「エリー、話は後でゆっくりしよう。今はこいつを倒す。それでいいか?」


「うん……」


 少しだけ泣いている様に見えた。


「ぎゃぎゃぎゃっしょうがない。折角見逃してやろうと思ったのに死に急ぐとは……」


 レヴィアタンの上半身がもりもり大きくなっていく。


「それとテトラ。お前は家を壊しすぎだ。後で全部直すからな?」


「えぇ!! 全部!?」


「当たり前だろ?」


「ぎゃ……き、貴様……この俺様をコケにするつもりか」


 うるさいやつだ。


 さて、ここで問題だ。今までマモン、ベルゼブブと魔王との戦いはこちらが圧倒的不利だった。


 それでいて何故俺がこれだけ余裕な態度なのか。


「アビリティ。テイクオーバー。雷!」


 身体の周囲を激しい稲妻が覆い尽くす。


「真の姿になった俺の実力……見せてやるぎゃあ!」


 なんの変哲も無い爪を振りかぶった攻撃。きっととてつもない破壊力なのだろう。


 だが。


「ぎゃーぎゃーうるせぇぞ、お前」


 振り抜こうとしたレヴィアタンの右手首を掴んで攻撃を止める。


「ぎゃぎゃぎゃぎゃっな、なな、なんぎゃっぎゃこ、これは」


「今の俺は雷、魚には雷だろ?」


やっと再開させる事ができました!!

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