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21 旅立ち


 意外とあっさりテトラは龍化を解いて見せた。


 龍化した時とは打って変わって、間抜けな音と煙を出しながら一瞬のうちに人型に戻り、俺の作った鏡を覗き込む。


「やった! 戻ってる!」


「良かったな」


「どうなっているんだ」

「呪いは消えたのか?」


 村人達はテトラが自力で龍化を解いた所を見て、どよどよと騒いでいる。


 その中で若干一名がこちらへ猛ダッシュで向かってくる。


 師匠だ。


「一体、何がどうなったってんだ?」


 師匠ら村人は、テトラが龍に呪われた事で龍化していたと思っていたんだ。当然何が何だか分からないでいるはずだろう。


 俺はパラメータのお陰でテトラに呪いなんて掛かっていない事も分かるし、元々龍人という種族だという事も分かっている。


「もう大丈夫ですよ。きっと、今後テトラがドラゴンになって暴走する事は無いと思います」


「ほ、本当か!?」


「ええ」


 テトラは鏡をまじまじと見つめていてこちらの話は聞いていないようだ。


 まぁその方がいいだろうな、今までの事は分からないが村人達もテトラを悲しませない為に嘘までついていたのだろう。知らぬが仏と言うやつだ。


〝ボフン〟


「おあっ!」


 なんの前兆もなくテトラが龍化し、それに師匠が驚いたのだ。


「私、ドラゴンに成れるようになったの?」


「そうみたいだな」


 ドラゴンの姿で人語を語る姿はとてつもない違和感だ。


「んんんん!!」


「お、おい、どうした?」


〝ボフン〟


 なんと、人型を保ったままドラゴンの皮膚とツノ、爪を再現していた。ハーフドラゴンとでも言えばいいのだろうか。


「そんな事までできるのか?」


「できちゃった」


 【制御(龍)】をマスターさせたからだろう。完全に龍化を操っている。


 ちなみにステータスはどうなっているのか確認してみたが、ドラゴンになっている時とハーフドラゴンの時でステータスの差は無かった。称号の【龍人の誇り】はハーフドラゴンでもちゃんと作動するようだ。


「あんりゃあ! どぉなってんだ?」


 ライラーヌさんが登場して、一通り俺の推測やパラメータの事も現地にいた村人達も含めて説明した。


 中には涙を流して喜ぶ人も居たし、みんなから取っ替え引っ替えに抱きつかれたり頭を撫でられたりと、現状を理解していないテトラも満更ではない様な態度で喜んでいた。


 本当に愛されているんだな。


 これも【寵愛】のスキルの効果なのかと思うと少し寂しい気もするが、それだけでは無いだろうと信じる事にした。


 龍化自体は割とあっさり解決したのだが、村人達がいきなり始めた宴会の所為でまだまだ夜は続く事になるのだった。



ーーーーーーーー



 さて、昨夜テトラの龍化の問題を解決したことだ。錬金術も覚えたし、この村に残る理由はもう無い。


 こう見えて俺も急いでいるのだ。エリーの事も心配だしコアの事も早く何とかした方がいい。


 そんな事を身支度を整えながら俺は考えていた。


「うーむ、でもなんか……村を出にくいなぁ」


 村の人達は俺が完全にこの村に残ると思っている事だろう。普段の態度もそうだし、口々にテトラを頼むとか任せたとか言われるし。


 いっその事何も言わずに消えるか?


 テトラは転生者だが、無理に闘いに巻き込む必要も無いだろう。魔神も聞いていた話となんだか違う気がするし。


 何よりテトラはこの村に居るのが一番幸せだろう。村の人達だってそう願っているはずだ。


 俺は一人で村をこっそりと出る事を決めた。


〝コンコン〟


「おおっ……どうぞ」


「おはようさん。村を……出るんけ?」


 ライラーヌさんだ。きっと彼女だけは俺がこの村からいずれ立ち去るだろうと分かっていたんだろう。


「ええ、私にも目的があるので……この村ですべき事は終わりました」


「そぉ言うと思うっとったよ。テトラを、孫を宜しくなぁ」


「はい……ん?」


「アルぅ! 私の事置いて行く気満々だったでしょ!?」


 イエス!


「わしにもテトラがただ者ではねぇ事くらい分かる。テトラはなんぞ使命を授かった子ぉじゃ。お前さんとおるのが一番ええ」


 転生者だって事を言っているのか? そんな事は彼女が知る由はない筈だが……


 そんな気がするってやつか?


「なんて言ってもついて行くからね!」


 仕方ない、か。


 なんだかんだ言って心の何処かでテトラに旅について来て欲しかったのかもしれないな。その証拠に少しだけ笑みがこぼれていた気がする。


「なぁんもしてやれねぇけんど、いつでも帰っておいでねぇ」


 今まで見たどんな顔よりも優しい笑みを浮かべ、テトラの頭を撫でていた。


「うん!」


 何もかもお見通しだったようで、テトラの身支度もしっかりと準備してあった。


 そのお陰で俺達はすんなりと旅立つ事ができた。


 そうして玄関の扉を開けると……


「アル坊! 何も言わずに村を出ようなんて水クセェじゃねぇか!」


 ソトルさん。


「アルディ君。君には助けられてばかりで何も返してあげられなかったな。いつかこの村へ帰ってきたらご馳走を用意するよ」


 ハビィさん。


「もう、弟子なんて呼べねぇな」


 師匠。


「何言ってるんですか。師匠はいつまでも師匠です。親がどこまで言っても親なのと同じですよ」


「けっ。また錬金術で分からねぇ事があったら聞きにきな!」


 師匠……何涙ぐんでるんだよ。たった数日しか顔合わせてないのに……涙脆いんだから。俺まで泣きそうになるじゃんか。


 村中の人達が俺達の門出を悲しみ、祝い送り出してくれたのだった。


「皆んなぁ! 絶対また帰ってくるからねぇ!!」


 テトラは村を出て、何度も振り返りつつも叫んでいた。


 しばらく歩いて村人が見えなくなると寂しそうにテトラは黙り込んでしまった。


「不安か?」


「うんん、アルが居るもん」


「冒険は嫌いか?」


「好き!」


「そうか、いっぱい冒険しような?」


「うん!」


 村を出るなんて初めてだろう。不安なのは当然だ。


 俺の旅に着いて来ると言う事は……いや、転生者が旅に出ると言う事は魔神ないし魔王の黒幕を倒さなければならないと言う宿命を背負う事になる。


 本当はこんな事に巻き込みたくなかったが、転生者と言う時点であの村に居るのも危険だったかもしれない。そうなれば転生者同士俺達は一緒にいた方が何かと安全かも知れないし、これで正解だったのかも知れないな。


 その辺りはちゃんと説明して置かなければならないな。記憶を持った俺だけが知る事だ。転生者にこの事を話すのは俺の使命だろう。


「アルぅ?」


「どうした?」


「どこに向かってるの?」


 そうだ、俺達は村を出る前にライラーヌさんに聞いた狐人の里とやらに向かっている。恐らくエリーもそこへ向かった筈だしな。


「俺には仲間が居るんだ。そいつらの居る所さ」


「仲間? 私も友達になれるかな」


「成れるさ。そうだ同い年の女の子も居るぞ?」


「本当!?」


「ああ」


「……アルは……」


「どうした?」


「うんん、何でもない」


「あとなぁ、でっかい狼の魔物と狐のお姉さんだ」


「でっかい魔物?」


「そうだ。子供の頃から一緒に育って居るから噛み付いたりしないから安心だよ」


「怖くないもん!」


「はははっ。皆んないい奴さ」


「早く会いたいなぁ」


 ライラーヌさんに聞いた話しでは徒歩で3ヶ月掛かると言っていたからなぁ。途中で馬を買うか……


 何はともあれ、俺達はこうして共に旅に出る事になった。



少し短くなってしまいましたが、キリがいいのでここまでが3章と致します。

次回から4章となっていきます。

あっさり転生者の龍人族が仲間になってしまいました。今後の活躍が楽しみです!


よろしくお願いします!

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