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6 シーネ村にて4


 10歳の誕生日。


 今日はいい天気だ。どこまでも続く青い空に所々大きな白い雲が散らばっていて、鳥達も嬉しそうに空を飛んでいる。

 絶好の誕生日日和だ。


「ふっ……うぁあ〜」


 ベッドから体を起こしつつ大きく伸びた。8歳の誕生日でデジャヴを経験してから2年。今日はステータス測定の日だ。


 そこへダダダダーッと廊下を走る音が聞こえてくる。

 数瞬の沈黙の後ビターン! と音がしそうな勢いで扉が開き、金色の天使が飛び込んで来た。


 あぁ、まだ夢か……


「おふぅっ!」


 肺の中の空気が押し出される。それでも関係ないと、御構い無しにベッドへ押し倒される。


「誕生日おめでとう!!!」


 天使さん? 少しくらい加減をしようね。


「わん! わんわん! わん!」


 クロもベッドの周りを走り回る。


 こんなに誕生日を祝ってくれる人達が居るなんて幸せだなぁ。としみじみ思う。


 ()()()もバフバフしてないでそろそろどいてくれ。シルエットだけ見るとこれはなかなかに危ないと思うぞ。


 バフッ!


「うぁん! うぁん!」


 感極まったのかクロまでベッドに飛び乗り俺にのし掛かってくる。


 そこへトントントンと廊下から足音が聞こえてきて、部屋の前で止まる。


 そろ〜っと音がしそうな程ゆっくりと扉の淵からディーナが顔を覗かさる。


「きゃっ」


 なに、してるの? ()()()


「ご、ごめんなさい。まさかそんな、ねぇ?」


 母さんは俺達を茶化す様に話し出す。


 なんて母親だ。まだ10歳の子供に対して悪い冗談だ。


 こういう冗談を言ったりする所、前世の母親に似ていて懐かしく思っていたりする事は秘密だ。

 アドルフは基本的に夜しかいないので普段会話がないが、休みの日は剣の稽古を付けてくれる。真剣を振れるのはこの時だけだ。普段は木の枝だからね。


 前世でも親父とは基本的に話した事は無い。仕事ばかりで家にいなかったし、たまの休みは……って休みなんかあったかな? というくらい忙しそうだった。実は苦労して働いて育ててくれたのかな? と最近思う。


「母さん。冗談言ってないで支度してよね。今日はステータス測定の日だよ」


「そうね、ステータス測定の前に気合い入れないとだもんね! ちょっと寂しいけど……」


 まだ言ってんのか!


「母さん。」


「そ、そうね、ごめんなさい」


 母さん。ニヤケが止まってないけど?


「ほらエリーも、ベッドから出られないよ」


「はーい」


「くぅ〜ん」


 嫌そうな声をすな! クロまで、ボケてるつもりなのか?

 先程から何度目かの突っ込みを心の中で入れる。


「よっと」


 やっとの思いでベッドから出る。


 10歳。ステータス測定をしてステータスプレートを受け取り、晴れて大人の世界へ一歩踏み入れる。そんな歳だ。


 前にも説明したと思うがステータスプレートは身分証である。これを貰うとできる事も増えるが税を払わなければならない。

 勿論いきなり払えとは言われないみたいだが……


 正直不安しかない。7歳の頃と比べると、エリーは強くなった。

 クロとの模擬戦はそれはもう見事だ。幾重にも重なるフェイントや誘い込み。魔法を使った誘導。未だに決定打こそ決め切れないが、素人目に見てもいっぱしの兵士より上だ。

 俺の水たまりは黒歴史とでも言いたくなる。


 しかしそれも今日までだ。今日のステータス測定で他2つのゴッドスキルを知り、一気に差を付ける。いや、抜き返す。もう俺にはこれしか希望がない。


「おはようアル。ほら」


 父さんはそういいながら俺に一本の剣をくれた。


「おはよう、父さん。これは?」


「今日からお前も半分大人の世界に入ってくるんだ。まだまだ本当の大人たちからしたら子供だが、自分の身くらい守らないとな? とは言えまだまだ十分甘えていいからな」


 何の変哲も無い、高級でも無いただの剣。それでもやっぱり父親からの贈り物は嬉しいものだ。


 10歳になると何かしらの仕事をする事が殆どだ。

 中には学校に行くような者もいるが、この世界では貴族や、エリートしか行けない事になっている。この村からは歴代でもそんな優秀な人材は出ていないらしい。


 もちろん俺は冒険者になりたいと思っているが、このままではなれないと考えている。


「お前は10歳にしては熟練された剣を振るう。冒険者、とまでは言わないが兵士になるといいだろう。この村を父さんと一緒に守ろう」


 勿論ステータスが出てからしっかり考えて決める事になるが、そう言ってもらえる事自体は嬉しい。実際転職もできるらしいし、一度兵士を経験して置くのもいいかも知れない。


 父親と同じ仕事か。これでも俺は父さんを尊敬している。


 こう見えてアルフレドは結構強い。あの水色頭の兵士よりも強いくらいだ。


 仕事については直ぐにエリーのステータス測定があるだろうから、それから決めてもいいだろう。普通はステータスプレートを貰ったら就活っぽい事をするようだが、俺の場合はスキルの研究が1番だな。


「ん、ダメよ、ん、おじさん、アルは私と、冒険者、に、なるん、だか、ら」


 俺の隣で母さんの作った朝ごはんを食べているエリー。何故かちゃっかり頂いているみたいだ。


「こら、口に物を入れて話さない」


「ごめんなさい」


「エリーナちゃんは誕生日いつだったかしら?」


 朝食の片付けを終えたディーナがエプロンで手を拭きながらエリーに話し掛ける。


「1ヶ月後です!」


「楽しみね、エリーナちゃん優秀だもの」


 優秀じゃなくてごめんよ。母さん。


「アルだって優秀ですよ! それに人はステータスだけじゃありません!」


 フォローされてるのかされていないのか微妙な所だけど……ありがとう。エリー。


「ええ! 勿論アルだって最高よ! ね! あなた!」


「あぁ、俺達の誇りだよ」


 きっとみんなステータスだけじゃ無いと伝えたいのだろう。能力が全てみたいなこの世界で、こんなにも個人の事を見てくれる人達がいる。俺はそれだけで幸せだ。


「そろそろ時間じゃない? いこ!?」


 エリーが俺を急かす。


「ああ、行こうか」


「行ってらっしゃい」


「気を付けてな」


 俺は父さんに貰った剣をしっかりと握りしめて家を出た。



ーーーーーー



「おう! アドルフんとこの坊主か! 今日はステータス測定だよな?」


 アドルフの同僚で偶に剣の稽古を付けてくれる兵士。水色短髪と言えば分かるだろうか。


「そうです、よろしくお願いします」


「いつも可愛い彼女連れやがってこの幸せ者め!」


「そ、そんな、可愛いなんて」


 くねくねするな。社交辞令だよ。実際可愛いけども。


「よし、こっちだ。入れ!」


「はい。すぐ終わると思うからエリーはここで待ってて」


 駐屯所に招き入れられるままに入って行く。ざっくり言うと前世の派出所と言った雰囲気だ。そこで机を挟んで対面に兵士と向き合う。


「まずこれにサインしてくれ。国が坊主を国民と認め、大人として認める代わりに税を払えと言う誓約書だ。詳しい事は自分で読め」


 サラッと読んだところ当たり前の法律が羅列してある。殺人は駄目だとか窃盗は駄目だとか。その場合はこんな罪になるとか。


 普通に生活している分なら大丈夫だろう。


 税と言っても今すぐ払えと言うわけではない様だ。満12歳までに職に就かなければならず、税はその時点で発生するらしい。10歳でも職に就けばその時点で税は発生する様だ。税自体は給料から引かれているらしいので何かする必要もないらしい。


「ステータス測定の結果次第でどんな職につけるか変わってくるからな。気合い入れろよ! 村を出るのもよし。村を守るもよし。農夫として働いたっていい」


 とりあえず俺はエリーのステータス測定を待ってから考えるつもりだ。タイムリミットは12歳か。それまでに満足いく結果が出なければ、魔神を倒すどころか生活の事を考えないとな。


 契約書に名前を書き込む。


「よし、じゃあこの石板の上に両手の平をかざして名を唱えるんだ」


「分かりました」


 俺は目の前にドン、と置かれたかなり古そうな石板の上に両手の平を下にして名前を唱えた。


「アルディ」


 次の瞬間、フワッと青白い光が霧散して光はすぐに消えてしまった。


「もう手は退けていいぞ」


「はい」


 意外と簡単だな。


 石板から手を退けると石板の上には一枚の板が乗っていた。サイズは免許証より一回り大きいな、パスポートよりは小さいかな?


「ほれ、これでステータス測定と登録は終わりだ。ステータスプレートを確認しな」


【名前】アルディ

【種族】ヒューマン

【年齢】10

【性別】男

【ステータス】レベル1

HP:56

MP:62

筋力:8

敏捷:8

魔力:10

耐性:6

運気:250

【スキル】

記憶・・・MAX

パラメータ・・・MAX

習得・・・MAX

ゴットラック・・・???

魔力操作・・・1

剣術初級・・・0

体術初級・・・0

炎初級・・・0

水初級・・・0

風初級・・・0

土初級・・・0

雷初級・・・0

光初級・・・0


 1番始めに思った事。

 ゴッドラックってダジャレじゃなかったんかい! って事だった。


「で? どうだったんだよ」


 ほれほれとステータスプレートを見せろと言わんばかりに兵士が手を伸ばす。早いとこ他人の感想が欲しいのでとりあえず渡す。


 受け取った瞬間目を白黒させて驚き始めた。


「レベル1だぁ?」


 普通魔物を倒してから上がるものなのかと思ったからそんなに違和感なかったがやっぱり異常なのだろうか。


「お前、今まで何して生きてきたんだ? 普通10歳ならレベルも7〜10くらいあるぞ?」


 日常生活でもどうやら経験値は貯まるらしい。兵士はそのまま俺のステータスプレートを食い入る様に見始める。


「ステータスもこんなに低いのは見たことない。よくこれで俺やあの天才少女と組み打ちなんてやってんな」


 兵士は唸る様に考え込む。


「あれだけ特訓してきたんだ。こんな筈はない……」


 詳しい事は分からないが結果がレベル1なのだから仕方ないだろう。この世界で生きてきた兵士がおかしいと言うからには原因は有るのだろうが、それは後で考えようと思う。


 今回のステータス測定で1つわかった事がある。それは知識や経験はステータスに反映されないと言う事だ。

 本来ならレベルアップの経験値として入るのかもしれない。それでも実際にレベル1の俺は剣を振った経験を元にエリーと模擬戦をしているのだから、結局経験や知識はステータスと別のものだろうと思う。


「なんだこのスキルは!? 見た事も聞いた事もないぞ? 仕事柄、全部知ってるわけじゃねぇがある程度メジャーなスキルは大体知ってる。が、しかしこりゃぁ……俺からは何も助言はできねぇな。1番謎なのはゴッドラックってやつだ」


 まさか神の冗談で与えられたスキルです。なんて言えない。


「スキルの数はかなり多いが……殆どスキルレベルが0じゃ無いか。普通スキルレベルってのはスキルを取得した瞬間からレベル1はあるもんだぞ? それにスキルとは通常レベルが上がった時に付与されるものなんだが……」


 レベル1だしな。期待してたスキルも何だかよくわからないし名前からしても使えなさそうだ。パラメータってなんだ? ステータスが確認できるこの世界じゃ意味がないだろう。

 スキルが多いのは習得ってスキルのおかげなんだろう。


 しばらくはこのスキルについて研究する必要がありそうだ。

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