15アルディside5
さて、昨日ハビィさんが俺達の事をこの村唯一の錬金術ホメルさんに紹介して置いてくれた筈だ。
念願の錬金術を今日から学ぶ事ができると思うと、朝からちょっとテンション高めの俺だった。
「おはようっテトラ!」
部屋の扉を開けると、廊下を掃除していたテトラを見つけて元気よく挨拶。
友達100人できるかな四原則その1〝大きな声で〟その2〝明るい笑顔〟その3〝自分から挨拶〟その4〝……はまだ考え中だ。
「お、おはよう……どうしたの?」
「今日はホメルさんの所へ行く予定だけど、テトラも来るか?」
「いくいく!」
「よし、じゃあ俺も掃除を手伝うよ」
「ほんと!? ありがとう!!」
まぁ実は早く行きたいだけなのだが、それは言わない方が良いだろう。
そうだ、友達100人できるかな四原則その4!〝嘘も時には大切〟にしよう。
「ライラーヌさんおはようございます」
「あぁおはよう」
相変わらず本を読んでいるライラーヌさん。またドラゴンについて調べているんだろう。あれから本棚の本もいくつかパラ読みしたが、どれもドラゴンについてか薬の作り方なんかだった。
ホメルさんも何か研究をしているらしいが、何をしているのかまでは誰も知らないらしい。と言うより俺が感じたのは、知っているが敢えて話さないと言う感じだった。
「ここがホメルさんの家?」
テトラが案内してくれたホメルさんの家はかなり小さな、掘っ建て小屋みたいな家だった。
その隣に倉庫のようなさらに小さなものがあるので、そこが研究所なんだろう。
「すみません! アルディと申します! ホメルさんはいらっしゃいますか!」
見た所呼び鈴のようなものも無いので、呼んでみた。
「おぉ、オメェさんがアルディか?」
ん? 玄関からは誰も出てこない。窓か? そう考えて見渡しても誰も居ない。
「こっちじゃ! こっち!」
そう言われて声の方を見ると、倉庫の方からホメルさんと思しき人物が手を挙げていた。
こんな朝から研究中だったのか。本当に研究熱心な人だな。それに思ってたより怖い人ではなさそうだ。
勝手ながら、引きこもって研究をしていると言う噂からもっと暗くて取っつきにくい人か、頑固一徹爺さんみたいなのを想像していた。
「おはようございます。私はアルディと申します」
「あぁ、ハビィから話は聞いているよ。テトラ〜久し振りだな! 元気にしてたか?」
「ひ、久し振り?」
頭をわしゃわしゃされながらテトラは疑問顔だった。
「やっぱり覚えておらんか。初めてあった頃はまだよちよち歩きだったからなぁ」
「おじさんと会ったことあるの?」
「あぁ! そうさ、儂はテトラの事を忘れた事は一度も無いぞ? さぁ、外で話すのもなんだ。早く中に入れ入れ」
そう言って研究所へと招き入れてくれた。
ふむ、研究所にしてはやけに生活感が溢れている。殆どこっちで生活しているんだろうか。
「さて、早速だが……アルディ。なんでもハビィの家を独学で、しかもそこのテトラと2人で建てちまったんだって?」
「はい。正確には召喚した者達にも手伝って貰いましたが」
「それも気になるが……魔法だけでどうやって家を建てた?」
確かにホメルさんの言うとうり、魔法だけでは到底家は建てられない。窓ガラス、木、鉄、石。家には色んな材質のものがある。勿論、何でも屋のソトルさんから購入したものも使用したが、それらの材料を形あるものにするには魔法だけでは不可能なのだ。
俺が使ったのはなんちゃって錬金術で、原始魔法と他の魔法を組み合わせたものだ。以前から使っていた水魔法と土魔法の混合魔法、木魔法で作った木から取り出す木材も一種のなんちゃって錬金術の1つだ。
簡単に言えば、【魔力操作】【性質変化】【原始魔法系】のスキルで、錬金術っぽい事をしつつ手作業を加えて錬金術として賄っていたのだ。
ホメルさんはその事が聞きたいのだろう。
「錬金術を学びたいそうだが、錬金術には【性質変化】のスキルが必要不可欠だ。これがなきゃあ話にならん……がアルディ、お前は【性質変化】を持っているな?」
「はい」
やっぱりそうだ。錬金術とは鉄や鉛を黄金に変えるとかなんとか、確かそんな感じの学問だと、前の世界では言われていたからな。
「後は何のスキルを持っている」
ホメルさんの表情は、挨拶を交わした先程より真剣なものとなっていた。
「後は錬金術に使えそうなスキルは【魔力操作】【性質変化】【原始魔法上級】あとは各種属性魔法全種類上級まで使えます」
「……嘘をつけ」
「本当です。ステータスプレートを確認しますか?」
「いいのか? ええ。構いませんよ」
俺はポケットからステータスプレートを取り出した。
そう言えば久しくステータスの数値を弄ってないな。ついでに上げておこう。
【名前】アルディ
【種族】ヒューマン
【年齢】12
【性別】男
【ステータス】レベル156
HP:27000
MP:28000
筋力:8850
敏捷:9000
魔力:10000
耐性:9500
運気:1000
【スキル】
記憶……MAX
パラメータ……MAX
習得……MAX
ゴットラック……???
逆境……MAX
アイテムボックス……MAX
魔力操作……MAX
性質変化……MAX
テイム……MAX
危機感知……MAX
神炎……MAX
剣術初級……MAX
剣術中級……MAX
体術初級……MAX
体術中級……MAX
原始魔法初級……MAX
原始魔法中級……MAX
原始魔法上級……MAX
炎初級……MAX
炎中級……MAX
炎上級……MAX
水初級……MAX
水中級……MAX
水上級……MAX
風初級……MAX
風中級……MAX
風上級……MAX
土初級……MAX
土中級……MAX
土上級……MAX
雷初級……MAX
雷中級……MAX
雷上級……MAX
光初級……MAX
光中級……MAX
闇初級……MAX
闇中級……MAX
闇上級……MAX
回復初級……MAX
炎耐性……MAX
水耐性……MAX
風耐性……MAX
土耐性……MAX
雷耐性……MAX
闇耐性……MAX
恐怖耐性……MAX
回復初級が増えている……
これもついでにマスターさせておこう。多分マモンとの戦いでクロを治した時の経験だろう。後で上級までマスターしておくとするか。
それにしても予想以上にステータスが伸びてるな。まぁ最後に確認したのが罠が沢山あるダンジョンの中だったからな。あれからデーモンやマモン、ベルゼブブとも戦ったから当然伸びているとは思ったが……これ程とは思わなかった。
「お前、冒険者だったのか?」
お前……段々とホメルさんの顔が怖くなっていく。
「だった、と言うより現在進行形で冒険者です」
「なるほど……色んな噂やハビィの話からして只者じゃねぇとは思ってたが……SSランクの冒険者だったのか。初めにスキルを聞いておいて良かったぜ。危うく腰を抜かすところだった」
嘘だと言いながらカマかけたのか。
「なになに? おじさん。あるってばやっぱり凄いの?」
「凄いなんてもんじゃねぇ。小国なら抵抗も許さず1人でつぶせる程さ」
「よく分かんない」
「まぁ、簡単に言えば超すげぇ」
「やっぱりアルは凄いんだ!」
自分の事でもないのにやたらとテトラは喜んでいた。
「まぁいい。スカした口だけ野郎なら錬金術を教えるつもりはさらさらなかったが……お前なら直ぐに俺を超えられるだろうよ」
ホメルさんは呆れたような態度を取った後、先程までの緊張した空気を一気に解き放った。
「じゃあ教えてくれるんですね!?」
「あぁ、だが何故俺なんだ? 自分で言うのもなんだが、俺程でないにしてもライラーヌさんも錬金術は齧ってるはずだぜ?」
ライラーヌさんは何者なんだ。錬金術までやってたのか。
禁呪や薬の研究をしているくらいなのだから、少し考えてみれば【錬金術】のスキルを持っている可能性にくらい気がつけたな。
「まぁいい、確かに俺の方が錬金術に関しては詳しいはずだからな」
この人は自分に自信があるタイプなんだな。
「ただし、1つ条件がある」
「何でしょう」
「お前が錬金術を覚えたら……俺の研究を手伝ってもらう」
ホメルさんの研究……なんだろう。
「その研究とは、いったいどんなものなんですか?」
「それはまだ教えられんが、悪い事ではない。それは誓う」
「分かりました」
ホメルさんの研究は少しきになるし、断れば教えて貰えないのであれば答えは当然決まっていた。誰も結果を出すまでとは言っていないしな。手伝うだけだ。うん、これでいこう。
友達100人できるかな四原則、その4だ。
「よし、今日から俺の事は師匠と呼べ」
唐突に師匠面とは、驚いたがまぁ間違いではないしその方が楽しそうだ。
「はい! 師匠!」
「じゃあアルは私の師匠だね!」
横でテトラが何か言っていたが聞こえなかった事にしよう。
「先ず錬金術についてだが、ここ大切だからぁメモ取っとけよー」
コイツ、あいや、師匠ってもしかして転生者か?
ふざけたボケから真剣に転生者かも知れないと勘ぐったが、そっと師匠に触れてパラメータを発動してみたがどうやら違ったようだ。
一瞬前までふざけていた師匠の顔が真剣なものへと変貌する。
忙しい人だ。
「錬金術とは様々な物質や、人間の肉体や魂をも対象として、それらをより完全な存在に錬成する事。これが最終目標だ。まぁ人間の肉体や魂なんてのは未だに錬成できたなんて話は聞いた事がないがな。あくまで錬金術を学ぶならこれは知っておけ」
「分かりました」
「あと、錬金術は何でもできる万能のもんじゃねぇ。ただの鉄っころから黄金ができるって思い込んで錬金術を学ぶ奴がいるが……ありゃあバカだ。珍しいとは言えこの世界中探せばそれなりに錬金術師がいる。確かに錬金術で鉄から黄金を作る事はできる。それでも金貨の価値はかわらない。この意味がわかるか?」
「んー、おじさん! 全然分かんない!」
師匠が俺に視線を変え、言葉を発した。
「お前は分かるか?」
こんなのは簡単だ。需要と供給だろ?
「黄金が無限に作られるのであれば、その価値は無くなってしまう、それでも価値があると言うのであれば……世界に一定量の金以上は作れない、とか?」
「80点だ」
「凄いねアル!」
「確かにそう言う事だ。無限に作る事はできない、だから価値はなくならん。錬金術には条件がある。アルディの答えはその条件が間違っている。まぁ、簡単に言えば等価交換てやつだ」
等価交換か、分かったようでわからんな。
「ただの鉄に価値はあるか?」
「ほぼ無い!」
「そうだ、価値はほぼ無い。だが100キロの鉄ならどうだ?」
「ちょっと高そう?」
「正解だ。黄金も同じ金属だ。だから錬成する事はできるが、価値がまるで違う。つまり、100キロの鉄が金貨1枚の価値があるとすれば、まぁ純粋な鉄なら本当にこれくらいの価値なんだが……それは置いておいて、金貨一枚分の大きさの金が錬成できる」
成る程、同じ金属でも鉄と金じゃあ価値が違う。同じ価値の分しか錬成はできないと言うことか。
「その逆も然りだ。金貨1枚から銀貨100枚分の銀が作る事ができる」
アイテムボックスがない場合、そりゃあ便利そうだな。
まてよ、それなら金があれば食料も何でも錬成し放題なのか?
「まぁ価値としての等価と言うのはここまでだ。ただ、ここまでの説明でよく勘違いする奴がいるが、金から何でも錬成はできないからな? 等価と言えど材質が違えば錬成できん」
やっぱだめか、何でもそう上手くはいかないな。
「まぁ基本的な知識としてはこんなもんだ。後はやりながら教える。先ずは錬金術を見てみろ」
そう言ってホメルさんは目の前にあった木製のスプーンに両手を被せた。




