14アルディside4
着々と工事は進み、殆ど形が出来上がって後は装飾のみとなった。
単に家を建てると言っても意外と難しく、なんとなく土台から入ったが水回りやら間取りやらと大変だった。
結局1日では終わらず、何日か掛けてやっとここまで来たのだ。
「よし、後少しだな」
ハビィさんの家は2階建で4LDKの現代日本の様な快適空間に仕上げてある。
特に拘ったのはキッチンだ。この世界にはコンロなんて便利なものもなければ、換気扇といったものもないし、お湯も出ない。これは常々俺が欲しいと思っていた事もあってどうしても作りたかった。
と言っても俺は錬金術は使えず、各属性魔法に原始魔法を組み合わせたなんちゃって錬金術で作らなければならない。
ファンの羽は土魔法で大雑把に作ったものを手作業で削り、空気を押し出せる形に仕上げた。
コンロはガスの無いこの世界で実現は不可能。実際にはあるのかもしれないが、見つかってないし搬送方法も無いのだから無いのと同じだ。どんな材料からなるのか、製造方法や成分が分かれば魔法で作れなくも無いのかもしれないが、俺はそれを知らないので今はどうしようもない。
仕方ないので砥石と石を組み付け、前世で言うライターの様な構造のものを手作業で何セットか作り出し、取り替えられる様に台に取り付けた。
これでコンロもとい、かまどに火を入れる時に直ぐに火を点けられる。今の俺にはこれが限界だ。一緒にずっと居られるならば燃えやすい物を提供し続けることもできるかもしれないが、それはできないしな。
後はお湯だが、かまどを使っている時に限れるがお湯を出す事に成功している。
機構としては井戸から水を引いてるわけだが、これではお湯はかまどに火を入れ、鍋で水を温めてやっとできる事になる。
そこで俺は家の下にタンクを設けてみた。そこに水があれば配管内が陽圧になる様にタンクに圧がかかる設計になっている。漬物石を乗せてるような感じだ。後は逆流しないようにタンクの入り口に弁を付けるだけ、これで蛇口の完成だ。
その配管をかまどの火が当たる場所を通せば、大量のお湯は出ないがお湯を出す事には成功した。これはかなりの発明だと自負している。
「そうだね。この家を建て終わったら、今度は私に魔法を教えてよ」
「魔法を?」
「うん。私もやってみたい」
魔法を教えるって……どうすれば良いんだろうか。エリーは模擬戦の中で勝手に覚えてたし、コアは初めからある程度使えてたからな。
それに俺は詠唱が使えないから、教えられる事なんて……
いや、もしかしたら俺が初めて魔法を使った時の様にイメージ力を養えば他の人でも【魔力操作】を得られるんじゃ無いだろうか。
「できるかどうかは分からないけど、やれるだけやってみるか?」
「うん!」
もしこれが成功すればエリーやコアにも教えてやろう。
とりあえずハビィさんの家は土魔法で練り上げた綺麗なタイルを貼って完成だ。
「よし、じゃあ皆んな後は各自このペースト状の土を塗ってタイルを綺麗に貼っていってくれ」
それぞれに作業を開始する。魔法は便利だ。召喚された彼らはフライの魔法で宙に浮きながら高い位置のタイルを貼り、テトラは下の方でせっせとタイルを貼っていく。
もし魔法が使えなければ足場を組まなければならないし、ペースト状のセメントだって簡単には作れないだろう。
それに、普通は乾くのを待つ所、風と炎の混合魔法ヒーターで乾かせていけば直ぐに乾かす事ができる。1週間も掛からず家一軒完成だ。
もし次に家を建てる機会があったらもっと早く建てられるだろう。
「完成だ」
サモンズ・ヒューマンで召喚した彼らを元に戻し、腰に手をやり完成の宣言と共に一息ついた。
「やっとできたね! 凄い凄いっ楽しかったぁ」
「ハビィさん達を呼んでこよう」
達と言ったのはハビィさんの奥さんマニラさんやその子供達の事だ。子供達と言ってももう40を越える初老だ。
なんとか家を作り上げる事ができた。俺が拘っていなければもう少し早く建てる事ができたかもしれないが、きっと喜んでくれる筈だ。まだこの発明品達はハビィさん達にも話していない。サプライズなのだ。今から反応が楽しみだ。
「おぉ! アルディ君。遂に完成したのかね?」
「はい。きっとお気に召して頂けるかと思いますよ」
「凄いんだよ? 家の下にーーー
「テトラっまだ内緒っ」
「あっごめんっ」
「ん? どうかしたのかい?」
「いえ、なんでもありません」
そうして一通りの説明を終えた後、実際に俺の作り上げた発明の数々を披露してみた。
「先ずはこの〝換気扇〟から説明しますね」
「〝換気扇〟とはなんだね?」
「百聞は一見に如かず、一度見てもらった方が早いので動かしますね」
これも電気が無いので火力発電の要領でかまどの火で動力を得ている形となっている。
「その為には先ずかまどに火を入れます」
「ほう」
「このかまどにも思考を凝らしてあります」
砥石を使って炭に火を点ける。
「おお! なんだこれはっ」
「回転式フリントとでも言いましょうか、とにかく、これで簡単に魔法が無くとも火を点けられます」
そしてかまどに火を入れる。かまどの中のファンが熱で回転し、その動力はかまどの上のファンにまで伝達され、回転を始める。
「ん? 何か上で回っているが……そう言えば煙突が無かったようだが? つけ忘れたのかね?」
「いえ、少し見ていてください」
次第にかまどから煙が登り、換気扇に吸い寄せられて外へ出ていく。
「ど、どうなっているんだ!?」
「原理はともかく、これが換気扇の機能です。これで煙突は不要でしょう。そしてこの取ってを回してみてください」
「これか?」
「そうだよ! 早く回してみてみて?」
「ふむ……うぉあっつ」
「あはははっハビィおじさん変な声ぇ!」
「お、お湯っ? 水が出るだけでも不思議なのにお湯が出るとは……」
「これで洗い物だってとても楽になるでしょう。如何でしたか? 1週間ではここまでが限界でしたが、それでもかなりうまくできたと思っています」
「あぁ、驚いたよ。どれもこれも見たことが無いものばかりだ。妻や子供達も喜ぶだろう。家族を代表して礼を言わせて貰うよ。ありがとう」
「気に入って頂いて何よりです」
「何かお礼をさせてくれないか?」
お礼か、特に欲しいものなんてないしな。
「お礼なんて、僕自身も勉強になりましたから」
「そうは言っても、これを無償で受け取る訳にはいかないだろう?」
ふむ、体裁を整える必要もあるか。そうだ。確かこの村にはあの人がいたな。
「分かりました。では、ホメルさんを紹介して頂けないですか? それと、錬金術を僕に指導して頂けるように口添えして貰えたら嬉しいです」
ホメルさんはこの村唯一の錬金術師だ。ただ少し変わり者で、ここ数年は自分の家に引きこもって何やら研究をしているそうだ。村の人達もホメルさんの事は週に一度の買い出し程度しか見掛けないらしい。
ハビィさんはこのホメルさんと同い年で、以前は仲が良かったらしいので提案した次第だ。
現在の俺はなんちゃって錬金術しか使えないし、以前から錬金術は習得したい
と考えていた。
月に一度現れるという魔物を退治したとしても他の魔物に攻められては意味がない。そうなってはこの村を離れられないからな。
光魔法と組み合わせて、コアと出会った時のような即席の魔物避けは作れるが、効果が持続するものはやはり錬金術のスキルが無ければ作れないだろうからな。
「ああ、そんな事くらいなら構わないが……彼がそれを受け入れてくれるかどうかは分からないが、構わないかね?」
「ええ、その時は仕方ありません。無理にとは考えておりませんので」
本当は無理にでも教えて貰いたい所だが、その辺りは実際会ってからの交渉次第だな。
俺は早くエリーやコア、クロを探しに行きたいのだ。とは言えこの村の事が解決しなければ先へも進めない。急がば回れという言葉もある事だ、しっかり錬金術を学んで安心してこの村を出たいからな。
「アル、私に魔法を教えてくれるのも忘れちゃダメだからね?」
「分かってるよ。ちゃんと教えるから安心して?」
「ありがとう!」
ガッチリと左腕をホールドしているテトラは嬉しそうに腕に頬ずりをしている。
「では今日中に話しておくから、明日にでもホメルの家へ訪ねてみなさい」
「分かりました。ありがとうございます」
もう日暮れ前か……確かに明日にした方がよさそうだ。
「またねハビィさん!」
「あぁ、テトラの事をよろしく頼むよ」
「はいっ」
この頃村の人達によくテトラの事を頼まれる。村の人達に認めて貰えるのは嬉しい。でもいずれはこの村を去る事になる。
どうしたものか。
「おばあちゃんただいま!」
「おや、おがえり」
ライラーヌさんは読んでいた本を閉じ、飛び込むテトラをしっかりと抱きとめた。
「もう日暮れかぇ。直ぐに夕飯さこさえるから良い子にしてるんじゃよ?」
「私も手伝う!」
ライラーヌさんとテトラは夕飯と準備に取り掛かっていった。
そう言えば、ライラーヌさんは何をいつも読んでいるんだろうか。
机の上に置いてある本をそっと取り上げた。
「〝ドラゴンの生態〟」
他にも何冊かあるな。
手に取った本を机に戻し、他の本も手に取って確認する。
〝龍神族について〟〝龍神の呪い〟〝禁呪目録〟
ドラゴンについての本ばかり……それと禁呪? 禁呪なんて研究していいのか?
あまり踏み込まない方が良さそうだな。これまで通りそっとしておこう。
それにしてもこの世界にはドラゴンが存在するのだろうか。もしいるのであれば会ってみたいな。
ライラーヌさんも研究している事だし、もしかしたらこの辺りに居るのかもしれないな。月に一度現れるという魔物ってもしかしたらドラゴンなんじゃないか?
ライラーヌさんに聞くと勘ぐられてしまうかもしれないな。明日ホメルさんと仲良くなってから聞いて見るか。
「アル〜夕飯の支度できたよ!」
「あぁ、ありがとう」
この時の俺はまだ知らなかった。月に一度現れるという魔物が何者なのか、それがどんな意味を持つのか。
この村がどれだけ悲しい業を背負っているのかなんて事を。
ハビィさんの自宅ですが、実際の機構とはかなり違うと思います。筆者の勝手な想像で書きましたがどうかお許し下さい。




