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13 アルディside3


 いい天気だ。窓から見える空は寝起きの目には眩し過ぎる光が差し込んでいた。


 少しだけぼうっとする時間を経た後ベッドから降り、扉を開けるとライラーヌさんが何やら本を読んでいるのが見えた。


「おはようございます」


「アル坊、おはよぉ。今日は早いでねぇか」


 昨日テトラとハビィさんの家を直してあげる約束したので、今日はその為に早起きしたのだ。


 ちなみに普段から俺が起きるのが遅い訳ではない。ライラーヌさんが早起き過ぎるのだ。田舎のお婆ちゃんはこんなものなのだろうか。


「今日はハビィさんの家を直してあげる事になっているんです」


「そぉけぇ。テトラも一緒にけぇ?」


「はい、そうですよ」


 テトラはまだ寝てるのだろうか。そんな些細な疑問が頭に浮かんだが、直ぐに答えを得る事ができた。


「テトラなら朝はよぉから外でなんさやってるよ」


「ありがとうございます」


 そう言えば俺が此処へ来てからライラーヌさんは何かの研究でもしている様だけれど、何を調べているんだろうか。


 そんな事を考えながらテトラを探す為、外へ出た。


「アル! おはよう!」


 テトラは家の前で誰かと話をしていた。


「おぉ、アル坊! おはようさん」


 相手は先日木材が欲しいと頼まれて大量に納品しておいた何でも屋のソトルさんだった。


 ソトルさんは暗めの金髪で坊主のちょっと強面だが凄く優しい人だ。


「2人とも、おはようございます」


「木材はソトルさんに頼んでおいたよ!」


「木材……? あぁ、家を建てるための材料か。大丈夫、材料はまだ沢山持ってるし、足りなくても魔法で用意できるから心配しなくても良いよ」


「本当に!? お家一軒分もあるんだよ?」


「大丈夫、大丈夫。任せて」


「ほらなぁだから言ったろ? アル坊が準備をしてねぇ訳がねぇってよぉ」


 ソトルさんとは木材の余りがないかを聞いていたようだが、ソトルさんは俺のアイテムボックスのことも知っているし、まだアイテムボックス内に大量に木材があると踏んでいた様だ。


 ついでに説明しておくとソトルさんの何でも屋はなんでもしている何でも屋ではなく、何でも売っていると言う意味なんだそうだ。


 という事で家を建てる際には俺が持っていない材料も出てくるはずだ、魔法でカバーできないものはソトルさんから譲って貰わなければならない。


「ソトルさん、木材は何とかなっても他のものも必要になってくると思うのでその時は……」


「おぉ! 任せろ! アル坊には木材から鉄鋼まで全部タダで貰っちまったからなぁ。それくらいお安い御用さ」


「ありがとう。ソトルさん」


「アル! 早くハビィさんの所行ってあげよ。多分待ってるよ?」


「そうだね。それじゃあソトルさん、また後でお願いします」


「おぅ、頑張ってな!」


 ハビィさんの家は村の端だ。ライラーヌさんの家も村の端だが、ハビィさんの家とは真反対だ。

 とは言え人口2、300人の小さな村だから、歩いても15分程度で着くだろう。


「良いお家を建ててあげようね!」


「そうだな」


 そう言う彼女は俺の左腕を優しく抱き締めている。まだアレが成長しきっていない為、破壊力は些か足りないが、色々と初心者の俺には十分な効果をもたらしていた。

 アレとは何かって? まぁアレはアレだ。


「どうしたの? 顔赤いよ?」


「そうか?」


「熱でもあるの?」


 テトラはおもむろに額を額にくっつけて来る。


「ちょ、テトラ……」


「熱は無いけど……」


 しっかり後頭部までホールドされ、鼻先僅か数ミリの所でテトラは疑問顔だ。


「大丈夫?」


 吐息が頬を掠める。


「大丈夫だよ」


 鼓動が速くなるのを感じる。

 これ以上はダメだ。


「は、早く行こう!」


 少し不自然だったかもしれないが仕方ないだろう。俺には心に決めた人がいるのだ。


「あ! ハビィさん! おはよう!」


「テトラちゃん、おはよう」


 テトラはハビィさんを前方に見つけると小走りで挨拶をしに向かった。


「おはようございます」


 少し遅れて俺もハビィさんに挨拶をする。


「おはよう。君がアルディ君か、噂は聞いてるよ。この村のヒーローなんだって?」


 どこからそんなあだ名が付いたのか知らないが、俺はヒーローのつもりは無いので、訂正しておく。


「いえいえ、僕はそんな大層なものではありませんよ」


「私が聞いた話では食料から資材までこの村に普及させてくれたと聞いているが、それは本当の事なのだろう?」


「そうだよ! アルは凄いんだから!」


「最近は外とやりとりしにくくてね、正直助かっているんだよ。その上今日は私の家まで直してくれると言うんだから、君は救世主様さ」


 そんなに褒められると少し照れてしまうな。


「君にならテトラちゃんを安心して任せられるよ」


「そ、そんな、私達はまだ……」


 ま、任せるってそんな大袈裟な……

 テトラなんか1人の世界に入ってしまって、くねくねしてるじゃないか。


 村に若い世代は俺とテトラしか居ないのだから、村人達は当然そう考えるのも無理はないが……


「ハハハ、まだ少し早いかな?」


 俺は此処に永住する気は無いので、村の人達の期待には答えられない。とりあえず知ってしまった以上、この村の魔物だけは何とかしておこうと思っているだけなのだから。


 もしそうなったら、テトラは悲しんでしまうのだろうか。


「さぁ、先ずは壊れた所を見てもらおうかな?」


「今日は建て直すつもりで来たんですけど……」


「建て……え?」


「あ、いえ、直した方が良いのでしたらそうしますよ!」


「いや、できるのなら建て直してもらいたいが……大工もいない事だし、できるのかね?」


「はい、任せて下さい!」


 という事で、早速新しい家を建てよう。


「建てるのはここの空いている土地で良いですか?」


 この村は人口も少ないので、一人ひとりが結構な土地を持っているのだ。なので家を建てるスペースくらいは普通に空いている。ハビィさんも例に漏れず広い土地を持っていた。


「あぁ、構わないよ」


「もしこの家も使わないのであれば引っ越しを済ませた後に取り壊しますから、いつでもおっしゃって下さい」


「何から何まですまないね」


「それで、アル? 私達ハビィさんも入れて3人しか居ないけど……」


「まぁ見てて」


 ここまで俺が頑なに大丈夫だといった理由。それは以前使用した闇魔法の召喚があったからだ。これで人手なんていくらでも作れるし、今となっては原始魔法も相まって人間さながらの何かを召喚できる気がする。


 少しテトラとハビィさんから距離を取り、あの時のイメージを反芻する。


「サモンズ・ヒューマン!」


 前方の地面に魔方陣が展開される。


「おお! なにこれなにこれ!」


 光がどんどん強くなり、目が開けられなくなるほどにまで達した。


「だ、大丈夫なのかね? アルディ君!?」


 正直予想以上だった。闇魔法と原始魔法の混合召喚……


「なんか出た!」


 ひかりが収束した後、魔方陣があったであろう場所に……いや、魔方陣を遥かに超える範囲に50人程の人間が居た。


「こ、こんなに!?」


 自分で自分の魔法に驚いてしまった。


 人間を出すのはイメージ的に1人当たり結構な魔力を消費する……みたいな特別ルールがある気がした為に、(できるだけ沢山)とは思ったけど……


「びっくりしたぁ」


「ごめんミスった」


「に、人間を出すなんて驚いたよ。ライラーヌさんも闇魔法の使い手でね、いつか召喚魔法を見せてくれた事があったが……人間が出せるなんて聞いた事がなかったから」


 ライラーヌさんて闇魔法の使い手だったのか。召喚は闇魔法の中でも上級魔法だ。そんな魔法が使えると言う事はかなりの使い手の筈だ。それが何故この小さな村で暮らしているんだ?


「どうするんだい? こんなに沢山居たら君の魔力が持たないだろう」


「え?」


 召喚魔法は魔力を消費し続けるのか?


 パラメータを発動し、確かめる。


 減っていない……よね。


「大丈夫です。魔力には自信がありますから!」


「自信があるって言ってもアルディ君……まぁ、君が良いと言うなら大丈夫か」


 いちいち説明しなかったのは単に面倒だったからだ。


 召喚魔法が特別なのか、俺のスキルが何か関係あるのか、原始魔法を混ぜたせいなのか、原因がはっきりしてい無いこともあるがそれを話したところで原始魔法とは? なんて話が広がりそうだからだ。


「とは言えこんなに沢山は必要無いので少し減らします」


 俺は召喚魔法を展開した時の様に魔法陣を出し、召喚し過ぎた人間達を戻していく。


 総勢15人になったところで魔法陣を消した。


「よし、こんな所かな?」


「全く、とんでも無いな、君は」


「世の中にはもっと凄い奴らが沢山居ますよ」


 実際魔王や神連中はもっと凄いからな。この世界中を探せばまだ何人か奴らに匹敵する人物もいる気がする。


「世の中は広いものだね」


「えぇ、本当に」


 エリーやコア、クロも多彩な魔法はまだ使えなかったが時間を掛けて練習すればいくらでも使えるようになりそうだったしな。


「さて、それでは作業を開始しますかね」


「お願いするよ」


「よし! 頑張るぞぉ!」


 先ず召喚した彼らを集めて、指示を出す。


「皆んな、聞いてくれ。今から俺は家を建てようと思っている。そこで人手が足りなかったので君達を呼ばせて貰った。先ずは家を建てる土台から作りたい。分かるかい?」


 返事は返って来なかったが何やら作業をしだす。


 説明の続きで、材料は俺が出すから平に慣らして欲しいと頼むつもりだったのだが、つい観察がしたくなったので止めずに見てしまう。


 今の所会話をする様子もないし感情がある様には見えないので、前回の鎧騎士と見た目が違う所しか差が無い。


「€%$〆○*:ー」


「え、うそ」


 作業を始めた彼らは詠唱をしだした。


 地面の質が変わり、コンクリートの様になっていく。


「召喚された人間が魔法を使った? そんな事できるのかい?」


「いや、僕も彼らを呼んだのは初めてでして……驚いてます」


「凄いよアル! どんどん地面が石になってる!」


 確かに驚いたが、これはかなり作業時間が短くなりそうだ。


 しかし彼らの魔力は一体何処から来るんだろうか?

 不思議に思った俺はパラメータで自分のMPを確認した。


「俺の魔力か」


 どうやら魔法は召喚主の魔力を使用するらしい。

 とりあえず実験は後でしよう、今はハビィさんの家を建てる事が先だ。

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